表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/47

02-07 瘴魔素の話し

『それじゃあ、後はニアの母親、王妃様の件だねえ』


 ボクがそう振ると、ニアもスッと背筋を伸ばした。


「さて国王陛下、貴国第一王妃陛下の体調についてですが、リク様が仰られるには、特殊な毒によるものと」

「毒・・・ですと?!」

「はい。おそらくは、瘴魔素を用いた魔素薬によるとの事です」

「うむう。魔素薬は分かるのですが、瘴魔素というのは一体」


 それにしても、王族籍から抜く事を選んだとは言え、つい先刻まで父王と呼んでいたのに、直ぐに呼び方を変えるニアもそうだけども、それに何の疑問も持たずに応じる王様にしても、凄いもんだなあと思う。

 これが王族って事なのかねえ。

 先刻まで娘として、仮面を外してその顔を見せていたのに、ニアは既に仮面を被り直して、僕の侍祭モードに入ってるし。

 他に人も居ないんだから、そこまで切り替えをしっかりさせなくても良いと思うんだけどねえ。


「瘴魔素とは、私達が“澱んだ魔素”と呼ぶものだそうです」

「何と、それは技法自体、禁忌とされている手段では無いか!」


 澱んだ魔素っていうのは、要は魔素溜まりと呼ばれる魔物の発生源や、迷宮が出来る、魔素濃度の強い場所からの呼び方らしい。

 魔物の発生源となる様な魔素溜まりに長い時間居ると、体調が悪くなる等の影響があったり、獣の場合は魔物化する事もある為、魔素溜まりを淀みという事もあるらしい。

 同じ魔素溜まりでも、迷宮の場合は吹き出す瘴魔素を迷宮が集積吸収している為、長い時間居ても体調が悪くなったりといった悪影響は無いらしいんだけど、そもそも迷宮自体が精神的に落ち着ける場所でも無いから、精神的に疲労が激しい等、結局あんまり良い影響は無いらしい。

 そんなマイナス影響のある瘴魔素、一般的には澱んだ魔素は、過去に何度も利用出来ないかの研究が行われたらしいんだけれど、そもそも居るだけで体調を崩す様な代物な訳だから、ロクな結果にはならなかったと。

 最悪のケースだと、魔物の領域を広げたなんてのもあったらしいし、まあ当然の流れとして、瘴魔素を扱う事自体、この世界では禁忌とされているんだそうだ。


「一体誰がそんな事を・・・」

「国王陛下それよりも先ず、リク様に第一王妃陛下を見舞わせては頂けませんか?」


 一応両親との顔合わせ名目で、お城まで来た訳だからね。

 王様には三人の王妃が居て、第一王妃に第一王女となるニア、第二王妃に王太子と第二王女、第三王妃に第二王子が生まれているらしい。

 王妃同士は、少なくとも仲は良いらしい。それは此の国が、教会って言う宗教組織の大本山になる、大神殿が置かれた国だっていう事もあるんだろう。

 普通に考えれば家督争い、お家騒動。自分の子を王位に上げたくて、王妃の誰かが動くとかなんていうのが、物語の王道な感じではあるんだけれども、カイ経由で知ったところでは、実行犯はその子供である王太子で、そのバックにはストロエフ都市国家が居るらしい。ただ、その証拠を僕は持っている訳じゃ無いんだよねえ。

 だからこの事件の解決は、僕が手を出せるものじゃ無い。ただまあ、ニアの母親がヤバいんだったら、出せる手は出しても良いと思うんだよね。


 ちなみに魔素薬も、かなり禁忌に近い扱いらしい。

 この世界で魔素薬と呼ばれるのは、魔素を多く取り込む性質を持つ、幾つかの鉱石や植物を素材として用いた薬の事で、効果が強過ぎる所為か、副作用も大きい。ただ、禁忌にならないのは、その薬でなければ対処出来ないものもある為、魔素薬自体は完全に禁忌になっていないというだけ。

 治療目的で用いても、その副作用を直す術が無いっていうのが、現状での魔素薬の位置付けになっていたりする。

 まあ、世界の記憶から情報を引き出してみれば、そもそも効果とか魔素量の違いで、厳密にいえば治癒薬とかの魔術薬も同じみたいだけどね。要は魔素を多く取り込んで内包しているそれら素材自体が、体に悪影響を及ぼしてるだけなんだよ。

 でもまあ、現状この世界では、魔素薬で生じた症状は治らないというのが常識。だから王様にしても、第一王妃様の改善は諦めた感じに見えた。


 そんな第一王妃様--ニアの母親--は、案内されて王様と謁見? した此の部屋の手前の部屋に居るらしい。

 この部屋は突き当たりにあって、その手前にも豪奢な扉が幾つかあったけど、これらは王妃の部屋になっているんだそうだ。

 ちなみに第一王妃と第二王妃の部屋は王様の部屋の手前って事で、此の部屋からも直接移動出来る様にドアも設置されている。理由は夜に通う為云々・・・はまあ、僕には関係無い話しな訳で。

 そんな第一王妃様の部屋へと続くドアを開けると、急に喧噪が飛び込んで来た。どうやらこの部屋の静音性は、かなり高かった様だね。


「何事だ!」


 そもそも体調を崩して休養を取っている第一王妃の部屋から喧噪が、なんてのはおかしい訳で、静かにドアを開けていた王様は、急いで大きく開け放って声を挙げた。

 大きく開いたドアからは、位置的に通路からのドアだろう辺りに、部屋に入ろうとする男の姿と、それを押し止めようとする騎士や使用人達の姿が見えた。


「ホセファビエル、貴様此処で何をしているのか!」


 王様の一言で、それまで押し止めようとしていた騎士や使用人達に何かを叫んでいた、部屋へと入ろうとする男がビクリと体を震わせて、その進行を止めた。

 と言うかこいつがホセファビエル、例の王太子なのかあ。


「ち、父上、俺は・・・」

「何をしているのか、と聞いている」

「いや俺は単に、ファスティン義母上の見舞いをと」

「今は公務の時間である筈だが?」

「いや、それは・・・」


 顔を逸らす王太子。

 それにしてもこいつが、ニアの母親に毒を盛ってたんだよな。


『イエス。今も懐に瘴魔素の魔素薬を持っています』


 マジかあ。何で自分で明らかな証拠なんか持ってるんだよ、この王太子。普通は誰かにやらせるとか、もしバレても自分に疑いが来ない様にするものじゃないのかな。

 まあでも、丁度良いと言えば、丁度良いのか。


「とにかく、知っての通りファスティンは体調を崩しているのだ。そのファスティンの部屋で騒ぐなど、まともな事ではなかろう」

「それはこいつ等が、俺が見舞う事を拒否したからで!」


 そう言って王太子は、周囲に居る騎士や使用人を見回した。

 ちなみにその時、既に騎士も使用人も、僕を直視しない様にだろう、頭を下に向けていたんだけど、どうやら王太子は、そんな事に気が付いていない様だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
感想・レビューを受け付けない代わりに、評価手段追加します。
(有効投票:一日一人一回 / 下リンクをクリックで投票となります)
小説家になろう 勝手にランキング
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ