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#2.異世界ニートと王の力

 2人が街の酒場に入ると、中は机や椅子が散乱していた。店の客や店主は店の端っこで怯えている。

賑わっているということはなさそうだ。

 裕二は驚いた顔で、


「これどうなってんの?」


 と、思わず声に出す。

 そしてその中央には、二人の男女が言い争っている。男のほうは体格がでかく身長は2mはありそうだ。肩幅が広く筋肉が発達していて、いかつい顔をした40代くらいのおっさんだ。女の子ほうは年齢はリオと同じくらいだと思う。身長もリオとあまり変わらない。金髪のツインテールで、服装は赤いブレザーにタイツと黒いスカートでまさしく裕二のいた世界の女子高生といった感じだ。そして目は黒と金色オッドアイだ。そして何よりもリオに負けず劣らずの美少女であることから間違いなくあの娘がリオの妹なのだろうと裕二は確信する。リオは美しさと可愛さを備えているのに対してリオの妹はとにかく可愛さが目立つ。まるでアニメに出てくる可愛さ重視のヒロインの様だ。

 リオは店の中央にいる妹だと思わしき女の子に問う。


「リア、あなたいったい何をやっているの!」


 どうやら本当にリオの妹のようだ。

 すると、リアがこちらを見て、


「あっ、お姉ちゃん! ごめん気になるお店があって見てたら、はぐれちゃったみたい」

「それはわかったのだけれど、これはいったいどういう状況なの?」


 リオがリアにこの状況の説明を求める。

 リアは、


「暗くなったし、お姉ちゃんを探すの切り上げてここで食事をしていたらそこのデカいのに絡まれて気づいたらこうなってたの」


 リアは、頭は姉のリオと同じくいいようだが、姉より短気らしい。

 ここまで話したところで、リアと争っていた体格のいい男が、


「おい、てめえらこのオレを無視してんじゃねえ」


 いかにもキれてますといった口調で怒鳴ってきた。

 リアは目つきを鋭くさせて男に言った。


「もうあんたなんかにかまってる暇なんてないんだけど」


 すると、どうやら男はブチギれたらしい。

 額に青すじを浮かべて、


「てめえら全員ぶちのめしてやるよ!!」


 男は持っていたナイフをこちらに向けてきた。

 裕二は早くここから逃げたいと思った。

 だが恐怖で足が震えて思うように動かなかった。

 裕二は心の中でただゲームをして1日を過ごしていたかったのに、なんでこんなことになったんだとつぶやいていた。


 そして男がナイフを持ってこちらに向けて振り回してくる。

 もうダメだ。死ぬ。

 そう思って目を閉じたとき、男の動きが止まった。

 あれ?と思い見渡すと男だけでなく、周囲の人や物まで動きを止めていた。

 何が起こっているのかわからずとまどっている裕二はピキッという音を聞いて上を見上げた。

 すると、天井が、いや正確には天井付近の何もない空間に亀裂が入っていく。


 そして亀裂は大きな穴に変わる。穴からは光輝く何かがこちらへ出てこようとしている。


 裕二はただ無言でただ"それ"を見つめることしかできなかった。

 そして光輝く"それ"は穴を通りこちらへ出てきた。

 "それ"は人の形をしていた。

 "それ"は男にも女にも見える中性的な体格をしていた。

 顔は光に遮られ見ることはできなかった。

 "それ"を表現する言葉を裕二は知らない。

 "それ"は僕に向けて言った。


「どうもー神でーす。イェイ!」


 裕二の表情は一瞬で凍り付いた。

 なぜなら、あそこまでそれっぽい登場をしといて、神と名乗ったそれはとにかくチャラかった。

 それに加えてこの世界に来たときにポケットに入っていた手紙の文面の印象と真逆といっていいほどに違うからだ。

 そしておそらく時間を止めたのはあの神なのだろう。

 裕二はすぐに神に問う。


「なぜ僕をこんなところへ飛ばしたんだ?そしてここはどこだ? 」


 質問に対し神はとてつもなく軽い感じで答える。


「まあしいていうならーなんとなくなんだけどー。そしてここは元々君のいた世界と別の世界てーきーなー場所だZE☆」

「いや、それマジでシャレにならんから」


 裕二は反射的にツッコミをいれる。


「まあ落ち着こうZE☆ 一応ちゃんとこの世界に飛ばした理由もあるからさ」


 ここまでくるとさすがにウザいより面倒くさいのほうが大きくなってきた。


「それで、あえて僕をこの世界に飛ばした理由って何なんだよ?」

「それはー君にー"王"の適正があったからだZE☆」


 もう僕はツッコまないぞ!

 それで"王"の適正って何だ?

 家で1日中ゲームしてた僕に"王"の適正なんてあるわけない。


 せいぜいニート王がいいところだろう。

 裕二は神に問う。


「その"王"の適正ってのは何なんだ?」


 すると神は急に真面目な口調で、


「"王"の適正とは正確には"王の力"の適正のことを言うんだYO!」

「王の力?」


 裕二はすかさず問い返す。


「"王の力"ってのはー、100%そのまんまの意味ので王となるべき者に与えられる力なんだZE!"王の力"持ってたらユーはその世界を統べるキングになれるんだYO!ただしその適正をもつ者はとても稀で規則的に1つの世界に1人の適正者がいるかどうかとレアな力なんだZE☆」


「その王の力は具体的にどんなものなんだ?」


「王の力は主に2つの能力があって~1つ目はその適正者の身体能力やその他の能力を底上げしてくれるんだZE☆

2つ目はその適正者によって能力が違うけどユーの場合はユーの周囲にいる人物とお互いを仲間と認めたときに発動されるYO! 発動する能力はその相手次第って感じー」


 裕二は自分の王の力をとても便利な能力だとは思ったが、ただし仲間がいればの話である。

 現在裕二には仲間といえる存在はいない。もしかしたらリオは裕二を仲間だと思ってくれるかもしれないが、実際どうなのか裕二には判断がつかないため、2つ目はつかえなさそうだ。


 どうやら街でガラの悪い連中のリーダーらしき男を倒したときのおかしな感覚や謎の力は王の力が一時的に発動したということなのだと考えられる。

 そして、1つ目の能力底上げは目の前で止まっている男をどうにかするのに使えそうだ。


「2つ目の発動する能力ってのは人によって違うのはわかったがその能力は変化とかはするのか?」

「Oh!その説明忘れてたYOU! てへぺろ」


 今のはさすがにドン引きだ裕二の表情がまた引き攣る。


「これは明確なことは言えないけどーおそらく親密度が高くなるとより高位の能力に変化するかもNE!」


「そしてユーをこの世界に呼んだ理由はぶっちゃけこの世界はあるヤツのせいで滅びそうなんだけど、ミー達神々は直接この世界に干渉することはできないから適当に王の力の適正者かなーと思ってユーを呼んだら王の力使えたしホントマジラッキーってことで世界救って?」

「いや、いきなりそんなこと言われてもな......」


 裕二はいきなり自分がこの世界に連れて来られた理由を聞かされいろんな意味で戸惑っていた。そこへ


「まあ結局のとこ、君に世界救ってもらわないと元の世界にあげないけどNE!」


 と、神は追い打ちをかけるように言った。


「それってつまりどちみち僕にはこの世界を救うしか選択肢ないだろ!」


 裕二は神に怒りの籠った口調をで言った。


「まあ旅のついでとかに軽く世界救えばいいんじゃない?」

「世界救うのは片手間ぐらいの軽い役目なのか」


 神の軽い調子の発言に裕二は疲労の混じった声でツッコミを入れる。もう2人で漫才ができるレベルなのではないかと思うレベルだと裕二は思う。


「まあ、わざわざ説明してくれてありがとう」


 必ずしも異世界に連れてきたからといって説明する義務はないのに説明をしてくれたということに対して裕二は神に礼を言う。

 礼を言われた神が、


「もしかしてーこれがキミ、ツンデレってやつなのかYOU! おれの彼女になるー?」

「キモイわ。はよ帰れ!」


 半ばキレ気味になった裕二は言う。


「ってかチャラい割には言葉のバリエーション少なくない? もしかして......」


 裕二がここまでの会話を振り返り、ふと気づいたことを言うと、神の表情が少し固まる。


「それじゃー天界から見守ってるしガンバー」


 と早口で言い残しまぶしい光に包まれて神は帰っていった。


「まさかあのチャラいのってキャラづくりとかじゃないよね? しかもネタ古くね」


 裕二はまさかと思いながら呟く。神が帰ってから少し経った頃、止まっていた時間が動き出した。

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