01-19 ギルド長からの依頼の話し
「探索者ギルドの規定で、経験の無い新規登録者は銀Ⅰランク迄と決まっているので、申し訳無いが此処から始めて欲しい」
「いやあ、そもそも最初から銀ランクとかになると思ってなかったし、むしろもっと下のランクからでも」
「それは勘弁して欲しい。
相応のランク依頼を受けてもらわないと、下のランクの連中が受ける依頼が減る」
納得。
確かにそれを食い扶持にしてる人が居るんだしね。
それでも一ヶ月の間は、最低の青銅Ⅰランク依頼も受けられるけど、通常は自分のランクより一つ下迄っていう規則があって、そういう理由からだって理解出来た。
僕の場合は銀Ⅰだから、黒鉄Ⅰ迄って事になるね。
僕自身が現時点で、何処まで戦えるのかは分からないけど、適性試験の話しでも、かなり高い評価になってるぽいから、あんまり低い依頼は受けるのが厳しいかもだしなあ。
うん、依頼を受ける前に、やっぱり試してみて、何処まで実際に戦えるのか確認が先だよね。
とりあえず、登録自体は済んだから、ニアと試しに行こうかと思ったところで、ラルフさんから待ったがかかった。
「神の力を利用するつもりじゃ無いんだが、俺等よりも知識を持っていそうなんで聞きたいんだがな」
確かに知識は得られるけど、持ってる訳じゃ無いんだよね。まあ、他人から見たら同じか。
「鑑定石で出来るカードの表示内容を、変える事は出来ないものかね?」
どうやら、僕自身でカードを作れる訳だから、その辺りの知識もあるんじゃないかって思ったらしい。
詳しく聞くと、現状だと扱い難い事があるんだとか。
一つは討伐情報。
これまでは魔物を討伐しても、討伐証明部位として決められた使えない、つまりは素材利用も出来ない部位を持って来て貰い、それによって討伐確認をしていたらしい。
けれどそれだと、本当にその本人が討伐したのかの証明にはならないし、討伐証明部位を確保出来ない場合には、討伐達成とはならなかった。
加えて言えば、使えない部位を持ち込んでもらって確認するから、探索者ギルドではその後、その部位を破棄するのに手間が掛かる事もあるんだとか。
だから、討伐情報をどうにか出来ないかという話しになったらしい。
もう一つはお金の話し。
ギルドでは、報酬とかを預かるサービス? もやってるらしいんだけど、その預かり金額は預けた人が覚えておくか、ギルドに来て確認してもらうしか無いらしい。
まあそれでも、自分で管理する事で、そのお金を狙われる危険も増える訳だし、万一探索者活動中に死んでも、前以て指定しておいた身内とかに、預けたお金を渡して貰える事から、探索者の多くは預けているらしいけどね。
こういう話しが出たのも、迷宮用の鑑定石っていうのがあっ、それで迷宮探索カードを作ると、そのカードではどの迷宮で、どの階層まで進んだのか記録されるかららしい。
探索者ギルドで使われてる鑑定石は、教会で使った人用の鑑定石と同じ物らしい。商人ギルドとかでは、預けたお金の記録が出来る派生版で、この派生版は他に、工業ギルドや薬師ギルドとかでも使われているんだとか。
そうした派生版の中には、探索者ギルドが使っている迷宮用の鑑定石もあって、要は単に人用の鑑定石って言っても、幾つか種類があるって事になる訳だ。
つまり現状、探索者ギルドでは、ノーマルの物と派生の迷宮用の物の二つを使っているらしいから、確かにどうにかしたいって気持ちは分かるよなあ。
オリジナルが同じでも、そうした色々なが生まれているって事は、そもそもオリジナルにその余地があるって事だろうし。
一番の問題は、そうした派生がどうして出来たのか、なんでそうなったのかを、作り出したくせに、この世界の人達が理解出来ていない事だろう。
まあ、そういう時は世界の記憶、つまりはカイに頼るしか僕には出来ないんだけどね。
『て事で、こういうのは可能なのかな?』
『イエス。可能ではありますが、使用魔力量の問題から、現状の魔石を用いた同ランク魔道具として仕上げるのであれば、情報量を限定する必要があります』
情報量の限定って事で考えてみる。
現状で最低限、身分証明として必要なのは現状のままで十分だろう。
それ以外だと、派生版での預けたお金の記録、迷宮と到達階層記録くらいかな。それ以外には、魔物の討伐数か。
『その情報であれば、硬貨取引記録情報、行動記録情報、魔力取り込み記録情報を、それぞれの用途毎に変更し、限定的に引き出す事で、現状ランクの魔石のままで可能です』
硬貨取引記録はまあ分かるんだけど、行動記録情報と魔力取り込み記録情報っていうのが、イマイチ分からない。
『行動記録情報は、個々体の行動記録より抜粋情報を読み込むものです。
探索者の場合は迷宮という環境での行動記録のみに限定し、迷宮名及び到達階層情報のみに絞ります。
商人であれば、商取引という環境での行動記録に限定し、取引品目及びその個数に絞るといった具合に、記録情報が必要な場合、それに見合った情報にのみ適合させる事で、扱う情報制限を行います』
不要の場合はノーマルのまま、必要な場合はそれに合う様に改造をする訳か。
それは鑑定石自体をそう設定する事で、後は使う場所、つまりは探索者ギルドならそのギルドで、最初に起動させる時に、何目的かの意思を乗せた魔力を流す事で、その設定の鑑定石に性能を固定させると。
そうなると、鑑定石自体は派生版は必要無くなって、一つの物で済ます事が出来る事になるのか。
魔力取り込み記録情報ってのは何だろう。
『魔物討伐情報は、討伐魔物の場合は、その種族固有波長により記録カウントされた情報を習得させます。
ただしその場合、魔物のみでは無く、獣や人も記録に加わる事になります』
ん~、他の業種で、他にどうしても必要そうなものも無いみたいだし、この三つを追加で問題無いかな。僕はそう思って、ラルフさんに伝えてみた。
「おお、それはこれまでの鑑定石を改造すれば良いのか? それとも一から魔道具を作る事になるのか?」
『改造は魔力回路が既に刻印されている為不可能ですが、魔道具を素材として作り直す事は可能です。
また、一から作る場合は、同様の素材を用いて作るか、マスターの神力を用いて周囲魔素より創り出す事になります』
神力を用いるっていうのは、色々マズい。
それこそ神器級の代物が作れるなんて、あんまり知られたくないからなあ。
だから僕は、鑑定石そのものか、あるいはその素材を用意して貰えれば、サンプルが作れる事を伝えた。




