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#14.異世界ニートとガルードの街

 裕二達を乗せた馬車はガルードに入り、馬車の繋ぎ場まで来ると動きを止めた。裕二達は馬車から降りると辺りを見回す。この国の首都であるシャーロンよりは流石に栄えていないが、もう日が沈みかけているのに人々の活気に溢れている。


「ここがガルードなんだ!なんかテンション上がってきた!」


 裕二はわくわくしながら言った。そこへ行商人がこちらへ来て少し困ったような顔で言う。


「あの~1つご相談したいことがございまして......」


 裕二はいつものテンションに戻って話を聞く。


「どうしたんですか?」

「元々皆さまには念のためにと思って護衛をお願いしていたのですが、あんな大規模な盗賊が襲ってきてそれを撃退していただいたとなると報酬をどう払えばよいかという相談なのですが......」


 つまり想定以上の盗賊が襲撃してきて裕二達や傭兵達によって撃退した。そうすると当初護衛を受けたときに約束された報酬の量では割に合わないだろうから追加分を払いたいがどれだけ払えばいいのか?ということだ。裕二は心の中でせっかくだしもうちょっともらってもいいんじゃないかと思ったのだが、


「当初約束された量の報酬で構いませんよ。ねえ裕二」


 とリオに言った。そこで裕二はギクリとする。どうやらリオには裕二の心が読めていたらしい。裕二は渋々リオの言葉に頷きながら、僕の心が読むとかリオのそれは何てチートなんだ? と思った。


「わかりました。それでは当初約束した額をお支払いいたします」


 そう言って行商人は重そうな袋から銀貨12枚を取り出し裕二に渡す。単純に計算すれば1人につき銀貨4枚ということだがそう考えると今までにもらった大量の金貨がとてつもない量だなと裕二は思う。(ちなみに銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚らしい)


 報酬の話が終わったところに傭兵達がやって来た。リドルさんが前に出てきて言う。


「今回はあんたらに滅茶苦茶世話になった。傭兵を代表して感謝するぜ」

「いえいえこちらも剣を教えてもらいましたし傭兵の皆がいなかったら今回僕達死んでましたよ」


 慌てて裕二は言葉を返す。そして裕二達は順番にリドルと固い握手を交わす。裕二がそろそろ行こうかと思ったときリオが行商人に話しかける。


「この街でおすすめの宿はどこですか?」


 すると行商人は1枚の紙を荷物から取り出してリオに渡して言う。


「おすすめの宿はここですね。ベッドもふかふかで料理も中々ですぞ」


 どうやらリオは宿の場所を聞いていたようだと裕二は理解する。流石リオだなと裕二は思う。


「この地図は差し上げますのでご自由にお使いください」

「ありがとうございます。ありがたく使わせていただきますね」


 リオは行商人に礼を言って地図をしまう。その後裕二達は傭兵達とも別れて行商人のおすすめしていた宿に向かう。その道中にはちらほらと装備がまだ十分でない如何にも駆け出しといった感じの冒険者がちらほら見えた。やはり初心者向けの依頼が多いので駆け出し冒険者が多いのだろう。裕二は先程の行商人とリオとの会話で気になったことがあったので聞いてみる。


「なんでリオは行商人相手に喋るときはあんなに丁寧だったの?ログレオさんのときはいつも通りだったのに」


 するとリオはなんでわからないの? とでも言いたげな顔をして答える。


「前のログレオ氏のときはそもそも私が王女だって知ってる相手だから王女として振る舞ってもそれが普通なのだけれどさっきのあの規模の行商人の場合、相手が私を王女と知らないのだから1人の小娘くらいにしか思ってないわ。そこで私がいつも通り振る舞ったらただの頭の可笑しい娘じゃない。それが嫌だから振る舞いを変えたのよ」


 そこまで聞いて裕二はリオの姿を見て王女と気づけるのは限られていることに気づいて何を当たり前の事を聞いているんだと自分にツッコむ。


 話している内に裕二達は行商人おすすめの宿に到着する。中に入ると様々な冒険者が集っていて食事を楽しんでいた。裕二は受付にいる40代くらいの中年のおじさんに2部屋空いているかと尋ねると


「悪いな兄ちゃん今は部屋が空いてないんだ。明日の昼くらいになったらいくつか部屋が空くはずだからその頃にまたきてくれ」


 と言われた。リオとリアに事情を話すと、


「なら仕方ないわね。今他にできることをして明日ここで宿をとりましょう」


 とリオが言う。


「なら早速依頼受けに行かない?」


 とリアが提案する。裕二はそこそこ疲れていたが寝床がないので仕方ないかなと考える。それでギルドに行って依頼を受けるという方針が決まりかけたときチャリーンというお金が落ちる音がした。どうやらお金を支払おうとした冒険者がお金を落としたようだ。そこで裕二は思いつく。そこで裕二はニヤリと笑みを浮かべてリオとリアに言う。


「いいこと思いついたよ。これなら今晩から宿に泊まれる。ちょっと行ってくるね」


 裕二は2人が言葉を発する間もないような素早さで食事をしている冒険者達のいるテーブルの方へ向かっていった。裕二は2、3人で食事をしているまだ高校生くらいの年齢の冒険者がいるテーブルの前まで来るとそこに座っている冒険者に言う。


「ちょっといい話があるんだけどさ」

「お前誰だよ。そこ突っ立っていると邪魔だからどっか行けよ」


 と言われる。裕二は年上には敬語を使うって知らないのかな?と少しイラッとしたが表情を変えずにそのまま話を続ける。


「この宿でとっている部屋を2部屋譲ってくれたら金貨を1枚あげるって言いたかったんだけど、僕は邪魔らしいから別の人と交渉させてもらうよ」


 とわざと余裕がある風に言って去ろうとすると座っていた冒険者がサッと立ち上がって裕二を引き留めて言う。


「ちょっと待ってくれ。わかったその話受けるから」

「えーそんな年上に敬語も使えない人との取引はこっちから願い下げだ」


 とやり過ぎかな思いつつもわざと挑発するような口調と顔で言う。すると立ち上がった冒険者はグッと何かをこらえるようにして言う。


「お願いします。その話を受けさせてください」


 一応敬語は使ったしスッキリもしたしこれ以上は流石に申し訳ないのでここで挑発するのはやめておくことにした。


「わかった。それじゃあ受付まで行こうか」


 そう言って立ち上がっていた冒険者を連れて受付へ行って正式に冒険者から部屋を譲り受けて更に数日分の宿泊費を払う。受付のおじさんは何があった? と興味深そうに裕二を見ていたが特に詮索されなかった。裕二がその冒険者に金貨を1枚渡すと喜んで仲間の冒険者のもとへ戻っていった。


 そこへリオとリアが裕二の方へ歩いてきた。リオが走って行った冒険者の方を見ながら言う。


「まあ悪くはない方法だとは思うけれど、金貨1枚は出し過ぎよ。たくさんあるからって無駄遣いしてたらすぐなくなってしまうわ」

「ごめん。確かに出し過ぎた。これからはもっと考えてから使うよ」


 裕二は確かに金貨1枚は多すぎるなと反省する。裕二は未だにこの世界のお金の価値に慣れていないので注意しないといけないなと思った。とりあえず宿がとれたのでこの宿で夕食を食べることにする。出てきたのは鶏の串焼きや肉と野菜のシチューなどの色とりどりの料理がテーブルに並べられる。見た目はとてもおいしそうだ。早速シチューを1口食べるととてもよく煮込まれているので肉も野菜も柔らかくておいしい。裕二達はガルードに来て初めての食事を堪能した。


 食事を終えた後、裕二達はそれぞれの部屋に向かう。行商人の話通り食事はおいしかったのでもしやと思って部屋の扉を開けるとそこには確かにふかふかのベッドがあった。裕二は真っ先にベッドに飛び込んだ。

確かにふわふわなベッドだが気持ちよすぎてすぐ眠ってしまいそうなのでベッドから1度離れる。裕二はとりあえず風呂に入ろうと思って準備をして大浴場へ向かった。


 裕二は風呂に入るために脱衣所に入ると中には何人かの人が着替えていた。裕二はやっぱり人たくさんいるよなと少しガクリとする。裕二は1人でゆっくり風呂に入りたかったので他に人がいるとまったく落ち着いて風呂に入れない。シャーロンのときは夜遅くだったので他に誰もいなかっただけで普通は大浴場とはこういうものだということを裕二は思い出す。仕方ないと裕二は諦めて服を脱いで風呂に入る。他の人がかなりの人数いるのが気になったが風呂自体はとても気持ちよかった。


 風呂を出て着替えてから部屋に戻ると裕二はもうやることがないことを確認してベッドに飛び込む。そして今日あったことを思い出して呟く。


「もっと強くならないとな......」


 その呟きを最後に裕二は眠りに落ちていった。


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