第十三話
魔物に遭遇することもなく無事に小屋へ辿り着いた。今は夕方くらいだろうか。到着した頃には雨も強くなってきて、霧がかかってきた。ギリギリセーフだな。小屋は簡単なログハウスのような建築様式で、多少古さはあるが予想していたよりも案外しっかりしている。1階部分は高床式になっており、薪が積み上げられている。水の流れる音が聞こえるが、近くに滝でもあるんだろうか。と思いながら小屋にあがって広間に入ったタイミングで話しかけた。
「ジン、近くに滝でもあるのか?」
「家の裏手に小さい湖があって、そこにちょっとした滝がある。水浴びも出来て気持ち良いぞ。家の水はそこから引いているんだ。」
「そうか。なかなか良い環境だなここ。昔からあるのか?」
「気に入ってもらえたようで何より。ここは俺の曾祖父さんが建て直したって言ってたな。その前はもっと簡素な建物だったらしいが、老朽化で建て直したんだとさ。鉱石の洞窟に向かう時に使うのがメインだが、たまに気晴らしに来たりもする。」
「へぇ。確かにあそこまで行くには結構遠いし、野宿も危険だもんな。周りの柵にいくつかついていた装具が魔物避けか?」
「よく見てるな。あれが魔物避けで、加護がかかった石が埋め込まれている。そのおかげで魔物に襲われる心配も無い。」
「どんな魔物にも効果があるのか?例えばこの辺りにはいないような強いやつとか。」
「どうだろうな。この辺りの魔物には充分効果があるが、そんなに強いのはここらじゃ出ないしな。わからんけどある程度は効果があるんじゃないか。」
「なるほど。ちなみにその加護がかかった石ってのは?」
「鉱石洞窟で水晶を見たろ?あれを採掘して加工した後に司祭様のところに納めて、しばらく祈りを捧げて寝かしたら出来上がりだ。今回もその水晶を採りに行ったんだが、高純度の水晶を探しにいつもより奥に行って…ってわけだ。」
と暖炉に薪を焚べながら話す。それを見て、すかさず気力を使って火を付ける。
「へぇ…面白いな。気力が使える人なら作れたりしないかな。今度試してみよう。」
「お、さんきゅ。ま、詳しい作り方まではわからないが各属性ごとの水晶もあるから、もしかしたら気力持ちなら作れるかもな。しかし、水晶の大きさとか純度でも効果量が変わってくるから、小さいサイズで効果が出るものがもし出来たらうちで取り扱わせてくれるとありがたい。装飾品に使えたらバカ売れしそうだ。」
「柱についているのは割と大きいもんな。重そうだし。水晶にこめる気力の強さで圧縮率が変わったりするのかもな…ふむ。」
「圧縮率…?よくわからんけど試してみてくれ。あんちゃんになら水晶も自由に使ってほしい。」
「もし売れるようなものが出来たら、売上の半分はくれよな。」
「半分!?それは流石に勘弁してくれ。せめてこのくらいで…。」
「わかった。じゃあ3割で手を打とう。まぁ、まだ出来るかわからないけどな。」
「そのくらいなら。とりあえず頑張ってみてくれ。」
「んじゃ部屋だが全部で3つある。この広間と寝室が2つだ。兄妹なら同じ部屋でも構わないだろう?ベッドは2つある部屋と1つの部屋がある。」
「ん。問題ない。」
とスズカが頷きながら椅子に座る。
「食い物の備蓄はあるのか?」
「んー、干し肉といもがあるかな。」
「干し肉!食べたい!!」
スズカが目を輝かせながらジンを見つめる。
「お、おう。いっぱいあるから好きなだけいいぞ。」
「干し肉メインでいもは野草と合わせてスープでも作るか。」
「任せた料理人!その辺にあるものは自由に使ってくれて構わんぞ。」
「ああ。ありがとう。」
こうして飯の準備に入った。適当にだしを取って香辛料をぶちこんで煮込むだけでも立派なスープが出来上がる。汁物があるだけで腹も膨れるし、なによりも身体が温まる。こんな雨が降っている日は身体も冷えているからな。
簡単な飯を済ませてしばらくすると雨音も止み、雨があがったようだ。外に出て空を見上げてみると青く大きな月が1つ出ている。ブルームーンてやつか。そういえば異世界モノにはよく2つの月が出てくるけど某ラノベの影響が強いのかな。普通に考えたらあれだけ近くに2つあると引力の影響とか昼夜のサイクルもおかしくなりそうなものだが…と、時々前の世界やよくある異世界設定との違いを比べてしまう。この世界はどちらかというと、地球によく似ているらしい。まぁそんなことはどうでもいいかと考えながら寝室へ向かった。




