#3.異世界ニートと2人の王女
時間が動き始めた。
ナイフをもった男はこちらへ突進してくる。裕二はそれを素早く回避する。そして男に拳で一撃与えた。
すると男は店の奥のほうまでぶっ飛び壁に激突した。店の客や店主は驚いて口を金魚のようにパクパクさせている。リオとリアは驚いた顔をこちらへ向けている。
「すごい! これが王の力か。実際使ってみると余計にチート感出てくるけど」
裕二は王の力の性能の高さに思わず呟く。
リオは裕二に、
「裕二、あなた前から思っていたのだけどかなり強いのね」
と言った。
リアからは、
「あなた一体何者なのよ」
と言われた。
一応神から説明を受けたとはいえ実際に自分の意思で力を使ってみると驚いてしまう。
裕二がやっぱりこの力チートだなーと自分の拳を見ていると、男がこっちにまた突進してきた。裕二はとっさに反応できず、しまった!と思いながら後ろに飛ぶ。
そのときリオが、
「風よ、空を裂け! 風刃」
リアが、
「水よ、打ち倒せ! 水砲」
すると、リアから風の刃が発射され男に無数の切り傷を与え、リオからは圧縮された水が勢いよく発射され、
男をまた店の奥の壁に叩き付けた。
男はその衝撃で気を失ったようだ。
裕二はその光景をただ見ていた。
裕二はリオに「大丈夫? 」と声をかけられ、ふと我に返る。
そして裕二は2人に問う。
「それって魔法だよね?」
「「ええ、そうよ」」
2人が答える。
このとき裕二はこの世界に魔法が存在することを知った、といいたいところだが、
よく考えるとこの世界に来たとき人が空を飛んでいたのを思い出す。そういや最初からいかにも魔法って感じのがあったなー。
とにかくこの世界には魔法が確かに存在するということを知った。
僕でも魔法が使えるのかリオに聞いてみた。
「僕でも魔法って使えるの?」
「ええ、適正さえあれば誰でも使えるわよ」
どうやら裕二にも適正さえあれば、魔法は使えるらしい。
「どうやったら魔法の適正があるのかわかるの?」
「冒険者ギルドに行けば、そこで調べてもらえるわ」
なるほど。冒険者ギルドか。いよいよもって異世界らしいなと裕二は思う。
そう考えていたところで端のほうにいた店主がこちらへきて礼を言う。
「このたびはあの「荒くれブレイ」を止めていただきありがとうございました」
どうやらあの男は「荒くれブレイ」という異名をもっていていろんな街の酒場で迷惑を起こしまくる厄介者だったらしい。
そしてブレイは街の警備兵に連行されていった。
裕二達は店主からお礼にと1人銀貨2枚をもらった。
酒場は、もう食事ができそうな状態ではなかったため街のレストランへ向かった。
そしてレストランに着き、食事をとりながら裕二はリオやリアと話をする。
まず裕二が軽く自己紹介をする。
「僕の名前は山野裕二。まだこの街に来たばかりだ。よければこの街のことなど、いろいろなことを教えてくるとありがたいな。よろしく」
するとリアが、
「挨拶が遅れちゃったわね。私はリア、リア・レグネス・ノーグランドよ。よろしくね裕二」
リアが微笑む。
この娘もリオと同様に微笑みがまぶしい。正直初対面で全く無警戒なこととタメ口なのはどうなのだろう?とは思ったが、リオいわく昔からこういう性格なのだそうだ。
この世界について知るべきだと判断した裕二は、リオにこの世界について聞いてみる。
「ところで、ここはなんていう国のなんて場所なの?」
リオは驚き半分呆れ半分といった顔で言った。
「ここは、ノーグランド王国の王都シャーロンよ。裕二はこんなことも知らないなんていったいどこから来たの?」
「まあとても遠いところ......かな」
さすがに別の世界から来ましたなんて言えない。
そしてノーグランド王国は大陸の中央部にある。広い領土を持っていて、緑の美しい豊かな国なのだそうだ。
「っていうかノーグランドってリオとリアの名前じゃないの?」
と聞くとリオが、
「そうよ。私達姉妹はノーグランド王国の第1王女と第2王女よ」
「えっ」
まさかの目の前にいるのは実はリアルお姫様だという事実に裕二は驚いて座っていた椅子からひっくり返ってしまった。周囲がこちらへ振り向く。裕二は慌てて席に戻って、
「えーと、失礼しました。王女殿下」
やはりお姫様相手なら言葉を変えるべきだと判断し丁寧に話す。
するとリオが、
「そんな固くならなくていいから。今更口調が変わったらそれはそれで変よ」
と言われたため裕二は普段通りの口調に戻した。
裕二はなぜお姫様が護衛もつけずに城下町まで降りてきたのか聞いてみる。
「なんで2人だけで街まで降りてきたの?」
リアが、
「だって城の中じゃ退屈だしお忍びよ」
と答える。
それは結構まずいだろと僕は思う。
「裕二は今日の宿どうすんの?」
リアが聞いてきた。
異世界に飛ばされてから、すぐにリオに出会ってリア探しをしていたため寝床を確保する余裕がなかったのだ。
「まったくノープランなんだけど......」
「なら私達が借りている宿に来ない?まだ部屋は空いているはずなのだけれど。ついでに明日は冒険者ギルドに案内してあげるわ」
いいのか?お姫様と同じ宿とか本当にいいのか?
まあリオ達がああ言ってくれてるんだし、他にあてもないのでお言葉に甘えることにする。
そして裕二達は食事を終えてリオ達の借りている宿にむかった。