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降雨の街  作者: 丹羽真
1/1

プロローグ


路面のアスファルトや屋根を叩く

雨音に身を委ね

静かに床につく。

ベット横の卓上に置いてある

睡眠導入剤が

まるで自己主張をしているように

白く浮き上がって見える。



春雷の雨音が脳内を駆け巡っていく。


雨は幼少の頃から好きだった。

心が踊るとか

動きたくなる類の好きではない

言うなれば

しっとりと歓喜が身体中に広がり

只々ゆっくりとその時間を堪能したくなる気持ちになる。


雨があがれば落胆とはまた違う

焦燥感に近い気持ちがさざ波のように

押し寄せてくるのだ。

あぁこの雨はあとどれだけの時間

降り続けてくれるだろうか•••••




「おはようございます」

時間の感覚が無く、人であるがゆえに

生じる感情の起伏が無くなってしまったのかのように感じられる自身の状態がよくわからなかった。


ただそのひどく人間味のある声だけが

はっきりと頭へと入ってきた。

「ああ、おはよう」

自然と出たその言葉に自分という人間を

認識できたと感じる。ただ何処かで雨が降っている音が聞こえる気がした。


「それで、俺はどうなるんだ」

俺は昨晩自決した。記録的な大雨が予想されるであろう大型の台風が、関東地方に直撃し 一日中どこかしらのchで天気情報が報道されていた。

となれば生きながらえてしまったかあるいは

・・・何故だろうか視界は一切の光もない空間を伝えてくるのみである。


「貴方には罰が与えられます。

もはやこの世界での存在は認められません。

よって他の世界で新たな生をまっとうしていただきます。」

なんとも言えぬその中性的な声は

只淡々と決められたマニュアルを

読み上げているかのように酷く冷たく

感じるばかりである。しかしその声には確かな生を感じられた。


「なぁ俺のようなものは皆この様な罰を受けるのか?」


「・・・説明は以上になります。」

世界が一瞬で光に覆われ

意識は暗転していく。

最後まで雨音だけが遠くの方で聞こえ続けている気がしていた。



ザーザーザーザー












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