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碧、すなわち夏の香  作者: 翔羽
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2、授業、すなわち退屈

また、蝉が鳴いている。

でも今度は気を狂わせるようなうめき声ではない。

静けさを感じさせるような、そんな爽やかな声。


黒板にチョークを打ち付けるカッカッという音。

心地よい。


正面を見ると、

頭皮がツルリと禿げあがっている

中年現国教師・鈴木が授業をしていた。



きゃははは。んなわけねーだろおおおーーー。




ガヤガヤ。ガチャガチャ。



いつも通りのうるさい教室。


なんだ。夢か。


手に大量の汗を握っている自分に気づいて、

なんだか泣きそうな気分になった。


「おい。そこうるさいんだよ!邪魔するなら出ていけ!」


喝が飛ぶ。



うるさい。憂鬱だからやめてくれ。

ただでさえだるい学校なのに。


俺の通っている草の学園は高校から大学までエスカレーター式。

みんな受験しなくていいから怠けまくっているのだ。


先ほどの生徒達は怒られたのにも関わらず、薄笑いを浮かべてヘラヘラしていた。


どうせ怒っても聞かないのなら鈴木だって怒鳴らなきゃいいのに。

その方が本人だって楽だろう。


鈴木は怪訝そうな顔をして、タオルで禿げあがった頭人撫でして再び黒板に向かい始めた。



きゃははは。


騒音はさっきと至って変わらない。

さっきのはなんだったんだ。

怒鳴らなくてもよかったじゃねえか。

変わってねえんだし。

あー、でも

「言った」っていうことに対しての

「自分はやるべき事やった」っていう自己満みたいなものがあるのか。

分からねえ。


でもとりあえずそんなものにいちいち巻き込まれる方はたまったもんじゃない。

大迷惑だ。



ガヤガヤ。




長い。

授業ってどうしてこうも退屈なのだろうか。

時間が過ぎるのが通常の2倍くらいに感じる。


中学のときは教科で面白い先生とかいたから

まだ楽しめた。

だけど高校までくると義務教育じゃないということもあり、

先生ちっとも面白くねえし、

専門的すぎて正直退屈以外の何者でもない。




はあ。だりぃ。

つまんねぇ。

なんかおもしれえことないかなぁ。

高2の初夏。

刺激が欲しい。

前に一回親にそんなこと言ったら

「頼むから犯罪とかはやめてね。うちの看板に傷がつくから。」

だってさ。

うちは代々この町で有名な老舗の豆腐屋なんだ。

酒井豆腐と言って知らない人はいない。

結局は店の名誉かよ。

店の名誉が傷つかなければ息子はどうなってもいいってか。

ほんと人間って汚ぇ。腐ってやがる。

まあ俺もその腐っている人間の一部なんだけど。

もっと綺麗で美しい生き物に生まれたかった。


そうそう。

いっそみんなロボットでいいんじゃねぇか?

前、確か社会で何百年か前までは

人口減少対策で国単位でロボット導入やってたらしいし。

そしたらきっと無感情でプログラミングされた通りにカチコチカチコチ動くんだろうな。

それはそれで気持ち悪いなと思いながらも、他人と話すのが苦手なコミュ障の俺にとってはピッタリなのかもとも思った。


やめよう。自分を陥れるのは。


我が校伝統の重く鈍いチャイムの音で、つまらない授業は終わりを迎えた。












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