第十四話
寝室に入るとすでにスズカが眠っているようだった。なんだかなんだで野宿は疲れるから疲労が溜まっているんだろう。俺も眠い。ゆっくり休もう。明日はようやく街に着くし、この世界の情報を集めてこれからどうするか決めようか…。
『…………。』
『…………。』
「…(ん?なんだ?)」
『ようやく気づきましたね。』
「…?」
『あなたの夢の中です。これからあなたの目指すべきことを示しましょう。』
「…。(頭の中に直接語りかけてくる…。返事も何も出来ないのか。)」
『世界各所に存在する6つの氣聖石を集めなさい。さすればあなたの成すべき道が示されるでしょう。』
「…。(6つ…属性か。」
『まずは街外れにある道具屋を訪ねなさい。そこに運命の出会いがあるでしょう。』
「…。(道具屋?街についたらジンに聞いてみるか。)」
『この者に数多の精霊の祝福があらんことを…。』
「…。(精霊…。)」
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「…兄。」「…お兄。」
「ん…スズカか。」
あたりはまだ暗い。夜中だろう。
「今夢の中?で変な声が聞こえてきた。」
「もしかして氣聖石を6つ集めろって言ってたか?」
「そう。精霊の祝福が…って言ってた。」
「俺にも聞こえた。何だろうな?とりあえず危険な感じはしなかったから、頭の隅にでも覚えておこう。」
「うん。嫌な感じじゃなかった。」
「よくわからないものを鵜呑みにしても仕方ないしな。ひとまずこの事はお互い秘密にしておこう。」
「わかった。」
よくわからないお告げを受けたあと、寝直そうとしたがすっかり目が覚めてしまった。スズカも同じようでなかなか寝付けないみたいだ。夜の散歩でもしようと思い、寝室を出ようとしたらスズカが声をかけてきた。
「どこ行くの?」
「寝付けないから散歩でもしようかと。」
「私も行く。」
「ああ、一緒に行くか。」
眠っているジンを起こすとか可哀相なので、起こさないようにこっそりと小屋の外に出る。雨雲もすっかりなくなって晴れて月がとても綺麗だ。雨で空気中のほこりや砂が落ちた後は空気も澄んで夜空が一段と綺麗に見える。これで新月なら満天の星空が見えるんだが今日は月見で満足しよう。小屋の裏手の湖に近づくと湖面に映った月が滝の波でゆらゆら揺れている。するとスズカが服を脱ぎ捨ておもむろに湖へ飛び込んだ。しばらくすると湖の中央辺りでパシャっと水しぶきをあげて水中から出てきた。長い金髪が月の光に照らされて湖面にも反射して…美しい。こういう光景を女神の美しさと例えるんだろうか。言葉が出てこない。
しばらく言葉を失った放心状態で眺めていると、滝の方に青白い光が見える。スズカも気づいたようで、泳いで見に行ったようだ。しばらく待っていると、手に青く光る石を持って戻ってきた。すかさず自分が来ていたシャツを脱いでスズカに上からかぶせる。小柄なスズカにはかなり大きめのシャツだが濡れた身体にシャツが張り付いて、これはこれで逆にエロい気もする…。だが本人は全く気にしていないようだ。
「お兄、コレ。」
動揺する俺を気にせず光輝く水色の石を手渡してきた。
「ん?あ、ああ。滝のところで光っていたやつか。」
「そう。この光り方と濃い気力が感じられる石、もしかしてこれが氣聖石?」
「あのお告げの後にしては出来すぎな気がするけど、それっぽいな。」
「なんで光っていたのかわからない。」
「何か条件があるのかもな。青い月、湖、各属性の気力の適合者とか。泳いでるスズカは水の女神のようだったし。」
「女神…。」
頬を少し赤らめている。恥ずかしいようだ。
「この氣聖石はスズカが持ってな。多分水属性の適合者だろうし加護もあるかもな。」
「うん。ありがと。」
胸の前で大事そうに両手で受け取る。ちょっぴり嬉しそうだ。
「(…お礼を言われるようなことしたか?)俺はどの適合だろうな…。」
「お兄は全属性使えるから適合とかなさそう。」
「むむむ…。」
この後、試しに俺も湖で泳いでみたが何の反応もなかった。というか滝の水量が激しくなった気がする。まさか嫌がられているんだろうか。やはりその属性が使えるだけでは適合者にはならないのだろう。全属性使える場合の適合…よくわからんな。
湖から出るとスズカがタオルと服を持ってきてくれた。着替えて部屋に戻る頃には夜の帳が明け、徐々に明るくなってきた。




