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#16.異世界ニートとカップラーメン

 依頼を受けた裕二達はギルドを出て火龍山(ひりゅうざん)へ向けて街から出発した。火龍山はシャーロンの南にある火山で隣国であるラーワルド共和国との境目となっているらしい。ガルードからは歩いて4日程の距離だ。

 裕二達は道中多少魔物に襲われたりはしたもののこの辺りではとても弱い魔物しか出てこなかったので裕二達でも何の問題もなく倒して進むことができた。


 

 歩いているうちに日が暮れて夜が訪れた。


「そろそろ暗いし野営にしたほうがよくない?」


 裕二が判断しリオとリアに提案する。


「そうね。それに私達は野営は初めてなのだから準備に多少は時間がかかるだろうから裕二の言う通りここで野営にしましょ」


 リオが少し考えてから答えた。そして裕二達は野営の準備にとりかかった。野営に必要なテントなどの道具はログレオさんのお店で購入していたのでそれを張る。


「あら、テントを張るというのは意外と大変ね」

「あーもうこれ本当に出来上がるかしら」


 リオとリアは苦労しながらそう言った。


「確かにこれは難しいね。アハハ」


 裕二は少し力なく笑う。そして今立てているテントを見ながら「僕のいた世界のテントより構造複雑な気がするんだけど! まあテントとか写真でしか見たことないけど」と思った。リオとリアはもちろん裕二もテントを張るのは初めてである。


 裕二は昔から学校以外ではほとんど外に出なかったので必要以上に外に出るのはもちろんのことキャンプなどもってのほかである。それにキャンプに一緒に行くような友達もいなかったのだが......。なので裕二はテントを写真でしか見たことない。写真でしか見たことはないが軽く構造ぐらいは知っているつもりだがこんなに難しくはなかった。つまりこの世界のテントはそもそも仕組みが違うのだろう。


 結局多少遅くなることも見越した上での予想を更に上回る遅さでテントは完成した。既に周りは暗くなっていた。


「やっと出来た!」


 裕二は少し疲れた顔で言った。そして魔力で光るランタンを置いてその周りに裕二達は座り込む。すると気が抜けたのかグーーーッと裕二のお腹の音が鳴る。


「ハハ。お腹減っちゃったね。ご飯どうしようか?」


 裕二は少し恥ずかしいのを笑ってごまかしながら言った。食料はあるにはあるのだがそちらは火龍山に入った後に備えたものであるため、簡単に消費はできないのだ。


「困ったわね。火龍山の麓くらいまでは現地調達する予定だったのだけれどここまで暗いと現地調達は無理よ。他の方法を考えないと」


 リオも困ったように言う。


「裕二なんとかしてよ」


 リアが裕二に投げやりに言う。


「いやなんとかしてもと言われても......」


 と言いながら何かないかと裕二は自分のリュックを漁っているとリュックから何かが転がり落ちた。裕二はリュックを覗き込みながら、


「今落ちたもの取ってもらっていいかな?」


 とリオに言う。リオは転がり落ちたものを拾って裕二に渡す。


「全部拾ったわよ。でもこれはどういったものなの? 見たこともないのだけど」

「えーっとどれかな?」


 リオの質問が気になって裕二は自分の落としたものを見る。すると裕二は


「あーーーーーーーーっ! そっか。それがあったんだった!」


 と裕二は驚きの余り大声で言って立ち上がる。裕二がリュックから落としたものそれはカップラーメンだったのだ。この世界に来たときの持ち物で1番その場で役に立たなさそうだったのでリュックの中に入れたままだったのを忘れていたのだ。カップラーメンはちょうど3つあるので1人1つ食べられる。空腹をとりあえず凌げるということでホッとする。リアはおそらく食事が出来るということを察したのか機嫌がよさそうだ。そこへ背中をツンツンとつつかれるのに気づき裕二が振り向くとムスッとした表情のリオが立っていた。


「と、とにかくそのよくわからないものについて欲しいのだけど」


 と、リオはムスッとしたまま裕二に言った。リオは自分のわからないものが何か聞いたのに裕二が答えてくれないことに対して少し不機嫌になったのだ。裕二は理由はわからないがとにかくリオが不機嫌であることだけは理解したのですぐにリオとリアにカップラーメンについて説明する。


「これはカップラーメンと言う僕のいた国にある食べ物だよ。この上に付いている蓋を半分外して容器にお湯を注いでその後蓋を戻してしばらく待つと料理が出来上がるんだ」


 説明を終えるとリオとリアは不思議そうにカップラーメンを見つめる。裕二は実際に作ろうと思い


「リア、魔法でお湯は出せる?」


 と、カップ麺に必要なお湯を魔法で出せるか聞いてみる。


「もちろん! 湯水(ホットウォーター)という魔法を使えばお湯が出せるわ」


 リアは答える。やはりこの世界の魔法の名前はなんというか内容そのままな気がするな裕二は思う。裕二は早速カップラーメンの蓋を半分開けて魔法を使う。


「湯水!」


 すると出てきた魔法陣からお湯が出てくる。裕二はお湯を入れた後、リオとリアにも同様にお湯を入れてから蓋をしてカップラーメンをしばらく待つ。


 しばらく待っている間リアはずっとラーメンが楽しみといった顔をしている。リオはラーメンの容器を様々な角度で見ながら「どういう仕組みなのかしら」と呟いている。


 しばらく待った後裕二が蓋を外すとラーメンのいい匂いが広がった。どうやらラーメンは豚骨らしい。リオとリアは初めて見るラーメンに驚きつつもその興味や空腹とラーメンの美味しそうな匂いもあり早く食べたそうだったので裕二は言う。


「それじゃあ冷めないうちに食べようか!」


 リオとリアはそれに頷く。


「いただきます」


 3人でそう言ってラーメンを食べる。


「美味しいわね! 私達はお湯を入れただけなのにこんなにも美味しい料理が出来上がるなんて」

「何これ! とっても美味しい! スープがとても濃厚な味ね」


 リオとリアがラーメンの美味しさに感想を言う。どうやら2人にはご満足いただけたようだと裕二はホッとする。


「久々のカップ麺はとても美味い!」


 裕二も久しぶりに食べるラーメンをよく味わう。裕二はそこであることに気づく。この世界に来てからはずっとそうだったのだが食事のときに使うのはスプーンとフォークとナイフなのだ。つまり箸がない。スプーンやフォークに慣れたとはいえ箸がないとやはりラーメンは食べづらいのだ。リオとリアのほうを見てもやはりフォークでは食べづらそうだった。食べるのに時間がかかってしまうと麺が伸びてしまうと思った裕二は「物質(マテリアル)創造(クリエイター)」を使用する。それによって作り出されたのは箸だった。裕二はラーメンを食べるのに苦労しているリオとリアに箸を渡す。


「この棒はいったいどんなものなの?」


 リオの質問に裕二は箸とその使い方を教える。


「この棒は箸と言って僕の故郷でフォークやスプーンのかわりに使われている道具だよ。2本1つになっていてこういう持ち方をしてこうやって使うんだ」


 そう言って裕二は実際に使って見せる。


「確かにこの箸?とかいう棒のほうが食べやすいわ」


 リアがそう言って早速箸を使いこなしている。その隣でリオも箸を難なく使いこなせるようになっている。


「飲み込み早っ!」


 裕二は思わず声に出してツッコミをいれる。そして裕二も箸を使ってラーメンを食べる。



 3人は食事の後すぐに、交代の見張り当番を決めた。最初の当番は裕二だ。そしてリオとリアはすぐに2人のテントにて眠った。2人がテントに入るときリアがいかにも「寝ている間に手を出したらただじゃおかない」といった風な目を裕二に向けたので裕二はやはり首をブンブン縦に振るしかなかった。

 そして見張りを決めた時間ごとに交代しつつ何事もなく朝を迎えた。

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