02-05 王位の話し
まあ要は、ニアにもニアの都合とか、希望とかがあって、当然事情とかもある。その中で現状、僕のところが良いって事らしい。
役目だからとか、そういう責任感だけじゃ無いならまあ、完全に納得出来る訳では無いけれど、マシではあるかなあとは思う。
それでもどこか、理解し切れない部分はあるんだけれどもねえ。
とりあえず、ニアはそうした・・・まあ要は、男女関係の事とかも、戸惑う事無く僕の代弁って形を通した。
そこまでこの世界では、神の声を直接聞くのとかがダメなのかねえ。とも思ったんだけども、それだけじゃ無く、ニアが王族だっていう事で、子を産み地を絶やさない事も、重要な責任として教育を受けるから、そうした内容の会話でも戸惑いとか少ないって事もある様だ。
『神と交わる』ってのはつまり、そういう事な訳で、そんな話しを平然と、しかも父と娘で出来るっていうのは、そこに邪な感情が含まれていないからかも知れないけど、僕と言うか、元居たあの国での常識的には、一寸理解が難しいんだけども、これは世界が違うからっていうよりも、立場とか生まれ的な感覚や常識の違いなのかも? ブルジョアな人達の感覚については、元居た世界でも僕には分からないからなあ。
「失礼ながら御使い様は、此の国の王位をお望みですか?」
・・・はい?
「吾が娘、エウジェーニアには未だ、王位継承権を残しておりますので、御使い様がお望みであれば、婚姻後に吾は王位をエウジェーニアに渡す事で、御使い様に王配となって頂けます。
さすればその後、エウジェーニアより王位を引き渡す事も可能です」
巫女となったニアに王位継承権を残してあるのは、万一勇者が召喚され、その勇者が王位を望んだ場合、すんなりと引き渡せる様にと考えての事らしい。
僕の世界では、確か次に王位を引き継ぐ事が決まって、王太子とかになった筈だけど、この世界のほとんどの国では、長男--長子の場合もある--が成人を迎えると、自動的に王太子--長子の場合、王太女となる事もある--となるらしい。
勿論通常であれば王太子、あるいは王太女が継承権的にも第一位になるけれど、実際には王位を継ぐに値するか等々によっては、第二位以下が継承する事も、それなりにあるんだとか。
うん、王位とか全然興味無いです。むしろ要らない。
「父王陛下、リク様はそうした俗的なものにご関心を持たれませんよ」
いや、確かに王位とかはそうだけど、俗的なもの全部に関心が無い訳じゃないぞ。
「ふむ。そうなると、御使い様がお相手では降る訳では無いので、降嫁という訳にも行かぬのでな」
「はい、分かっております。
そもそもリク様が自由民なのですから、渡しを王族籍から抜き、同じ自由民となるのが筋というものかと」
王族ってだけじゃ無く、貴族とかでも、色々厄介な決め事とかあるんだろう。影響力や立場等々、色々あるんだろうけどさ、僕みたいな一般人出身からすると、そういうのは正直面倒でしか無いし、色々可能性を潰すものでもあると思うんだよねえ。
とは言えだ、巫女として、いくら王族としての豪奢な生活から離れていたとは言え、ニアを自由民っていう、何の背景も無い立場にして良いのか、僕としては悩むところではあるんだけど。
「リク様、それは何の問題でもありません。
そもそも私共は、勇者様がいずれ召還される事を知ってはいても、どの様なお方が召還されるのかは知らなかったのですから」
つまりはだ、召還された勇者が傲慢で、侍祭となる巫女の扱いが酷い可能性さえ考慮の上で、それを受け入れていたのだそうだ。
僕からすれば、神の御使いだのと言われる勇者が、問題のある様な性格はしていないんじゃないかなんて思ったんだけど、そもそも神の考えた結果が、人の常識範囲内に収まるなんて、一切期待していないそうだ。
そう言われると、確かにそうなんだよ。
僕自身でさえ、他の世界から来た訳で、この世界の常識内には収まらないしねえ。
大体勇者自体、いざという時の対魔王戦力でしか無いんだから、性格自体は問わない可能性もあるって事なんだよなあ。
言われてみれば、確かにその通りとしか言えないという。
「ですから神官や巫女、特に世界神様にお仕えするともなれば、最悪奴隷として使い潰される事さえ想定の内だったのです」
う~ん、それはどうかと思うんだけどね。
神の使いだって扱いになってはいるけど、使いって言うより、無許可で連れて来られただけだからなあ。それに、いくらこの世界に関係無いのに巻き込まれたからって言ってもさ、その侍祭になる相手の人生を奪って良いなんて事にはならないと僕は思うんだ。
別に僕自身の性格が良いだなんて、それこそ口が裂けても言わないし、そう言われれば全力で否定するけど、それでも他人の人生を好き勝手に振り回す様なのが選ばれない事を願うよ。
まあ、今回僕が侍祭に関しては色々と、ニアとの話し合いでも言ったし、それは教会の方に報告もしたらしいから、今後の侍祭についての扱いは、侍祭側にも選ぶ権利は与えられるみたいだけれどね。
とは言えニアの場合は、これを良縁みたいに考えてるところも感じるから、果たして何処まで、僕が考える真っ当な形になるのかは分からないんだけどねえ。
『ニアがそれで良いなら、僕がどうこう言わないけどさ、自分の人生に関わる事だから、役目とかは抜きにして、しっかり考えて欲しいんだけどね』
僕がそう言うと、ニアは僕の方へと顔を向けて、一回しっかりと頷いた。そして王様の方へと顔を戻すと言ったんだ。
「という事ですので、王族籍からは私を除いて下さい。
父王陛下へは本日まで、娘として深い愛情を頂けました事、感謝致します」
深く、王様に向かって頭を下げた。
ダメだなあ。多分僕、少なくとも精神的な部分で、ニアには勝てそうも無いや。
ニアだけに限らず、この世界の人全般なのかも知れないけど、強いなあって思うよ。
さてさて、ニアとの件はとりあえず無事済んだ。王様との謁見--僕と王様、どっちに対する謁見なんだか、訳が分からなくなりつつあるけど--とは言え、実態はニアの父親との顔合わせだからねえ、僕にとっては。
色々無駄に緊張もしたんだけど、むしろ押せ押せでニアを押し付けられた気がする。
嫌って訳じゃ無いんだけども、未だ十五才で、しかも出会って数日だからさあ、僕的にはイマイチ実感すら無いんだよね。




