02-09 瘴魔素治療の話し
また投稿1回分抜けてしまいました。
最低週一投稿はキープ!
『ん~、これはなあ』
ニアの母親を直接目にして、僕は正直困っていた。
体調を崩して眠っていると言うよりも、日に何度か短い時間だけど意識は戻る程度の、ほとんど昏睡状態だった。
でもまあ、カイに依ればこの症状からの改善、と言うより完治が可能ではあるらしい。
困った理由は簡単に言えば、その弊害と言うか、副作用とも言えるそれだった。
『リク様、王妃陛下は助からないのでしょうか?』
この世界では澱んだ魔素と言われる瘴魔素による副作用は、治らないと言われているらしいから、ニアの言葉からもそれほど沈んだ雰囲気は感じられず、単に確認って感じだったけど、カイに依ると、と言うか世界の記憶から得られる知識では、直す事は出来るんだよなあ。
一番の問題は、その方法がこの世界では、失伝してしまってる事になる。未だ解明されていない訳じゃ無いのは、世界の記憶にその情報が蓄積されているから分かるんだけど、この状況だと、僕がその方法を伝えても、直ぐに人の手で治すまでに至らない事だろう。
僕が治す方法もあるんだけど、そうすると副作用があるんだよなあ。
『副作用ですか?』
『ああ。どうもニアの母親は、元々かなり内包魔力量が多いみたいだね』
『そうですね、エルフの中でも、魔力値はかなり高いと聞いた事はあります』
そう、ニアの母親である、此の国の第一王妃は、所謂エルフっていう存在だった。
元の世界で伝説と言うか、物語の中で語られていたエルフのイメージそのままに、耳が長く尖っていて、やつれて眠っている今の状態でさえ、かなり美人だ。ただ、元の世界で言われていた様な、エルフは体の線が細いというか、華奢な体じゃ無いのは、掛けられてる薄手の掛け布団越しからも分かる体のラインから分かった。
何でもこの世界では、一言でエルフと言っても、森林妖精族や草原妖精族等、幾つかのエルフと呼ばれる種族が居るらしい。と言うか、それらをまとめてエルフと呼ぶんだそうだ。
エルフの特徴は長く尖った耳と、人から見ると美形揃いである事、そして長命種である事になるだろう。
魔法、いやこの世界だと魔術が得意っていう印象があるけど、この世界のエルフは、あんまり得意じゃ無い種族も居るらしいし、得意とする武器と言うか戦い方も、種族によって違うらしい。
元の世界で物語とかでのイメージに近いのは、森林エルフ族になる様だね。で、ニアの母親であるこの第一王妃は、草原エルフだそうだ。
草原エルフの特徴は、若草色って感じの鮮やかな緑色を帯びた銀髪と、碧色の瞳。ニアの瞳の色は、どうやら母親の種族譲りみたいだね。髪は亜麻色っていうのは、多分父親である王様譲りなんだろうし。
ニアを初めて見た時は、ニアの髪色が亜麻色って感じだと思ったけど、王様を見てからだと亜麻色ってよりは、ニアの場合は一寸薄めの琥珀色って感じかも知れないなんて思った。
さて問題の副作用、それは僕が治療する場合だと、僕の神力を流し込む事で、体内に溜まった瘴魔素を浄化するって方法になる。
獣の場合は魔物化するって聞いたけど、人が魔物化しない理由はこの瘴魔素が、人の場合は通常の魔素みたいに、取り込まれて魔力に変化しないかららしい。その代わりに瘴魔素が溜まって行って、それが毒として働く訳だけども。
まあそのおかげと言うか、溜まった瘴魔素を浄化しちゃえば、後は毒の所為で機能不全を起こしたりしてる内臓とかを治せば完治可能なんだけども。
ただねえ・・・瘴魔素も魔素ではあるんだよね。それを浄化、つまりは正常化するって事は、体内に取り込んだ魔素扱いになって、魔物を斃したりした時同様に、一気に取り込まれて魔力化される。つまりは溜まった瘴魔素分、一気にレベルアップする様なものなんだよ。
『だから、元々体内魔力量が多いニアの母親は、僕が治療すると真妖精族に進化する』
『っ! それは・・・』
過去に人が持っていて、失伝した方法は、体内から瘴魔素を少しずつ抜き出しながら、弱ったり機能不全を起こしている内臓の治療を行うものだった様だけど、神力を瘴魔素に使うと清浄な魔素に性質転換、つまりは浄化しちゃうから、僕には同じ方法は使えないんだよ。
「・・・そうですか、ですが吾も神狼族という長命種。伴に長い時を生きる事が出来ますので、お手数をお掛けするのは畏れ多いのですが、出来ればファスティンを救って頂ければと」
国王の種族である神狼族は、昔とある神の神使だったらしい。その後、仕えていた神が神の世に昇華した時、人の世に残った神狼族が起源らしくて、今では人と同じランクまで種族としての能力は下がっている。
それでも、長命種で知られるエルフが平均で三百から五百年の寿命のところ、神狼族は千年くらいの寿命を持つらしい。
ハイエルフも千年から千二百年くらいの寿命らしいから、丁度良いって言えばそうなのかな?
それにしても、長命種は凄いなあとも思うけども、どうやらその分、子供が生まれる率とかが低いから、種族としての数はむしろ減る傾向にあるらしい。
神狼族同士だと滅多に子供は産まれず、他の種族との間で子供が生まれても、神狼族にはならず、もう一方の種族として生まれる事の方が多いらしいし。
ちなみにニアは、所謂ハーフとして生まれた珍しいケースで、しかも独特な能力も持って生まれた為、妖獣族という独自種族になっているんだそうだ。
独自種族なので、妖獣族自体の平均寿命とかは分からないみたいだけど、長命種同士のハーフだから、おそらくは結構な長命種になる可能性が高い。だから、僕と交わって上位に引き上げられて、不老不死状態になるというのにも、あんまり抵抗が無かったんだそうだ。
僕の場合は元が百年を切る程度の寿命だったのに、この世界に召還されて一気にだったから、実感は無くてもどこか不安というか、抵抗を感じたんだけど、ニアにとってはそこまででも無かったって事かあ。
まあ、負担が少なくて済むなら何よりだ。
『それじゃあニア、治療しても構わないんだね?』
一応最終確認をしておく。
人が種として進化するっていうのは、この世界だと有り得ない話しでは無いらしいけども、それでも数百年に一人とかそんなレベルでの話しらしいしね。
ニアは王様へと視線を向けると、王様はそれを受けて、しっかりと頷いて応じた。
さてそれじゃ、治療を開始しますか。とは言ってもそのやり方とかは、カイ頼りなんだけどさ。




