第十二話
「む…。」
「起きたかあんちゃん。」
寝起きのまだすっきりとしない頭を起こしながら思い出す。
「…おう。おはようジン。」
朝だ。今日は生憎のどんよりとした空模様である。吸う空気の湿り気も高く、早いうちからひと雨来そうな天気だ。早めにこの野営地を撤収して先を急ごう。
「スズカ。朝だぞ、起きろ。」
「う…ん。…起きる。」
「顔洗ったらスッキリするぞ。寝起きですまないが水を出してくれ。」
スズカは空いている鍋に手から水を出す。
「さんきゅ。ほらジンも使え。」
「おう。」
皆で顔を洗って目覚めたところで朝飯を作りながら今日の目標を決める。
「ジン、ここからベガルタ?までどのくらいかかるんだ?」
「ここからなら2日あれば着くな。急げば1日半てとこだ。」
「そうか…もう一泊は野宿が必要になりそうだな。雲向きも怪しいし、早めに移動して雨露を凌げそうな寝床を探そう。」
「それならよく使う小屋があるからそこを使おう。今から出れば昼過ぎには着くだろう。」
「ありがとう、助かる。やはり地元の人間がいると全然違うな。」
「こっちこそ世話になったからお互い様さ。持ちつ持たれつってやつだ。」
「そうだな。助け合いは大切だ。」
朝飯が出来上がった。昨晩イチゴを潰して煮詰めた即席ジャムを軽く炙ったパンにつけて食べる。うん、甘くて美味しい。スズカも満足そうにご機嫌な様子で食べている。簡素な食事とはいえ、少しくらい楽しみがないと野宿も辛くなってしまうからな。昔金も時間も無かった時、カロリー○イトだけで昼飯を済ましていたが、同じ値段でも惣菜パンとかおにぎりにするだけでも全然違ったしなぁ…懐かしい。食事はどんなときでも大事だ。
「食事も済んだし、サッと片付けて出発しよう。」
「おう。」&「わかった。」
こうしてジンを助けた鉱石洞窟から出発した。第六感があの洞窟の奥には何かあると告げているので、近いうちにまたこようと思う。準備は欠かさないようにしないと。そういえばジンが特殊収納とかなんとか言ってたな。聞いてみるか。
「ジン、そういえば昨日話してた特殊収納って一体どんなものなんだ?」
「なんだ、知らないのか。見た目は普通の大きさで背中に背負う鞄なんだが、条件を満たして改造していくと収納できる量が増えるんだ。それも格段に。」
「それはすごいな。拡張する条件てのは大変なのか?」
「そうだな、ある程度までは割と単純な条件や素材で改造できるが、大きくなるにつれて入手困難な素材が増えてくるから最大まで拡張しているやつは一流の冒険者だろうな。」
「そうか。ちなみにその鞄はどこで手に入るんだ?」
「街の道具屋で売っている。仕入れルートはよくわからんが、人間族の作ったものではないことは確かだな。何しろ改造して中身だけ広がるとか意味がわからん。改造を受け持っているのもそこだ。」
「なるほど…ちなみに背負うタイプ以外にも種類はあるのか?」
「あぁ。一番入るのがそれで、多少少なくなっても良いなら腰にぶら下げるタイプとか色々あるな。」
「それはいい。さすがにでかい鞄背負っての戦闘は向かないしな。」
「違いない。でかいのはサポート役とか商人向けかもな。」
「街についたら購入しよう。良いのが見つかるといいな。スズカ」
「うん、コンパクトなのが良い。」
「オーダーメイドで出来たらいいんだけどな。でもまずはお金も稼がないと。」
「お金は大事。」
しばらくすると簡単に整備された道が見えてきた。あれが爺さんの言っていた街道のことだろう。
「あの道沿いに進めばベガルタに着く。途中で一旦道からそれて今夜の寝床に向かうけどな。」
「わかった。街道沿いなら魔物も少ないだろうし明日の早いうちには着けそうだな。」
「寝床の小屋は周囲に魔物避けを立ててあるから安心して休めるぞ。」
「それは助かる。野宿は常に警戒していないといけないから疲れるんだ。」
「そうだよな。あともう少しで小屋の方へ向かう場所に着く。ほら、あの木が目印だ。あそこで街道を抜けて森に入っていくんだ。俺は戦闘が出来ないから普段は魔物避けを着けて歩いていくが、今日はあんちゃん達がいるから無用だな。というよりも洞窟で壊れたんだがな…。」
「安心しろ。無事に街まで送り届けるさ。」
「頼んだ。何から何まですまんな。」
雨がポツポツと降りはじめた森をしばらく進むと小さな建物が見えてきた。あれが話していた小屋だろう。小屋の周囲に柵があり、柱ごとに何か設置されている。あれが魔物避けの装具だろうか。どのくらいの魔物まで効果があるんだろうか…。後でジンに聞いてみよう。




