#4.異世界ニートとハプニング!
宿屋に着いた裕二達は受付へ向かう。
裕二は数日分の宿泊費として銀貨1枚を払い、部屋へ向かう。
部屋の中はベッドと椅子と机がそろった1人で寝泊まりするにはちょうどいい広さの部屋だ。
ベッドに横になった裕二はこの世界に来てからのことを振り返る。
気づいたらわけもわからないこの世界に来て、ゴスロリ美少女と人探しをして酒場で神に"王の力"の適正者だと言われたり、荒くれものをぶっ飛ばしたりと常識じゃ考えられないことばかり起こっている気がする。まあこの世界に裕二のいた世界の常識は通用しないのだろう。
ここまでくると自分がラノベ主人公にでもなったんじゃないかと錯覚しそうになるが、残念ながら自分がラノベ主人公になるにしても25歳のニートというのはどうなのだろう。さすがに主人公には無理があると思う。
「もうあと10歳くらい若けりゃ、ラノベ主人公になれたかなー」
とつぶやくがそれをすぐに自分で否定する。
「結局学生時代も陰キャラで灰色の学生生活してた僕には無理そうだな」
思わず裕二は苦笑する。
この宿には風呂があると受付で聞いたので裕二は風呂に向かうことにする。
風呂に向かう途中で時間を告げる鐘の音を聞く。どうやらこの世界では、時間を鐘の音が告げるらしい。
裕二はこの世界にも風呂の文化があることに驚いた。それと同時にこの世界でも風呂にはいれることはかなり嬉しかった。裕二は元々自室に引きこもってゲームをしていたが、お風呂はかなり好きで夜中に親に気づかれないようにひっそりと入っていた。異世界でゲームができず、もう楽しみがないと思っていた分風呂があると聞いたときの驚きは大きかった。
脱衣所の前に着いた裕二は男風呂の、のれんのかかった方の脱衣所にはいる。裕二はタブレットの翻訳アプリのおかげでこの世界の文字も読めるらしい。裕二は服を脱いで風呂へ続く扉を開けて風呂へ出る。
お湯に浸かっていたのは、まさかのリオとリアだった。
「えっ」
ここって男風呂じゃなかったの! と裕二は驚く。
リオとリアの真っ白なすべすべの肌と胸を見た裕二は顔が真っ赤に染まるのを感じた。リオの胸は少し控えめな大きさで、リアの胸はいわゆるボインボインだった。
「なんで裕二が女風呂に入ってくるのよ! この変態!」
リアがそう言いながらタオルで体を隠し、酒場で見せた水砲をこちらに向けて発射してくる。
「裕二、さすがに親しき仲にも礼儀ありというものよ。」
リオもタオルで体を隠し、呆れた顔で言う。
「うっ」
裕二が心にダメージを受けたとき、リアの発射した水砲が裕二の顔面に直撃する。
裕二は脱衣所の入り口までぶっ飛ばされて、そのまま気を失った。
「うぅ...」
裕二は部屋のベッドで目を覚ます。
ベッドの横にはリオとリアが座っていた。どうやら目覚めるまで待ってくれていたようだ。
「大丈夫?」
とリオが声をかけてきたので、
「もう大丈夫。僕が目覚めるまで待っててくれてありがとう」
と返すと、リオが少し照れたように下を向いてコクっと頷く。
「そ、そのやりすぎたわ。ごめんなさい」
リアが謝る。
「いや、リアは悪くないよ。あの状況なら当然のことだよ」
リアが裕二になぜこんなことをしたのかを聞いてくる。
「なんで女風呂なんて入ろうと思ったのよ?」
「いやのれんの方は男風呂って書いてあったんだけど......」
と答える。
裕二とリアがどういうことか考えていると、リオがはっと思い出したように言う。
「そういえばこの宿は日によって男風呂と女風呂が入れ替わるのよ」
そういえば風呂に向かう途中に鐘の音を聞いたが、あれは日付が変わったことを知らせる鐘だったらしい。裕二はそのことに気づかなかった。
「ごめん。あの鐘の音が日付が変わることを知らせるものだと知らなかった。僕が気づけばこんなことにならなかったのに」
裕二は2人に謝る。
リアが、
「私達も鐘の音に気づかなかったわ。気づけばこんなことにならなかったのに。悪いのは私達のほうよ。ごめんなさい」
リオも、
「私達の注意不足よ。ごめんなさい」
と謝る。
裕二はリオに気になることを聞く。
「僕、王女様の入浴を覗いた罪で死罪とかないよね?」
リオはいたずらっぽい笑みを浮かべて言う。
「そうね。事情はともかく裕二は一国の王女、それも2人のお風呂を覗いたのよ。普通に考えたら死罪よね」
「まあそうだよね」
裕二は半ば諦めたように言う。
だがリオは、
「まあでも、お互い様ってことで特別に許してあげるわ。リアもそれでいいわよね?」
「ええ、私も悪かったのだし。許してあげるわ」
裕二は心から安堵した。異世界に来て王女の入浴を覗いた罪で死にました、とか恥ずかしいし。
そのあと他愛もない話をして2人を自分たちの部屋へ帰した。
そして裕二はベッドで横になる。
気づかないうちに裕二は眠りに落ちていった。