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#5.異世界ニートと2つ目の能力

 朝、起きて食堂に行くと2人が先に食事をしていた。

裕二は食事をもって2人のところへ向かい、椅子に座り2人に声をかける。


「2人共おはよう」


 するとリオとリアもそれぞれ挨拶を返してくる。


「あら裕二、おはよう」

「裕二、おはようー」


 裕二の今日の朝食はまあそこそこ味のするパンとサラダだ。

まあこの朝食の味にかなり満足しているのだが。

 裕二は食べながらリオに、


「今日は冒険者ギルドへの案内を頼んでごめん。よろしくお願いするよ」

「気にしないで。私達も冒険者ギルドに行かないといけない用事があったから。それとこういうときはごめんじゃなくてありがとうのほうが適切だと思うのだけれど」

「そうだね。ありがとう」


 リオはまた顔を少し赤くして下を向く。裕二はどうしたのかなと不思議に思う。


「その用事ってのは?」


 僕はリアに聞く。


「ギルドで冒険者登録をするのよ」

「なんでお姫様が冒険者登録なんてするのさ?」


 リオが真面目な顔でその理由を裕二に告げる。


「私達はこの世界の様々なものを見たり冒険するために、近々この国を出ようと思っているの。そのとき冒険者という身分があるといろんな特典もあって便利なのよ」

「いやマズいでしょ。一国の王女様が二人もそんな危険なことしたら、それに王女様の仕事は誰がやるの?」

「別に私達はそこまで弱くはないつもりなのだけれど。それに王女の地位なんてどうでもいいし、他の王女達が第1、第2王女の座を狙って喜んでやってくれるわ」


 まあ確かに昨日のあのブレイとかいうやつをぶっ飛ばせるくらいだし、実力はあるのだろう。

それに2人が冒険者になることに裕二が口を挟むのはおかしいと思うので、これ以上はこのことについては何も言わなかった。

 裕二はリオに少し気になった冒険者の特典について質問する。


「その冒険者の特典っていうのは具体的にどういうものなの?」

「冒険者の特典は、まず冒険者としての身分が冒険者ギルドから保証されること。

他には冒険者ギルドが経営に関わっている宿や酒場などを格安で利用できること。

そして冒険者になれば、冒険者ギルドから通常の簡単なお仕事依頼の他に冒険者限定の様々な依頼を受けることができるのよ」


それを聞いて裕二はこの世界にいる以上、ギルドに登録しておいたほうがよさそうだと思った。


「僕も冒険者ギルドで登録して冒険者になるよ」


リオとリアは驚いた。そしてリアが裕二に強く反対する。


「あんた馬鹿なんじゃないの! 確かにあんたはちょっとは強いかも知れないけど、まだ魔法もよく知らないくせに冒険者なんて死にに行くようなものよ!」


 その言葉は確かにその通りだと僕は思った。王の力があるけど魔法は使えない。だがこの世界を救うという目的を与えられているためどちみちギルドへの登録はしておいたほうがいいと僕は思う。


「僕はどうしても成し遂げないといけないことがある。そのためにもどうしてもギルドへの登録が必要なんだ!! 」


 裕二の思いを聞いたリアが言った。


「そこまで言うなら、私と勝負しなさい。私に勝てたら、あなたは冒険者になる資格があると認めてあげる」

「えぇ!! 」


 裕二はいきなり勝負しろと言われて驚く。リアとは出きれば戦いたくない。


「何を言っているのリア! 裕二は十分強いし冒険者になるのに必要な素質は備わっているわ。そんなことする必要はないわ」


 リオがリアを止めようとする。


「お姉ちゃん止めないで。裕二が本当に覚悟があるのかを見るだけだから」


 リオは少し考えてから言う。


「わかったわ。それなら私は止めないわ。裕二、悪いけどリアに付き合ってあげて」


 リオからのOKも出てしまったようなのでやるしかない。


「言っとくけど一切手加減しないんだから」


 リアが裕二を指差して言い放つ。

 その言葉に対して裕二はリアに返す。


「もちろん最初からそのつもりだよ」


 そして裕二達は勝負のためにシャーロンから少し離れた場所の広場までやってきた。

リオがルールを確認する。


「勝敗条件は相手に参ったと言わせるか、相手を戦闘不能にすること。魔法の使用も可。これでいいわね?」


 裕二とリアは頷く。


「それでは、勝負はじめ!!」


 リオの勝負開始の合図と共にリアが魔法を使用する。


「炎よ、打ち出せ! 火の弾(ファイアボール)!」


 こちらに向けてバスケットボール波の大きさの炎の玉が打ち出される。裕二はかろうじて避けながら、リアに接近し一撃だけ攻撃を与え戦闘不能にしようと考えていた。

 だが、なかなかこちらの攻撃が当たらないし、その都度反撃してくるため近づきづらい。


「昨日のブレイをぶっ飛ばしたパンチを目の前で見てるのに、警戒しないわけないじゃない」


 リアが裕二の攻撃を避けながら言う。

そりゃそうだと僕は思う。あんなデカい男をぶっ飛ばしたパンチを見てるのに警戒しないほうがおかしい。

それに裕二は殴り合いなどしたことがないので戦い方がよくわからない。ただこうなると裕二の能力強化はあまり役に立たない。

 

 そうなると2つ目の能力しかない。ただ能力の発動にはこの場合リオの協力が必要だ。それに仮に能力が発動しても、結局役に立たない能力なら意味がない。本当に一か八かの賭けではあるがやらないと裕二は負けるだろう。

 そして裕二はリアの攻撃を避けながらリオに聞いた。


「僕とリオは仲間だよね?」

「あら、いきなりどうしたの?」


 不思議そうな顔をしてリオは答える。


「いいから答えて」

「まあそうね。仲間だと思うわ」


 そのリオの言葉に反応するかのように裕二の頭の中に直接声が響く。


「"王の力"発動のトリガーを確認。リオ・レグネス・ノーグランドより能力を抽出」


 その言葉に合わせてリオの体から白い光が出てきて、裕二の体へ吸い込まれていく。

どうやらリオは自分から白い光が出ていることに気づいてなさそうだ。


「能力の抽出を確認。能力"物質(マテリアル)創造(クリエイター)"を王の力に付与。"物質創造"は生き物ではなく、なおかつ構造を理解している場合に限りその物質を構成し、再現します。ただし能力使用者より大きなものは再現できません」


 ここで頭の中に響いていた声は終わった。

それにしても物質創造なんてとんでもない能力だな。

かなりチートな気もするが、だからこそ王の力と呼ばれているのだろう。

裕二はありがたく使わせてもらうことにした。


「物質創造!!」


 裕二の能力発動を宣言したのと同時に手が光はじめる。

そこへ裕二に対してリアの魔法が発動する。


「闇よ、行く手を阻め、影縛(シャドウバインド)!!」


 裕二の影の足の部分が触手のような影に動きを封じられる。

 それにより僕の足も動かない。


「これでとどめよ! 水よ、打ち倒せ!!ウォ-ター」

「バンッ!!」


 とどめの一撃を加えようとリアは魔法の詠唱をはじめたが、それを最後まで言い切る前に別の大きな音が鳴り響きそれと同時にリアの意識は途切れた。裕二が能力で創造したものは、ハンドガンだった。

 

 つまり、裕二はリオへ向けてハンドガンを撃ったのだ。

構造は昔、FPSにはまっていたときに予備知識として知っていたので再現が可能だ。

弾はゴム弾なので、死んではいない。ただ気を失っているだけだと思う。


 リオはすぐにリアの方へ向かう。裕二も同じく怪我はないかと心配になり、ハンドガンをしまい、リアの方へ向かう。幸いリアは怪我はないようでただ気を失っているだけのようだ。リオは裕二に問う。


「さっきのあの力はいったい何?」


 この力のことをリオ達に言うべきか迷ったが、


「悪いけど、今は言えない」


「そう。まあ無理に聞くつもりはないわ。あなたにも理由があるのだろうし」

「そうしてくれると助かるよ」


 この力のことを話すと何かしらの理由で2人に迷惑がかかると思い、言えなかった。


 しばらくすると、リアが意識を取り戻した。

目を覚ましたリアがリオに問う。


「お姉ちゃん、私負けたの?」

「そうね。この勝負は裕二の勝ちよ」


 リオが答えた。

 リアは起き上がり僕に言った。


「あなたには冒険者になる資格があると思うわ。さっきは、その、ひどいこと言って悪かったわね」

「気にしないでくれ」


 裕二は実際、王の力がなければ勝てなかったのだ。そしてこの勝負の結果判明したのは、王の力は想像以上のチート能力らしいということだ。

 裕二はこの先この能力を使いこなせるか不安だ。だが、強力なのは確かなので使いこなせるようになりたいとは思う。


 1人で考え事をしている間にリオとリアは準備を整えたようだ。


「さあ行きましょ。冒険者ギルドへ」


リオの言葉に裕二は頷いて歩きはじめた。

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