表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/31

#15.異世界ニートと初めての依頼

 朝、裕二は起きて受付の側にある食堂へ向かうとやはり先にリオが食事をとっていた。リアはどうしたのだろう? と疑問に思いつつ裕二はリオのいる机へ向かい空いている席に座って朝食を注文する。


「おはようリオ。相変わらず早いね」

「裕二、おはよう。しっかり休めたようね」


 裕二とリオはいつものように挨拶を交わす。


「リアは一緒じゃないのか?」

「リアなら宿の裏で1人で訓練しているわよ。いよいよ今日からギルドでクエストを受けるからって相当気合いが入っているみたいね」


 裕二の質問にリオが答える。リアは気合い十分といった感じらしいということを聞いて裕二は改めて気合いを入れないといけないなと思う。そこへ裕二が注文した朝食が届く。ジャムパンらしきものとサラダだ。食べてみると裕二のいた世界のジャムパンより少しパサパサしているがジャムの方はとてもおいしい。サラダは見た目からわかるがとても瑞々しいので食感もシャキシャキしていて新鮮な野菜を使っているのがよくわかる。


 



 ちょうど裕二が食事を終えた頃にリアが訓練から戻ってきた。金髪が少し濡れているので恐らく水浴びをしてから戻ってきたのだろう。そこでリアが水浴びをしているところを想像してしまい慌てて考えることをやめる。だがリアは裕二に少し睨んで言う。


「裕二、変な想像してないでしょうね?」

「いやいや、してないよ。してないからね!」


 裕二は慌てて答えた。するとリアはため息をついて言う。


「ならいいけど。変な想像したらただじゃおかないわよ」

「もちろん。わかってるよ」


 裕二は何度も首を縦に振って答える。そしてリアは着替えてくると言って自分の部屋に戻っていった。リアがいなくなったところで裕二は安堵のため息を漏らす。そこへリオが裕二に言う。


「それで実際裕二はリアのこと想像してたのよね?」


 裕二は慌てて違うと言おうとしたがリオはもう確信しているといった顔をしていたので適当に笑ってごまかした。リオは呆れたといった風にため息をつく。裕二は少し気まずいなと思い、その気まずさを隠すようにしてリュックの中を整理し直す。


 現在リュックに入っているのは服や食料、旅に必要な道具一式、武器屋で買ったボロい剣と魔法の書である。それにしてもこのリュックなんでもよく入る。裕二は整理し直しているときにそのおかしさに気づきリオに声をかけようとしたところにリアが準備を終えて戻ってきたのでタイミングを失った。また後で聞けばいいかなと裕二は一旦リュックのことを頭の隅に置いておく。


「今日は早速なのだけれど依頼を受けに行くわよ」


 リオは今日の主な予定について確認する。裕二とリアは気合い十分といった感じで頷く。そして裕二達は依頼を受けに行くためにギルドへ向かって移動を始めた。




 裕二達はギルドの前までやって来た。ガルードのギルドはシャーロンのギルドと比べると小さいがこの街の中の建物だと大きい方だ。ギルドの中へ入ると冒険者達で賑わっているがやはり初心者向けの討伐依頼が多いということもあり、見ただけで駆け出しの冒険者だとわかる者が多い。


 裕二達は依頼の内容が書かれた張り紙が大量に張られた掲示板を見に行く。見た感じどうやらこの張り紙を剥がして受付に提出すると依頼を受けられるようだ。裕二はさっと張り紙を見回す。ベルウルフ討伐とかビッグベアー討伐などの依頼の張り紙を見ながら、名前は普通に強そうなのにこれでも初心者向けの討伐依頼らしいから名前だけなのかなと思って適当な張り紙を1枚取る。


 取ってから内容を見ると「ベビードラゴン討伐」という内容の張り紙だ。ちょっと可愛らしい名前のドラゴンだなと思いつつリオに張り紙を渡してこの依頼を受けるか確認する。


「こんなのがあったけど受けてもいい?」

「ベビードラゴンね。そうね......」


 そこまで言うとリオは少し黙り込む。裕二は何か不味いのだろうか? と考えるがそもそも裕二はこの世界でモンスターを見たことがないし知識も全くないのでさっぱりわからなかった。そこへリアが少し不機嫌そうにこちらへ戻ってくる。


「何かあったの?」

「受けたいって思える手ごたえのありそうなクエストが全然ないのよ。これじゃあこの街に来た意味ないじゃない! 」


 裕二がリアに事情を聞くと中々ご立腹であるとわかる口調で返事が返ってきた。手ごたえのありそうなクエストと言われてもここは初心者向けの討伐依頼がほとんどだ。そんな手強そうな依頼はない。そもそも裕二達も駆け出しの冒険者なのだからここにあるクエストが身の丈に合っていると思うのだが......と裕二は考えながら掲示板を見ていると突然リアが隣で大きな声を上げたので裕二はビクッと驚いてリアの方を見る。リオや周りの人達も驚いてリアの方を見る。裕二は何があったのかリアに聞く。


「いきなり大きな声なんて出してどうしたんだ?」

「だってこれ.......」


 そう言ってリアが指差した先にあるのはリオが持っている先程裕二が渡したベビードラゴン討伐の依頼の張り紙だった。


「あれはさっき僕が受けようと思ってリオに渡したやつだけど......」

「あれよ!手ごたえのありそうなやつ! その依頼受けるわよ」


 裕二がリアに張り紙について説明するとリアは先程まで不機嫌そうだったとは思えそうな程機嫌がよさそうだ。裕二はリオにアイコンタクトでどうするか尋ねるとリオはため息をついてからOKの合図をもらう。


「それじゃあこの依頼を受けようか!」

「本当!あ、その......ありがとう」


 そう言うとリアは裕二に抱き着く。周りの男性冒険者が嫉妬の眼差しをこちらへ向けてくる。裕二はいつもと違うリアの態度に、いつものツンデレっぽいやつはどこへ行ったんだリアさんよと心の中で呟く。もし声に出したら一瞬でリアの機嫌を悪くしそうだ。


 裕二達は受付に依頼の張り紙を提出すると受付のお姉さんが警告してきた。


「この依頼はとても危険なのでやめておいたほうがいいですよ」


 裕二はそれを聞いてじゃあ何で初心者向けの依頼に紛れ込んでいるんだよと内心ツッコミを入れる。受付のお姉さんに、


「それでも私達は受けるわ」


 と、リアは自信ありげに言った。そして裕二達はギルドカードを提出し、正式に依頼を受諾した。そして裕二達はギルドを出て依頼をこなすために街からかなり離れている火龍山(ひりゅうざん)に向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ