#11.異世界ニートと旅立ち
朝食を食べるために裕二は長い廊下を抜けてダイニングルームに来た。その途中で城の人々が裕二を見てこそこそ話しているのは先程の部屋での出来事が城内に伝わっているということだろう。裕二はとても恥ずかしい気持ちを押し殺して廊下を歩いてきた。
ダイニングルームにはリオとリアそれに他の王女と思われる女の子達、そして奥にはユグド王と数人の王妃様が座っていた。他の王女様や王妃様は裕二に値踏みをするような視線を向ける。いきなりだったので裕二は視線にちょっとビビりつつダイニングルームに入ってすぐ1礼して言う。
「大変お待たせしました」
「おはよう裕二君。空いている席に着くといい」
ユグド王に言われて裕二はさっと見渡し空いている席を探す。するとリオとリアが隣に席を空けてくれていたらしい。リオとリアが無言で「こっち!」といった合図を送るので、裕二はありがたくその席に座ることにする。
裕二が席に着くとメイドが料理を運んできてくれる。全員に料理が運ばれると他の人は料理の蓋を取り、皆黙々と料理を食べ始める。裕二も食べようと料理の蓋を取ると中にはきれいに盛り付けされたサラダや知らない肉料理が出てきた。とてもおいしそうな香りが裕二に早く食べろと催促してくる。
裕二は食べる前に両手を合わせて「いただきます」と言ってから食べ始める。すると周りがこちらをちらちらと見ている。そしてユグド王が裕二に尋ねる。
「裕二君、そのいただきますというのは何だね?」
そこで裕二は周りがこちらを見ていた理由を察した。
「いただきますというのは僕の国で食事を作ってくれた人や食材への感謝を込めて食事の前に言う言葉です」
裕二はみんなにいただきますの意味を説明する。すると王様は、
「なるほど。そのような文化が存在する国もあるのか。君はどこの出身だね?」
と聞かれて裕二はうっかり日本と答えそうになったので言葉を即座に飲み込み、
「遠い東の国です」
と答える。そして裕二は食事をとりながらユグド王と日本の文化について少し話した。料理の方はサラダはとても新鮮だし肉料理はとてもジューシーだが少しさっぱりしていておいしい。裕二はおいしさのあまり自分の顔が自然と緩むのがわかった。
食事の後ユグド王が裕二とリオとリアは話があるからついてくる来るようにと言われたのでそのままユグド王についていくと応接室に着く。裕二とリオとリアはユグド王と向き合うように椅子に座る。その後ラウラ王妃も来てユグド王の隣に座る。全員が座ったところでユグド王が口を開く。
「山野裕二君、改めて言わせてもらおう。昨日の決闘見事であった」
「ありがとうございます」
裕二はさっと頭を下げる。
「そして約束通りリオとの結婚を認めよう。それで結婚式の日取りについてなんだが......」
「ちょっと待って」
ここでリオが話に待ったをかける。
「私達これから旅に出ようと思っているの。裕二との結婚はその旅が終わってからがいいわ」
「うむ...... そうか。不安ではあるが裕二君が一緒ならばまあいいだろう。世界の様々なところを見て回り様々な経験を積んできなさい。公務のほうは気にしなくてもよいからな」
「ありがとう。お父様」
リオはユグド王に笑顔で礼を言う。その後裕二達は旅の準備のためにそれぞれの部屋に戻り、荷物の整理をした。旅の準備を終えてリオとリアに合流して城の門まで歩いているときにジャーバン皇子があの後気絶したまま馬車で国に帰ったという話を聞いてさすがにやり過ぎたかなと思った。
城門へはユグド王やラウラ王妃と数人の大臣が見送りに来てくれた。そのときにユグド王から
「旅の資金にぜひ使ってくれ」
と金貨3000枚をくれたのには驚いた。ラウラ王妃は王家の宝物庫にあったらしい分厚い本を裕二に渡して言った。
「これは王家に伝わる魔法の書です。旅の役に立つはずですのでぜひお持ちください。そしてリオとリアのことをどうかよろしくお願いします」
「はい。必ずリオとリアを守ります」
裕二はそこで気がついたのだがリオとリアは母親が違うのに未だにリアの母親と思わしき人物がいないのだ。だがさすがにこのことはディープな事情だと思うので自分からは聞かないでおこうと思う。
そして裕二達は見送られながら王宮を出た。眩しくて暖かい太陽の光に包まれて裕二達の冒険は始まった。




