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#20.異世界ニートとベビードラゴン

 裕二達は火龍山(ひりゅうざん)を順調に登っていた。火龍山の中はかなり入り組んでいていわゆるダンジョンのようになっていた。火龍山に入った当初は簡単に倒せるようなテイルドッグという小型犬のような見た目の犬型の魔物などの弱い魔物しか出てこなかったが、進めば進むほど出てくる魔物は少しづつ強くなっているのは気のせいではないだろう。


 度重なる連戦により王の力により体力も底上げされている裕二はともかくとしてもリオとリアの顔には疲労の色が見え始めていた。更に火龍山は一応火山の類になるらしくある程度登ると熱気により山の中の気温が上がり体力をより消耗させるのだ。裕二達の体から汗が滴る。


「2人共大丈夫? そろそろどこか安全そうな場所で休憩をとろうか?」


 裕二は2人を心配して声をかける。


「ええそうね。とても申し訳ないのだけれどそろそろ休憩したいわ」


 リオはそろそろ体力も限界のようだ。


「さすがに疲れたわ。っていうか裕二、あんたどれだけ体力あるのよ。これだけ暑くてこれだけ戦ってるのにまるで疲れてないじゃない!」


 リアも相当疲れているようだ。そして裕二の体力の異常さを指摘する。それを聞いて裕二は適当に笑ってごまかしながら「ごめん。これはただのチートなんです。本当の僕の体力ならとっくにくたばってます」と心の中で謝る。裕二達は休憩をとるために、少し来た道を戻った場所にある少し広めの空間に移動する。そこで裕二達は壁に寄って座り込み食事と水分をとる。


「はぁーー。いやー疲れた。しかも暑いし、すごく帰りたいんだけど」


 1番体力の残っている裕二が情けなく言う。


「あんた1番元気でしょ! そのセリフは私達が言いたいくらいよ!」


 リアは裕二に反論してから座り込む。


「かなり疲れてしまったわ。それにしても暑いわね。おかげでドレスが汗で濡れてしまったわ」


 そう言ってリオは着ているゴスロリドレスの胸元を片手でをつまんでもう片手で風を送っている。思わず裕二は風を送るためにドレスの胸元をつまんだ結果見えそうになっているドレスの中を凝視してしまう。すると突然肩をたたかれ振り向くとそちらにはご立腹のリアがいた。


「ちょっと裕二。お姉ちゃんの体をジロジロと見ないでよ! この変態!」


 リアは裕二がリオを見ていたことに気づき、裕二に怒りだす。


「いやいや別にジロジロは見てないよ!」

「見てたじゃない! ジロジロと舐めるように!」


 裕二は否定するがリアは更に言い返す。


「なんかさっきよりひどくなってるんだけど!」


 裕二がツッコミを入れる。裕二は何とかリアの怒りを鎮めないといけないと思い


「大丈夫だ。リアの体もスタイルいいと思うよ」


 と、裕二は焦りながら言った。


「な、な、ななな何言ってんのよバカーーーーーーーーーーーーー!」


 リアは顔を真っ赤にして裕二の頬を思い切り殴った。裕二は殴られて少しぶっ飛ばされる。裕二は頬を手で抑えながら起き上がってリアのほうを見ると涙目で怒っているように見える。そして裕二の視線がリアに向いた瞬間リアはプイッとそっぽを向いた。そして裕二は何が悪かったのだろう?と考えながら今リアの近くにいるのはマズイと思い少し離れたところで座る。





 それからしばらく経った頃リオが立ち上がり裕二に言った。


「流石にこの服装では暑いから他の服に着替えて来るわね。一応こっちは見ちゃダメよ。行きましょリア」

「絶対にこっち見ないでよバカ」

「う、うん。わかってるよ。もちろん」


 リオとリアからの言葉に裕二は答えてささっとリオとリアの真反対を向く。しばらくして裕二の後ろの方でゴソゴソと音がし始めた。おそらくリオとリアが着替え始めたのだろう。裕二は壁などの隔てない空間の自分の後ろで女の子が2人も着替えているという人生初めての経験に落ち着かなくなっていた。そして裕二はそわそわしながら自分の理性を保ち続けることに全力を尽くしていた。


「裕二、もういいわよ。待たせてごめんなさいね」


 リアが裕二に声をかける。裕二が振り向くとそこには白いワンピースを着たリオと半袖のカッターシャツを着ていわゆる夏服の女子高生のような服装にチェンジしたリアがいた。裕二はいつもと違う2人の姿に思わず魅入ってしまう。


「その、似合っているかしら?」

「もちろんだよ。2人共とても似合っているよ」


 リオの質問に裕二は即答する。裕二の言葉にリアは少し顔を赤くしてまたプイッとそっぽを向く。


「ありがとう。嬉しいわ」


 リオは裕二にそう言って微笑む。そしてリオは


「そろそろ休憩は終わりにしましょ」


 と、言って立ち上がる。それに合わせて裕二とリアも立ち上がる。


 裕二達はまた火龍山を登りはじめた。かなり登ってきているので出てくる魔物はライドウルフやメイルスパイダーといったかなり強力な魔物が多くなった。裕二達は苦労しながらも魔物を倒しどんどん火龍山を登って行った。するとかなり上の方まで登ったのかベビードラゴンがちらほらと出てくるようになってきた。裕二達は火龍山でやらなければならないことの1つを終わらせるためにベビードラゴンと戦い始めた。ベビードラゴンは体はドラゴンというには小さいが高熱のブレスを放つため山の中という狭い空間で戦うには中々に相性が悪い。


氷の牢獄(アイスプリズン)!」


 裕二は盗賊を倒したときにも使った魔法氷の牢獄を使うが、この場所の高い気温のせいで氷は短時間で溶けてしまうため足止めにしかならなかった。リオが影縛(シャドウバインド)で足止めする間にリアが剣でベビードラゴンを攻撃するがあまり効果は出ていない。1番攻撃力の高そうな氷の牢獄も相性が悪くて使えないならどうすれば......と裕二は戦いながら考えてながら


「物質創造!」


 そこで裕二は王の力を発動させてハンドガンを生成し発砲する。効果はあるが致命傷には程遠いものだった。このままでは不味いと裕二達は思った。そして手に持っているハンドガンを見て裕二はあることを閃く。


「もしかしたらこれならいけるかもしれない!」


 そう言って裕二は王の力を使用状態で更に氷の牢獄を発動させる。するとベビードラゴンの周りに大量の魔法陣が出現する。そしてその魔法陣から一斉に氷の牢獄が発動しベビードラゴンを凍てつかせる。裕二は普通ならできない魔法の複数同時発動を王の力による魔力の底上げと魔法陣の大量複製によって実現したのだ。ベビードラゴンはそのまま動かなくなった。


「やった! なんとか倒せた」


 裕二はそう言いながら脱力しへたり込む。そして裕二のもとへリオとリアが駆け寄る。


「1度に魔法を複数展開するって相当高度な技術を持った魔術師でもできるかどうかっていう技術なのよ。それを魔法を覚えて日も浅いあなたが使えるって相変わらずの規格外よね」


 リアが驚き半分呆れ半分といった顔で言う。


「裕二、そろそろ教えてくれないかしら。あなたのことを」


 リオが裕二に真剣な声で聞く。裕二はどうするべきか迷ったがもう隠し通すのは難しいということとこれから長い付き合いになりそうだし知ってもらうべきだろうという2つの理由からリオとリアには王の力の2つ目の能力についてだけ説明した。流石に別の世界から来たとか、神から世界を救う役目を預かっているとかは言えない。1つ目の能力を言わなかったのは自分勝手ではあるがリオとリアに自分が本当にただの冴えないニートだと思われて幻滅されたくなかったからだ。


「何それ、そんなの規格外もいいところじゃない!」


 リアが自分もそんな能力が欲しいと言わんばかりの羨ましそうな表情で言う。


「なるほど。そういうことなのね。とても素晴らしい能力だと思うわ。これからも期待してるわね裕二」


 対してリオはさほど裕二の話を聞いても表情の変化を見せずいつものように裕二に言った。 そして裕二達はその後もベビードラゴンと何回か戦ったが苦戦せずに倒すことができた。その中リオが少し不安そうな顔をしていたので裕二はリオに聞いてみた。


「どうしたのリオ? 不安そうな顔をしているけれど何か気になることでもあるの?」

「裕二は気づかない? ここにいるベビードラゴン達、みんなが何かに怯えるような顔をしていたのを」


 裕二はリオに言われて思い出してみるが戦うのが精一杯でよく思い出せなかった。


「ごめん。よく思い出せない」

「そう。ただもし私の考えていることが正しいのならこの火龍山の山頂にはきっと何かがあると思うわ」


 リオは真面目な顔で言った。その後裕二達は山を登るなかでベビードラゴンと遭遇したが確かにリオの言う通り何かに怯えているように見えた。つまり火龍山の山頂にはリオの言う何かが起こっている可能性が高いということであると裕二は考える。そして裕二達は気づけば山頂に出ることが出来る出口の前までたどり着いていた。裕二は危険を感じつつもここまで来たのなら! と自分を奮い立たせる。


「さあ行こう! 山頂で何が起こっているかわからないけどそれを解決して村を救おう!」


 裕二はリオとリアに覚悟を決めた真剣な顔で言う。リオとリアはそれに頷く。そして裕二達は山頂へと進んでいった。

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