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#27.異世界ニートとマーリン その2

【ノーグランド王国 交易都市ガムルダ 冒険者ギルド】


 マーリンがどれだけの実力があるのかを測るためにガムルダのギルドに来ていた。ガムルダのギルドはさすが交易都市というべきか、ガルードのような小さな街とは比較にならない程の建物だ。ギルド内は冒険者で賑わっており情報から雑談まで様々な話が飛び交っていた。


 裕二は依頼の貼ってある掲示板を見つめながらマーリンの実力を測るにはどれほどの難易度の依頼を受けるべきなのか決めかねていた。リオ達のほうは決まったかな? 裕二はチラっとリオとリアの方を見るが、どうやら裕二と同じく決めかねているようだ。


 そもそも実力がわからないからなぁ。裕二はそう考えながら掲示板を見ていた。そんななかマーリンは裕二が悩んでる横で掲示板から1枚の貼り紙を剥がして裕二に手渡す。裕二はマーリンから貼り紙を受け取り、依頼を見てみる。


『ムザンカの森にてドライブベアー3体討伐! 推奨()()()()()()()()パーティー』


 裕二はとりあえず何事もなかったかのように無言でマーリンに貼り紙を返して首を振る。マーリンは顔をむぅっと頬を膨らませて駄々をこねる子供のような顔で裕二を見つめる。その目からは『どうしてもこれがいいの!』という意思が伝わってくる。裕二はため息をつくとマーリンから再度貼り紙を受け取る。そしてリオとリアを呼んで貼り紙を見せる。


「リオ、リア。ちょっといいかな?」

「何か受けたい依頼でも見つかったの?」


 掲示板を見ていたリアは振り返って裕二に聞く。


「これなんだけど......」


 多分主にリアから怒られて却下だろうな。裕二はそう考えながらリオとリアに貼り紙を見せる。リオとリアは貼り紙をしばらくジッと見つめる。その後最初にリオが口を開く。


「確かに見たところ通常なら私達には不可能に近いわね」

「そう、だよね......」


 裕二はそう言って乾いた笑いを浮かべる。まあ普通に無理だよね。裕二はそう思い貼り紙を片付けようと考えたところでリオが更に言葉を続ける。


「でも私達ならできるかもしれないわね」

「そうね。だって私達火龍山であの邪龍を倒せたのよ。大丈夫よ!」


 リアが自信ありげに言った。リアの言葉にリオも頷く。


「そう......だよね。ありがとうリオ、リア」


 裕二は笑顔を浮かべて2人にそう言った。そして裕二はマーリンの方を向いて言う。


「それじゃあこの依頼を受けに行くよ」

「はい! ありがとうございますマスター」


 マーリンはあの頬を膨らませた顔が嘘だったのではないかのような嬉しそうな笑顔を見せる。裕二はその笑顔を前に少しの間頬を赤らめるが、すぐに首を横に振ってから心を落ち着かせる。危なかった。ロリコンとして目覚めてしまいそうだったわ。でも突然のあの笑顔は反則でしょ。裕二は心の中で呟く。


 そして裕二達は貼り紙とギルドカードを受付に提出しに行った。


「この依頼を受注したいんですけど」


 裕二が受付にいるに裕二より少し年下くらいの女の子に貼り紙を渡して言った。


「はい。依頼は......。えっ? えーーーーーーーーーっ!」


 依頼の貼り紙を確認した受付の女の子は驚きのあまり声をあげる。その声に反応して周りの冒険者達が何事かと言わんばかりにこちらを見る。受付の女の子は貼り紙と裕二達を何度も見てから慌てて裕二達に確認する。


「あの、このクエストは10人以上のパーティーが推奨なのですけど......」

「知ってますよ。だってそう書いてあるし」


 裕二は少し強がって何かおかしいことでも? とでも言うかのように不思議そうに首かしげる。受付の女の子は困惑してもう1度貼り紙を見直す。そして不安そうな顔をして言った。


「でも裕二さん見たところパーティーは4人ですよね? それでも本当に受注されますか?」

「はい。もちろん受けますよ」


 裕二は即答ではっきりと答える。受付の女の子は諦めたようにため息をつくと何も言わずに受注の手続きをする。そして依頼受注の手続きが完了し、裕二にギルドカードが返却されたときに受付の女の子が言った。


「本当に危険だと感じたらドライブベアーの方を見ながら刺激しないようにゆっくりと逃げてくださいね」

「ありがとう。もしものときはそうさせてもらうよ」


 裕二は礼を言って受付の女の子に手を振って別れる。


「早速ムザンカの森へ向かわないとね」

「ムザンカの森はこの街の東にある森よ。歩いてもそんなに遠くはないわ」


 裕二はリオと話しながらリオとリア、マーリンを連れてギルドから出ようとする。すると裕二達の前に4人の冒険者が裕二達を待ち伏せるかのように立ちふさがってきた。4人共体格のガッチリとしていて中々の迫力がある。リオはその冒険者達を軽く睨みながら言う。


「そこを通りたいので道を空けてほしいのだけれど」

「お嬢さんには悪いけどな、そこのひょろい奴がいけ好かないってのがこのギルド内にいる全ての冒険者の総意なんだわ。ってわけでそこのひょろい男はこっちで俺たちと仲良く遊ぼうぜ!」


 4人の冒険者の1人がニヤニヤしながら言うと、周りの冒険者達も気味の悪い笑みを浮かべる。そこへもう怒りの沸点ギリギリといった感じの不機嫌そうな顔をしたリアが裕二達より1歩前へ進み出て立ちふさがっている4人の冒険者に向かって罵声を浴びせる。


「あんた達ふざけないでよ! 私達の邪魔しないでくれる! 裕二がひょろいですって? そう見えるかもしれないけど少なくてもあんた達なんかの何百倍も強いわよ! このデカブツ!」


 リアから罵声を浴びせると立ちふさがっている4人の冒険者はしばらくの間沈黙する。


 そしてそのしばらくの沈黙の後、4人の冒険者の1人が次は裕二達に罵声を浴びせ始める。


「てめぇら雑魚の初心者風情がこの俺たちに対して何調子こいてんだ! あぁ!? てめぇら雑魚はおとなしく初心者向けの依頼でも受けてればいいんだよ!」


 そう言って4人の冒険者の1人が裕二に向かって拳を振り下ろそうとする。裕二はとっさに反撃しようと構える。


 だがその冒険者の拳は裕二に振り下ろされることはなかった。正確に言えば振り下ろすことができなかったのだ。冒険者が振り下ろそうとした拳は床から発生した氷に固定されピクリとも動かなくなっていたのだ。


 裕二がふと後ろを見るとマーリンの手から魔法陣が出現していることから、この氷の魔法はマーリンの魔法なのだろうと裕二は理解する。


「マスターに敵対する者は私が許しません!」


 マーリンは4人の冒険者達を睨みながらはっきりと言った。マーリンを除くその場にいた全員は幼い見た目の女の子であるマーリンの言葉から発せられる威圧によりその場から指先1本たりとも動かすことすら出来なくなってしまった。


 嘘だろ。体がまったく動かない。裕二は動かない体を動かそうとするが、裕二の動きたいという意思は体にうまく伝わっていないのかやはり裕二の体は動かなかった。しばらくしてからマーリンは裕二のほうを振り返るといつもと変わらないあの笑顔を浮かべて言う。


「さあマスター。早く行きましょう」

「あ、うん。ありがとうマーリン」


 裕二は言葉を発することができたことから威圧が解けて動けることを確認すると先程のマーリンの威圧に若干驚きながらも、マーリンに礼を言ってその頭を撫でる。マーリンは撫でられた猫のように幸せそうにしているので思わず裕二の表情も綻んだ。マーリン実は相当強い気がするんだけど。裕二はマーリンを撫でながらそう思う。


 マーリンを撫で終わると裕二達は依頼をこなすためにギルドから出てムザンカの森へ向けて出発した。

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