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00-03

 魔王というのは、魔族の中で稀に生じる、体内魔力が増大した存在らしい。

 急にそれまで以上に大きな魔力を持つ様になる所為か、その力に溺れて、人に対して魔族を率いて攻めて来たり、理性を失って破壊衝動に走るのが出て、その結果、人にとって危険な存在となると言われているらしい。

 実際、これまでの魔王発生の七件の内、二件は強力な武器が神から与えられたのに、魔王による被害は一切無かったらしいし。


 小説とかに出て来る勇者召還と、それに対する魔王っていう存在は、それこそ魔王がその世界の破滅を目論んだり、人を駆逐しようとしたりっていう感じになるんだけど、どうやらこの世界の魔王は、そう単純なものでも無い様だ。

 うん、やっぱりこれって、夢じゃ無くて、異世界召還の可能性が高いね。夢っていうのは記憶の整理だとか聞いた事あるけど、僕と言うか、あの世界で多くあるパターンとも違うみたいだし。

 僕が思い付かない様な状況を夢に見るって事は、無いとは言わないけど、こうしてその状況に身を置いてみると、夢って考えるには何か、違和感を感じるんだよなあ。

 ・・・いやそうか、そもそも僕に勇者願望は無い。むしろ、あの事で国とか政治家とか権力者とかへの反発の方が強いから、それこそ夢ならあの世界のままで、それこそ魔王にでも成ってた方が納得行くかあ。

 未だに信じられないけど、これって多分現実だ。


「ともかく、この世界の人達の所為では無いみたいだし、ニアが謝る事でも無いんじゃないかな?」

「ですが、この世界に生まれた者として、この世界とは無関係なリク様に御負担を」


 まあ、普通ならそうなんだろうけどさ。

 僕の場合もう、頼れる身内はあの世界には居ないし、そもそもあの世界やあの国には、何の希望も期待も持って無かったからねえ。

 正直なところ、全く知らない世界だから、色々常識とかで困るかも、くらいの負担しか無いと思うんだよな。まあ、実際はどうなのか分からないけど。


「それこそ、神の成した事なんだから、ニアとかが責任を感じても仕方無いと思うけど」


 悪いけど、あんまり堅苦しいのって嫌いなんだよなあ。

 たかが十五才のガキなんだよ、僕はさ。勇者だとか、神の使いだとか持ち上げられてもさあ、そっちの方が正直負担だったりするんだよね。

 しかも、ニアはかなり可愛いんだよなあ。TVとかで目にする、アイドルとかモデルとか、そういうのより--と言うか僕の場合、そういうのにあんまり興味無かったからか、アイドルとか可愛いって思った事無いんだけどね。それだったらクラスの人気者の方が、人気あるだけに可愛いと思ったくらいだし。アイドルだとかって、要は見せる為の美しさで、ある意味で作られたものだと僕は思っちゃってるからねえ--全然可愛いんだよ。

 そんなニアが、申し訳無さそうに謝罪込みで対応して来るのって、僕の方が悪者みたいで精神的にキツい。

 だからまあ、卑怯だけど、神がやらかしたんだから仕方無いって方に持って行かせて貰う。とは言っても事実なんだけどね。


「それはそうですが」

「だったら、むしろ謝るのは神になるよね。自分の世界を、その世界だけで処理出来ずに巻き込みましたって。

 でも、そういう謝罪は受けていないのに、ニアを含めてだけど、この世界の人達に謝られたりするのって、やっぱりおかしいんじゃないかな」

「そう仰られてしまうと、確かにその通りですが・・・」


 まあ、気にしちゃうってのは、『そういう役目で神に使わされたんだから、その力を振るえや!』なんていう態度で来る奴らよりはマシだし、多分誠実なんだろうけどさ。

 誠意を持って対応してくれる相手には、僕だって誠意を持って対応するよ。そうじゃ無い相手は知った事じゃ無いけどね。


「それよりさ、手間を掛けて申し訳無いけども、色々と分からない事があるから、教えて欲しいんだよね。

 ああでも、巫女なんだっけ。忙しいか。

 ん~と、どうしようか。

 時間がある程度必要だと思うけど、誰か僕に、この世界の事を教えてくれる人とか居ると、助かるんだけど」


 先刻聞いた話しだと、巫女は結構偉い立場らしいし。

 この世界では、少なくとも表向きには、宗教って一つしか無いらしい。

 ただ“教会”と呼ばれるその組織は、世界神を頂点とした全ての神々を対象にしているらしい。種族とか地域によっては、民間信仰的に精霊を信仰対象にしたり、特定の神のみを対象にしたりで、教会の信者じゃ無い人も居るらしいけど、あくまでも民間信仰的なものだから、宗教的な対立とかも無いらしい。

 この世界、神っていう存在が明確で、人に関わりを持っているみたいだから、信仰対象となる神に疑問も持たないし、何より信仰の違いで対立する余地も無いんだろうなあ。

 あるとすれば、やっぱり存在が不明確、不明瞭、あるいは勝手に想像した神という像を信仰している組織なり団体が居る場合かな。


「ええと、リク様に教えるのですか?」


 ん? 何か問題があるのかな。


「伝承に依りますと、召還されし勇者様は、世界より知を得られるとありましたので」

「は?」


 何だそれ。

 いやまあ、それこそ僕は、この世界に来たばっかりだし、小説とかのネタにあるみたいに、召還の途中に神に会って、チートを貰ったりとかも無いんだから、『世界より知を得られる』とか言われても、何が何だか・・・いや待て待て、今何か引っ掛かった。

 召還、途中?


「え、まさか、もしかして・・・」

「あの、リク様?」

「ああうん、ごめん。ちょっと気になった事があっただけだから」


 あの真っ白な一瞬が、召還その時だろうから、その途中で見えた様な気がした、綺麗な女の人が手を振っていたというあのイメージは、もしかしたら実際にあった事なんじゃないかな? つまり、神には会っていたと。

 召還したのが神なら、会っていてもおかしく無いだろうから、という事は・・・。


 説明、端折られたかも。


 もしあれが神だとしたら、多分あの瞬間に僕は、何かされてるんだろう。それこそ小説とかでありがちな、能力付与とかそんなの。

 確かに他の世界から、勇者として自分の世界も送り込もうっていうのに、僕みたいな戦いとかから遠いのを、何の対策も無く送り込んだりしないよなあ。

 目的が達成出来なければ、召還自体が無意味になるんだし。

 でもさ、説明無しでどうしろと?

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