01-14 街中の話し
「あれが傭兵ギルドになります」
「人の出入りがあんまり無いんだね」
「傭兵は基本的に、チーム--パーティーと呼ばれる最大七人の組を越え、七パーティー四十九人迄で組んだ状態--で動きます。その為ギルドに顔を出すのは代表者や、そういう役目を持ったメンバーになりますから」
僕は今、ニアに簡単に街を案内して貰いつつ、探索者ギルドに向かっているところだ。
この世界には主要職業毎に組合があり、そのギルドを中心に動いている感じだ。
探索者なんかはその最たるところなんだろうけど、この世界では商人さえ、個人事業ばかりな訳だ。所謂会社みたいな規模だと、本当に極一部、世界的に見ても幾つかの大商会くらいしか無いという事もあってか、ギルドに所属せずに出来る仕事というのはほぼ無いらしい。
ほぼと言うのは、農業とか土木、樵なんかは国や各領主の管轄だし、猟師なんかは自分達の生活範囲でやっている程度だから、ギルドが存在しないからだ。実際大商会でさえ、商業ギルドに所属しているというのが実態らしい。
そうした各種ギルドの中でも、探索者ギルド、傭兵ギルド、商人ギルド、職人ギルド、奴隷ギルドの五大ギルドは、世界中の至る所に支部を持ち、基本的に何処の国にも属さない組織となっている。
その中でも最大規模なのは職人ギルドで、此処はそのギルド内で更に鍛冶ギルド、細工ギルド、革工ギルド、家具ギルド等々、物を作る職業の小ギルドが集まって出来ているのだから、規模が大きくなるのも頷ける。
対して一番力を持っているのが探索者ギルドだと言われている。
理由は幾つかあるけど、この世界で常時戦闘状態とも言えるのが、ある意味で対魔物専門である探索者の為、戦力としては一番あるという事、また魔物や、魔物が生息する場所から様々な素材を持ち帰るのもまた、探索者であるという事が大きな理由だろう。
実際戦力面で言えば、例えば緑小鬼であれば探索者なら、新米とも呼ばれる黒鉄ランクでさえ、ソロでも二から三体は相手にして勝てるが、対人を主とする兵士や傭兵では、一体に二から三人を要するのだ。
もっとも、探索者は大人数での戦いに慣れていない為、大規模戦闘に向いていないのだけれども。
どちらにしろ、魔物の危険が身近にあるこの世界では、日常的常時戦力として、探索者が圧倒的戦力を有している事になる訳だ。
小説とかにある、登録したての初心者が受ける、所謂雑用依頼っていうのは、この世界の探索者ギルドには無いらしい。
理由は単純で、町や都内での雑用は、商業ギルドの管轄だからだ。
その為探索者ギルドでは、登録したての場合は、戦闘の可能性もある場所での採集依頼が基本らしい。それは魔物の居る場所に出向けない様ならば、そもそも探索者になる意味も価値も無いという、シビアな理由らしい。
まあこの世界、時には辺境の村とかが魔物に襲われて壊滅なんて事もあるから、人の住む領域周辺に居る程度の、つまりは人が住める程度に危険性が低い魔物に対しては、探索者とかでは無い一般人でさえ、逃げるくらい出来ないと、生きて行くのは厳しいらしい。勿論、町や都と言った、外壁に囲まれたその中で暮らしているだけであれば、魔物に相対する危険性はほとんど無いんだろうから、生活環境でも大きく違うんだろうけれど。
探索者の主な仕事--依頼内容--は、魔物討伐や素材採集、魔物生息域や迷宮内での探索--情報収集--となり、護衛依頼も無い訳ではないけど、殆どが傭兵との合同依頼や、魔物出現率の高い地域でのものくらいになるんだとか。
要は探索者になるなら、魔物が出る場所に自ら向かう事が前提となる訳だし、そうした依頼が探索者ギルドに集まる訳だね。
これが傭兵ギルドとなると、魔物の危険性もあるけれど、盗賊や山賊、あるいは国同士の戦争による敵国の兵士等、対人を前提とした依頼が集まる訳だ。
「あそこのお店は、探索者に人気の宿屋なんだそうですよ」
ちなみに、朝起きたらニアの抱き枕にされていた件については、どうやらニアが添い寝をして距離を縮めようとした挙げ句、眠ってしまっての無意識行為らしい。
まあ、役得って事で。
ニアは未だに恥ずかしいのか、起きてから未だに、僕の方をチラチラ見つつ、顔を一寸赤くしてたりするんだけど、そこは触れないのが親切・・・だよね?
さて、教会施設は都の中心地、平民居住区と、貴族等が暮らす上級居住区の境目辺りにあって、僕はニアの案内を受けながら、商業区を通りながら外壁にある大門の方へと歩いていた。
商業区には商業ギルドがあって、その近くには傭兵ギルドがあったのは、多分護衛依頼等がスムーズにやり取りし易いからだろう。
目指す探索者ギルドは、外壁にある大門の直ぐ近く、つまりは此の都に入って直ぐの辺りにあるんだとか。
これは基本的に、探索者は外壁の外が仕事場である為であり、また魔物等の情報が文字通り最初に“持ち込まれる”場所でもある為に、探索者ギルドは門の直ぐ近くに置かれるらしい。
それに、討伐した魔物の死体だとかも持ち込まれる訳だし、それを街中にはあんまり持ち込んでほしくないだろうしねえ。
ちなみに、門に一番近い場所にある施設となると、衛士詰め所と、馬や馬車等の預かり業者の施設だ。
貴族とかは例外らしいけど、基本的に馬車は街中に乗り入れ禁止なんだとか。商人が商品を持ち込んだ場合や、持ち出す場合も、門の所までは荷車で持って来て、そこで台車に積み替えたりしつつ、衛士が荷物の確認をするという徹底ぶり。
町並みとかを見た印象としては、所謂ファンタジーものにありがちな中世っぽい感じではあるけど、元の世界で中世頃は、街中に所謂汚物が撒き散らされてたりして、衛生的にかなりダメダメな状態だったって、授業だったかTVだったかで聞いたけど、この都を歩いてみた限りでは、道が一部の主要なものしか舗装されて無かったり、舗装も石畳で凹凸があったりはしても、衛生的に悪い感じでは無かったしなあ。
『車を牽く馬や獣の糞尿は、大事な肥料となりますので、街中に放置は有り得ません』
合理的な理由でした。
だから門を入って直ぐの処に預かり業者の施設があって、そこで回収も兼ねてる訳か。そうして回収したのを肥料化して売る分、預かり賃も下げられるんだそうだ。
過去にはそこまで徹底されていなかったけども、商業ギルドが主導して動いた結果、今では貴族の馬車と言えども、街中で馬糞とか放置は禁止らしく、馬車や騎馬が街中に入る時には、回収用の袋を取り付けないといけない決まりらしい。まあ、緊急時に騎士団とかの騎馬がしたのは流石に、特例扱いになるらしいけど、緊急時は流石に仕方無いよなね。




