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第8話 謎のメッセージ

 

「もうやめてよ! 翼ちゃん! 早乙女さんもこんなことやめて欲しいって願ってるよ!」


「あ?」


 再び、早瀬が天上に苦しみの表情で訴えかける。

 身近にいる人の本性を目の当たりにした今。

 友達の黒い部分を知ってしまった今。

 あるのは絶望と信じたくないという気持ちだけ。


 あの健一のこと。そして今までの上位層の人たちの嫌がらせ。

 全てが繋がり、僕はゾッとする。

 ふと、天上を見つめるとその目は笑っていた。

 それは嬉しいことや楽しいことがあった時に見せるものではない。


 自分の憎悪を相手にぶつけている。

 それをみんなに知らしめた。言わば達成感のようなもの。


 早瀬は友達として本気で天上に改心して貰いたい。

 そう思っているだろう。それが早乙女が戻って来てくれる一つの出来事だとしたら。

 クラスにとっても大きなものとなる。


 でも、天上は鼻で笑いながら早瀬をゴミのような目で見る。


「楓はいいよね、顔がいいだけでそれだけの序列にいるもんね」


「……っ! そんなことない!私だって」


「成績も運動も大したことなくて最下層にいかないってことはそういうことでしょ?」


「ふ、ふざけないで! 人の努力も苦労も知らないで!」


「苦労? ああ、そう言えばあんた……はぁ、好かれる人って楽でいいわね」


 ……? 早瀬と天上の言い争いが続く。

 神里や柴崎が制止させてなんとか落ち着く。

 ただ、僕が気になるのは天上が最後に言ったこと。

 そしてそれに対しての早瀬の反応。


 まるで核心をつかれたかのような。今まで負けじと揉めていたのに急に黙り込む早瀬。

 おかしい。これも何か裏があるのかな。一つ言えるのは天上は何かを知っている。

 ただ、流石に天上も席に座り、それ以上は何も言うことはなかった。


「それにしてもさ、驚いたよね、天上さんが……こんな人だったなんて」


「いつもクラスの隅で目立たなかったけど、怖いね」


「ほんとに羽黒にしたって最低な奴ばかりだよね、序列が下の方の奴らって」


 ぐぅ……やっぱりそうなってしまうか。恐れていたこと。

 このクラスに広がるのは僕ら最下層の人間によるさらなる不信感。

 気が付けば僕らに向けられる視線は痛いものだった。

 同時に携帯が鳴りだし、僕はラポの通知がなっていることに気が付く。


 クラスのグループ。健一の時と同じだ。

 既に健一はこのグループから強制退出させられており、中の会話の内容を見ることは出来ない。

 書かれているのは酷いものばかり。


『今回は天上のクズの所が分かってよかったな』


『うちらの色々なものを盗ったなんて普通に犯罪だよね』


『やっぱり序列で人間性も決まるんだね』


『明日からさ、序列最下層の奴ら全員こき使わない? 雑用は全て任せてさ』


『いいね! それぐらいしか利用価値ないから仕方ないよね』


『賛成』『ほんとは消えて欲しいけどね』『もう最下層の奴らの顔も見たくない』



『生きてる価値ないよね』


 生きてる価値ないか。親には期待されて僕はこの星ヶ丘学園に入学した。

 親の期待に応えようと。ここまで育ててくれた親に感謝しようと。

 勉強も運動も。色々な面で頑張ってきた。必死で努力してきたつもりだ。

 だけどやっぱり無理なのか。結局、過程は過程。

 それを本番に生かさなければ意味がない。


 だからこそ、僕はこの序列四十位という地位に落ち着いてしまっている。


「ははははは! これでマジで最下層の奴らがゴミクズって分かったよな!? 大事なダチを裏切る奴だったり、ちっぽけな感情で嫌がらせをするクズ女……もう言い訳も出来ねぇだろ?」


「……美音があんたらに苦しめられたとしたら私は絶対に許さない」


「流石の俺も今回は美音の彼氏として擁護は出来ない」


「学級委員として全体を見る限り、俺もお前たちを許すつもりはない」


 宮晴が僕たちに言い放つと次々と僕たちに対する今の現状を伝えてくる。


 あまりの迫力に僕らは何も言えなくなってしまう。

 僕、健一、天上以外の最下層の人たちも黙り込んでしまう。

 元々、あまり話す人はいない。こういうところも駄目なのか。


 駄目だ。このままじゃ……。完全に僕らだけが悪くなってしまう。

 いや、何を考えているんだ。悪くない、悪いかじゃないだろ。

 そもそもこれをやっているのは早乙女のため。


 結局、これも序列を変動させるための話し合いになってしまうのか。


 精神的に挫けそうになってしまうそうな時だった。


 ――ん? ラポの通知が鳴っている。だけど、これは僕宛て?

 自分の個人にくるなんて珍しい。大体はグループでの会話の通知なのに。

 それに知らないアカウントからだ。このタイミングで?

 僕は緊張しながらそれを指でタッチする。


『諦めるな』


 あ、諦めるな? 僕は携帯を片手にクラスを見渡す。

 ざわついているだけで誰がメッセージを送っているなんて分かるはずもない。

 文面からして男? いやこれだけじゃはっきりとは分からない。

 考えても仕方ないか。僕は少し落ち着きを取り戻し、そのメッセージに返す。


『君は誰なんだい? なんで僕のアカウントを……』


『そんなことよりもお前はこのままでいいのか?』


『それはよくはないと思う、だけど、僕一人の力じゃなんとも……』


『そうか、やっぱりそう思うよな』


 何なんだ? 誰かは分からない。このクラスの人なのか。それとも他クラスの人なのか。

 真相は不明だが、僕は頼れる人がこの人しかいないため。

 僕は思い切った問いかけをしてみることにした。


『君はこのクラスのことについてどう思う?』


『……このクラスは他のクラスと比べても腐っていると思う』


『僕も正直にそれを思うよ』


『一人だと思うな、この中にもお前の味方はいるはずだ、少なくとも俺はお前の力になりたいと思ってる! だけど……』


『だけど? 何か理由があるの?』


 そこでピッタリとやり取りは終わってしまう。

 これで分かったのはこのメッセージの相手がこのクラスの人だと言うこと。

 なんで僕なんかにこんなこと。

 メリットも何もないはずなのに。ざわつくクラスの中でただ一人僕は考え込んでいた。


 健一? いやそれはない。あれ以降から一緒に帰るどころか話すこともなくなった。

 それに言っちゃ悪いけどこんな文面ではない。

 もっとチャラチャラしているという印象だった。


 天上っていう可能性もないだろう。

 有り得ない。あんなに黒い部分を見せた後にこんなものおくるなんて。

 何よりも携帯を触っている所も見ていない。


 だったら一体誰なんだ? 僕にこんなものを送って来るなんて。


「……そろそろ終わりとしよう、これ以上続けても傷を広げるだけだと思うしな」


「もう充分に広がってるけどな」


「天上、羽黒……俺から言えることはお前らは恐らく覚悟しておいた方がいいぞ」


「ふん、まあせいぜいそうさせて貰うわ」


 健一はビクビクしてるだけで何も話すことはない。

 だが、天上は余裕の笑みを浮かべながらすぐに教室から去って行った。

 何なんだあの余裕? まだ何かを知っている。

 このクラスを動かす大きな秘密を。


 こうして天上翼の本性。さらなる謎。そしてクラス中には不安と疑念が残る形となった。


 この先どうなるのか。誰も分かるはずはなかった。

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