#19.異世界ニートと火事の原因
裕二達はリアの案内でディンゴのいるという数少ない焼け落ちなかった建物である村役場に向かって歩いていた。もう日が暮れるというのに村の人々は自分達の村を復興させようと働いている。裕二はそれを見てただ素直にすごいなと思いながら歩いていた。自分よりもよっぽどショックを受けているはずなのにそれでも自分達の力で立ち上がっているのを見ていると前までの自分が恥ずかしくなってきたため思わず裕二は少し俯く。
それを見てリオは
「裕二は気にし過ぎよ。裕二だってしっかりと立ち上がったのだから気にすることではないわ」
と、裕二を励ます。
「うん。ありがとう」
と、裕二はリオに礼を言う。それを見ていたリアが
「お姉ちゃん何だか裕二に甘過ぎない? 元々甘いなとは思っていたけどもしかして広場で何かあったの?」
と、聞いてくる。裕二はそのときリオの膝枕を思い出す。思わず裕二は顔を背ける。リアは
「やっぱり何かあったのね! 裕二、お姉ちゃんと何してたか言いなさい!」
と、裕二を問い詰める。裕二は何と答えるべきかで困り、言葉が詰まってしまう。そこへリオが
「リア、特に何もなかったわ」
と、リオが救いの手を差し伸べる。しかしリアはまだ怪しんでいるようで
「いや、でも裕二が......」
と、リアが言ったところで
「何もなかったのよ。わかった? リア」
と、笑顔という名の威圧を纏ったリオが言う。リアはビクッとしてコクコクっと急いで頷く。裕二はリオの威圧が自分に向いているわけでもないのに思わずビクッとしてしまった。
そして裕二達はディンゴがいるという村役場に着いた。焼け落ちなかった建物といってもやはりただではすまなかったようで見た目はかなり傷んでいるし、屋根も所々に穴が開いていた。裕二達は村役場に入りそのままリアの案内で村長の部屋と思わしき部屋へと入る。すると中で忙しそうに書類仕事と格闘するディンゴの姿があった。そしてディンゴも部屋に入ってきた裕二達に気づいたらしく
「おっ来たか! わざわざこっちまで来てもらってすまねぇな。まっ取りあえずそこに座ってくれ」
と、裕二達に座るように促す。裕二達が椅子に座るとディンゴも向かい合うように置かれた椅子に座る。
「まずは改めて村を救ってくれたこと、本当に感謝する。そっちのリアには村の復興の手伝いもしてもらったようだし、そちらについても感謝する」
そう言ってディンゴは頭を下げる。裕二は照れ隠しにアハハと笑う。そしてディンゴは頭を上げて今回の火事の原因について話し始めた。
「今回の火事の原因となっているのは火龍山に住んでいるベビードラゴンが群れで降りてきてこの村を襲い始めたことにある。だが本来ベビードラゴンは火龍山の上の方で暮らしていて滅多なことでは降りて来ないはずなんだ。つまりだ。現在火龍山の上の方で何かが起こっているってことだ。何かはわからんがな」
裕二は話を聞いて悩み始めた。話を聞く限りでは今の火龍山は何かが起こっていてとにかく危険な匂いがするため今火龍山に入るのはあまりいい選択ではない気がする。だがしかしこの村の現状をこの目で見て自分も何かできることをしたいといったところだ。迷ってリオとリアの方を見ると2人から裕二の意見に従うという信頼の眼差しが向けられていた。
「それでは、僕達が火龍山へ向かいなんとかしてきます」
裕二がディンゴに提案する。するとディンゴがそれに反対する。
「そいつはとてもありがたいんだがな。今の火龍山はとにかく危険だ。やめておいたほうがいい」
「それでも僕たちは行きます」
裕二は決意に満ちた目で言った。続けて
「それに僕達が受けている依頼を達成するためにも火龍山には行かないといけないので」
と、裕二は笑顔で言った。隣でリオとリアが頷く。するとディンゴは
「わかった。そこまで言うなら俺はもう止めねえ。ただし絶対帰って来いよ」
と、ディンゴはニッと笑って言った。
「はい!」
裕二はそう言ってディンゴと握手を交わし、村役場を出た。外はすっかり夜になっている。この村にはもうほとんど建物が残っていないため裕二達は村の外れにて野営をすることにした。今日からはガルードを旅立つ前に買い込んだ食糧を解禁するためわざわざ森に入って食糧を調達しなくてもいいのでかなり楽である。そして裕二達は明日からの火龍山の中への冒険に備えて早めに睡眠をとることにした。
朝、まだ夜が明けたばかりの頃にはもう裕二達の冒険の準備は整っていた。裕二は眠い目をこすりながらも気合いを入れる。
「よし! それじゃあ行こうか火龍山へ!」
「ええ。行きましょ」
「うん! さっさと問題解決して村を助けないとね!」
裕二の言葉にリオとリアがやる気に満ちた声で言葉を返す。火龍山へは、村を通りそのまま真っ直ぐ進むと山の入り口がある。裕二達は山の入り口を目指し村を通過しようと歩いていると、山へ向かう際に通る村の出口にディンゴが待っていた。
「待ってたぜ。あんた達みたいな若いのを危険な場所に出すんだ。せめて見送らせてほしくてな」
「ありがとうございます」
ディンゴの気遣いに裕二は礼を述べる。
「それじゃ気をつけてな。全員で生きて帰って来いよ」
「「「はい!」」」
ディンゴの言葉に裕二達は元気よく返事をしてまた火龍山へ向かって歩き始めた。
それからしばらくして村と火龍山を繋ぐ森を抜けて火龍山の山の入り口にたどり着く。ここから山の中へ入るともう戻ってこれないかもしれないと裕二は少し怖くなる。それでも裕二は自分で自分を奮い立たせる。そして裕二達は火龍山の中へ入っていった。




