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01-28 四晶樹の杖の話し

「ええと、それでは行きます!」


 僕が渡した四晶樹の杖は、一見すると四本が絡み合って一本の杖になっている様な感じだった。

 偶に山とかで、複数本の木が絡み合って一本の木に一体化した様なのがあるけど、そんな感じになっている。実際に複数本が纏まってるのかは知らないけどね。

 表面は、薄く青みがかった艶消しの銀って感じで、上? 先? の方に行くと、絡み合うその隙間と言うか凹んだ部分に、赤や青といった透明な結晶みたいなのが四色、所々に覗いてる感じになってる。

 何て言えば良いのかなあ、自然に出来た木を、金属でコーティングしたみたいな、そんな不規則性を感じる。人工物って言うよりは自然物みたいな? でもやっぱり作った物感はあるんだよなあ。

 ニアはそんな杖を構え、魔力を杖に流す。


「え! 何ですかこれ。

 魔力の流れがスムーズ過ぎます。何の引っかかりも感じない」


 通常どんな魔力発動体でも、自分の体じゃ無いから、魔力を通そうとすると抵抗を感じるらしい。

 より良い素材になる程、その抵抗は減るらしいんだけど、あくまでも減るだけ。

 ニアが言う『引っかかりが無い』っていうのは、その抵抗をまるで感じない程に、魔力の流れが良いって事になる。

 それに加えて、魔力発動体はその材質により、ある程度の魔力を蓄積するんだそうだ。その蓄積分は溜めと同じで、要は発動する魔術の威力を増したり、連射性を向上させたりする事になるんだけど、当然蓄積する分は、タンクに押し込む様なものだから、やっぱり抵抗を感じる事になる。

 その蓄積分すら、ほぼ負担無く行えるって事になる訳だ。

 うん、やっぱり神器級はトンデモなんだろうなあ。


「小さき力を注く、火の球を以て、彼の的を破する事を願う。

 ファイアーボール!」


 ニアの詠唱で、杖の先の赤い結晶が輝き、そして杖の先が向いた辺りに火の玉が出来上がって、一寸遠めの草陰で僕達の方を伺ってた一角兎に向けて飛んで行った。


「え? ええっ?」


 とニアが驚いたその瞬間に、ニアが放った火の玉は一角兎の頭に当たり、その頭どころか上半身を消滅させ、残った下半身も次の瞬間には火が回ったかと思うと燃え尽きた。


「・・・あの、飛んで行った早さが速過ぎるんですけれど。それに威力も強すぎます」


 ニア曰く、通常のファイアーボールと比べて、多分倍以上早いらしい。

 威力にしても、通常のファイアーボールとして魔力を込めたから、特に多くの魔力消費した訳でも無いのに、威力が上がっているんだとか。


「ん~、杖の性能かな?」

「何で疑問系なんですかっ!」

「いやほら、僕は杖を含めて、魔力発動体っていうのを使った事無いし」


 僕の場合は魔法だから、魔力発動体を使っても威力や効果が変わる訳でも無いし、そもそも神力で発動させてる訳だから、ほとんどの魔力発動体は保たなくて崩壊したりするらしいって、カイから聞いた。

 だから僕には、推測でしか言えないんだよね。


「ええと、まあ要は、消費魔力が少ないし、魔法発動も早くて楽って事でしょ?」

「確かにそうなのですが」

「それじゃあまあ、魔法を放つのには都合良いって事だよね。

 それじゃあ今度は、打撃を試してみてよ」

「はい、分かりました」


 どこか腑に落ちないのか、首を傾げつつもニアは、近くにあった岩へと向かった。そしてその岩に向けて、杖を振りかぶると打ち付けた。

 岩自体は僕よりも倍近く大きな物で、当然それなりに硬いらしく、杖が当たるとキィンと硬質な音を立てる。

 杖が当たった辺りで、岩が少し削れたと言うか、欠けるのが分かったけど、その程度の結果に僕には見えた。


「この杖が軽い所為でしょうか、あまり打撃時に力が加わっていないと思うのですが、それでもメイスと同じ位のダメージを与えられる様です」


 軽ければ確かに、与えるダメージは減るんだよね。重い物を打ち付けた方が、その重さと遠心力とかの分、ダメージは上がるからねえ。

 でも、あの杖だと軽いくせに、それなりのダメージが出るらしい。って事は、いつもより早く振れるだろうから、早く振った分、更に威力は上がるって事になる。

 ニアは同じ事を考えたんだろう。何回か杖を空で振ってみてから、先刻よりも強く打ち付けた。すると岩は、先刻よりも倍近く欠けた感じだ。


「凄いですね。軽いので力がほとんど要らないのですけど、与えるダメージは凄く上がります。

 それに、こんなに思いっ切り打ち付けたのに、杖は全然傷付いていませんし、打ち付けた時の反動もほとんどありませんでした」


 そうか、打ち付ければその分、反動を受けるから、本当の意味で思いっ切り打ち付けるのは難しくなるんだ。

 反動がほとんど無いって事は、どこかでその衝撃が吸収されてるのか、発散されてるのか。でもその分、通常なら無理な勢いで打ち付ける事も出来るって事になる。


「それじゃあ、機能の確認をしてみようか。

 魔力を流して軽く打ち付けてみてよ」

「はい、分かりました」


 返事をしてニアは、再度岩と向かい合うと杖を振り上げる。魔力を通したからなのか、四色の結晶みたいのが全部、淡く光っているのが見えた。

 そのままニアは、見た目からしても軽く、杖を岩に斜めに打ち付ける・・・と。


『カシュッ』


 そんな音がして、次の瞬間岩の1/3くらいが斜めに切れ落ちた。


「「・・・え?」」


 ニアもそうだろうけど、僕もビックリしたというか、呆けた。

 身動ぎもしないで岩を見つめているニアの横へと移動して、岩の切れた部分を覗き見ると、そこにはまるで引っかかりが無く、磨かれた様な断面があった。


「魔性斬撃効果ってあったけど、凄過ぎないかなあ、これ」

「リ・・・」

「リ?」

「リク様っ! 何ですかこれ?!

 何で杖を軽く当てただけで、岩が切れるんですか」


 いやあ、そんな事を僕に聞かれてもねえ。


「ほらあれだよ」

「あれ、とは?」

「世界神が用意したっぽいから、その杖」


 ニアは一瞬固まり、大きく息を吐いた。


「世界神様の成され様ですか。いえ、もう良いんです。

 それにしても素晴らしい杖ですね。流石は勇者様が持つだけの代物です」


 現実逃避に走られてもなあ。

 どっちかって言うと、僕が現実逃避したいくらいだよ。


 この後、杖はニアが使えば良いって言って固まられ、更にそれが神器だって事で、更に固まったニアを何とか引き戻し、僕達は都へと戻ったのだった。

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