作品の『テーマ』
どうも、この小説へのリンクを押して下さりありがとうございます。奈良 遼任と申します。
さて、早速にはなるのですが、このエッセイ(?)では間もなく完結する作品について、いろいろ書き散らしておきたいな、と思います。もしかしたら長いことつらつら書くかもしれませんので、どうぞよろしくお願いいたします。
十月、二十三日です。
あと一週間と少し先に今年のこの日はやってまいりますが、この日は僕にとって二十歳の誕生日という、たぶん特別な日です。この日に、小説家になろうにおいて僕の書いていた長編作品の一つが完結します。名前を「現世【うつしよ】の鎮魂歌」と言いまして、総話数233話、総文字数110万763文字の大長編です。今回はせっかくですので、この作品についてあれこれ書きたいな、と思っています。
そもそもこの作品が産声を上げたのは、およそ四年前にさかのぼります。当時はただ「ちょっと人間とは違う存在だけど、人間にかなり近しい存在」として死神を取り上げ、書いていくことに決めました。ここでいう人間に近しい存在というのは、人間みたいな姿をしているけど実は違って寿命がものすごく長かったり、あるいは人間と同じような感情の起伏を持つ登場人物たち、という意味です。
死神というと死の間際に人間のもとに訪れ、その魂を刈ってゆく―――そういう怖いイメージがあると思いますが、この作品においては「死んだ人間の魂を行くべき場所にきちんと送り届ける」という仕事だけはそのままに、死神の負のイメージを払拭させるような人物像を次々と打ち立てて行きました。
冒頭部分ではとある現世=現実世界の王国において、ほんのささいなことで発狂した王子が王宮中の人々を殺すという、衝撃的なシーンから始まります。そして王子に仕えていた執事も、その凄惨な事件の犠牲になります。そんな不運な、というべき執事の男が、この物語の主人公の一人です。そんな死んだはずの執事は、自分にまだ意識があることに気付きます。そして彼の前に、死神を名乗る男が出てくる。死神は殺された執事に未練があるのを感じ取り、彼と協力してその未練を解決しようと言い出すのです。死神が憑依することで半分意識は死神に乗っ取られるものの、外見的には生き返ったように見える。それを利用して、未練解決に向けて動き出します。
はじめこの小説はpixivにて投稿開始したのち、途中受験期間に投稿を停止した後、何事もなかったかのように再開、さらに『なろう』でも投稿を開始したものです。『なろう』に投稿し始めてからは(少し恐れてはいたのですが)ツイッターでの活動も開始し、いろんな方の目に触れるようになりました(なったと信じたい)。その中で色々なご指摘をいただき、現在のものは当初に比べかなり改変が加わったものになっていますが、この冒頭部分だけは今も昔も変わっていません。かたくなに変えようとしなかったというより、うまい代替案が思いつかなかったというのが大きいのですが。
物語の話に戻ります。未練を解決しようと主人公と死神は動き始めるのですが、そんな中もう一つ事件が起きます。それはその死神自身が、その昔死神の住む冥界、という世界を脱走しており、それからもう二百三十年余りも経っているという事実。死神は勧告を受け冥界に戻ることを決意しますが、その際主人公も一緒に冥界に行くことになります。そこから、死神の世界・冥界が、いかに現実世界とは異なったところなのか、あるいはどこが共通しているのかが紹介されていきます。序盤に関して言うならば実は最初に主人公が死んだシーン以外、特にシリアス要素がないのです。ただ主人公を取り囲むキャラクターたちが次々登場し、冥界とはどういう世界なのかを少しずつ明かしてゆく構成になっています。その中で死神と対立する存在である「悪魔」も、登場します。死神が死んだ人間の魂の回収に奮闘するのは、悪魔に横取りされ悪用されないためなのです。この序盤の展開は実はプロットのようなものが存在しており、特に大筋に変更なく進んでいきました。
ところで僕は好きな作家は誰ですか、と聞かれた時には有川浩さん、と答えます。何だかんだで面白かった、と思うのは有川さんの本が多かったりします。そんな有川さんのとある本(どれだったか忘れました)のあとがきの中で、物語を書く人は「ライブ型」と「プロット型」に分けられる、というのを見たことがあります。意味はそのまま、特にプロットを作らずその時のノリに任せる(こう言ったらなんか悪意ありますが)派と、きっちりプロットを作り込んで書いていく派。僕は確実にライブ派に入る自信があります(笑)。先ほど言った序盤以外は、実はその時の思い付きによるものだったりします。
そんな「現世【うつしよ】の鎮魂歌」、後半に進んでいくにつれ、ある一つのテーマが浮かび上がってきます。それは、
『死神と、人間との違い』
です。
これはプロローグですでに明らかになる背景事実なのですが、死神はもともと人間で、とある事件があって死神にならざるを得なかった。その際、人間には通常適応できない超能力を手に入れたという設定があります。よく他の作品では超能力が当たり前のように出てくる世界だったりしますが、この作品では死神が人間に過干渉しない限り、能力の存在自体知りえることがないのです。(知り得たからこの作品の話が進んでいくのですが)
そしてメインキャラはそれぞれ、人ならざる者となった死神がどうすれば人間と和解の道を歩めるのか、あるいは大事な人がそばにいることの大切さをどうすれば理解できるのか、などさまざまなことで悩みながら進んでいきますが、全体のテーマとしては死神が人間とどのように接していくか、というのが中心になっていきます。結局そのテーマに対してしっかりした答えが出たかどうかは本作を見てもらえればと思うのですが、このテーマが一つおぼろげながらも存在したことでこんなにも長い作品をちゃんと書ききれたのかな、とも思います。
最初この作品を書き始めた時はこんなに長く続くとも、こんな複雑なものになるとも思っていませんでした。ましてテーマが浮かび上がってくるとも想定していませんでした。しかし学んだことは一つあって、それは作品ごとに『テーマ』を設定することが、いかに大事かということです。そんなにしっかりしてなくてもいいから、どんなことが伝えられたらいいか、というのを念頭に置くのが書ききるコツなのかなあ、と一作品完結させただけのひよっこが言わせていただきます。
長くなってしまいましたが、これからもテーマをそれぞれ設定しつつ、いろんな作品を書くことにチャレンジしていきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします!