プロローグ
※ギャグです。
※作者である僕の想像以上にパンツ、パンチラとかいう単語が大量に出てくる恐れがあります。苦手な方はブラウザバック推奨です。
※多分十番煎じくらいの設定ですが、パッと見て楽しんでいただけたら幸いです。
※性描写はないです。
僕はパンチラが好きだ。
パンチラ画像一枚で、三杯ご飯が食べれるくらい好きだ。
階段を上がって行った時に見えたスカートと太ももの隙間。
電車の中で、ねこけてしまい、何時も閉じてる足を開いてしまった時に見える闇の三角地帯。
ぎりぎりの見えないミニスカートが大好きだ。もうそれだけで興奮する。
女性のスカートの中にあるあの聖域を除く人間が変態だというのなら、確かに僕は変態だ。だが、それがなんだというのだろう? そんな誹り、あの素晴らしい瞬間に立ち会えるならば何度言われたってかまわない。
パンチラとは僕にとっては生きる目的だ。その瞬間を見るために生きていると言って過言ではない。
だから、この世界に絶望している。
緑ヶ丘高校のHR終了のチャイムが鳴った。2-Cのクラスのみんなは思い思いに行動をとる。
部活に行く者。
すぐさま帰宅する者。
そして、友達といつまでも喋ってる者。
「でさー、そこのお店のショーツが超よくてぇ。見てよ、これ」
「やっばー、超可愛いじゃん」
「でもさー、ちょー睨んでたよ? 田中先生w」
「イモ女じゃねーんだから、無地のなんてダサくてはけねーってのw」
あっはっはと僕の隣で談笑してる彼女たち。
彼女らのパンツは、酷く派手な物だった。黒のレースに、赤のレース、ピンクのフリルの付いたの。
「……何見てんだよ、狭山ぁ!」
談笑してる女生徒の一人が、見ていた僕を睨んだ。彼女は松矢里奈。髪を染めていて、ツインテールで、目つきが鋭い。このクラスカーストにおける実質的なトップだ。この世界でも彼女は柄が悪いようだった。
「え……? ご、ごめん」
別に、たまたまそっちを向いていただけなのだけれども、大人しい少年を演じる僕は思わず、と言った感じで頭を下げた。
「……あのさー、ちょっと面白いこと言ってよ」
にやにや笑いで、松矢が言ってきた。彼女は人を見下すのが大好きなのだ。
「里奈が、そしたら許してやるってよw」
「はい、狭山トオル君の一発ギャグいってみよーww」
その友達も、人を見下すのが大好きだった。
やれやれだ。僕は仕方なく、渾身の一発ギャグを言った。
「ふとんがふっとんだ」
「ぎゃあああああwwww」
「うけるーwww」
「ふとんがふっとんだwwwww」
ひいひい言いながら彼女らは腹を抱えてる。
「あのー、もう行って宜しいでしょうか?」
「……は? いつまで居んの? 帰ったら?」
「ちょー、ま、里奈ひどくなーい?」
げらげら笑う彼女たちを尻目に、僕は憂鬱そうに教室を出る。実際、憂鬱だった。
僕がクラスカーストの最下層に甘んじているのは、偏にパンチラのためだった。
人間は、自分よりも見下している者を、同じく人間と扱わない。
彼女らは、僕を猿かその辺の石ころだと認識しているのだ。
だから、スカートのガードが僕に対しては甘かった。今まで幾度も、そのパンチラを僕は頭の中に収めていたのだ。勿論、全然見えない日もある。だが、見えなければ見えないで逆に興奮もできた。
だが、もう、意味がない……僕がこんな下手に出ているのは、一片のあるかないかの希望に縋り付いているからだ。
パンツはもう見えてしまっている。
この世界には、スカートの概念がない。
女生徒は上半身が制服で、下はパンツ丸出しなのだった。
松矢たちもそうだ。パンツ丸出しだ。だから、彼女らの下着の詳細が別に覗かなくても分かったのだった。
「それじゃねー」
「ばいばーい」
鈴木さんが階段を上がっていく時に見えてた閃光にも似た白も。
「ああ、大変」
「先生、手伝います」
プリントがばらばらと落ちていく時に、それを拾おうとした南先生が屈んだ刹那に見えた大人っぽい黒も。
「でさー」
「えー?」
座っている住谷さんが時折見せた、キャラクターがプリントされた可愛い下着も――
全部見える。
見えてしまう。
あんなに興奮していた彼女らのパンツたちを、僕は無表情で通り過ぎていく。
パンチラとパンモロは違う。
パンチラとは刹那の芸術であり、女性の魅力を最大限に引き出した神が与えたもうた瞬間のことだ。
パンモロとはもうなんか下品で、パンツがあればそれでいいんだろ? とでもいいたげな下品で醜悪な欲望の塊である。
両者には、月と道端に生えてるなんかの草くらいに差がある。
そのことを、こんな所で再確認することになるとは思わなかった。
あんなにも邪魔で、憎しみの対象でもあったスカートが、こんなにも切望する日が来るなんて思いもしなかった。
パンツは幸せの対象であったはずなのに。
いまはもう、見るだけで哀しくなってしまうのだ。
悲劇だ。
生きる希望を根こそぎ奪われた。
「とおる君」
暗澹とした気持ちで歩いている僕に、声をかけてくる人がいた。
振り返ると、吉野さつきがいる。
黒髪のロングヘアに、利発そうな瞳をしている。制服なんかはいつもバリっとしていて、皺ひとつない。そんな外見だけでなく、性格も人柄も清潔感溢れる人である。まあ、下がパンツと靴下と上履きという出で立ちなので、今は痴女にしか見えないが。
「今帰り?」
彼女とは中学時代に同級生だった。それだけで、僕のような人に話しかけてくれる女神のような人だった。
そんな彼女の今日のパンツはうっすらピンクに、真ん中に小さなリボンが付いている……彼女のパンチラは、トリプルS級のレア度……一年前のつむじ風がおこした『気まぐれな風による、聖女の小高い丘の奇跡』と僕の中で呼ばれてるあの瞬間は、ご飯十二杯食べれるほどに神々しいものであった。
だというのに……彼女のパンツを見ても、悲しい気持ちしか起こらない。この僕がだ。
「どうしたの? 暗い顔をして」
「何でもない」
「もしかして、その……いじめられたりとか?」
「ないよ。そんなことは」
そんな些細な事よりも、もっと深くて、切なくて、広大な事だった。
「本当に? あの、何でも相談してね?」
「ありがとうございます。それじゃあ――また、遠山さん」
僕は丁寧にあいさつをして、彼女と別れた。彼女とはまた会える。しかし、彼女が見せたあの奇跡とは、もう永遠に会えないかもしれないのだ。そのことがたまらなく悲しかった。