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00-01

 突然だけれど、僕は今混乱している。そして困惑している。

 はっきり言えば、此処は何処、あなた達は誰状態なんだけど、別に記憶喪失っていう訳じゃ無くて、本当に見知らぬ場所で、見知らぬ人達に囲まれているんだ、これが。


 僕の名前はリク=サンエ。

 先月十五才になって、何時も通りに朝起きて、通学の途中だった筈。

 生まれは大和大国やまとたいこく塔都とうと西区。運動も勉強も苦手ではないけれど、特に得意な訳でも無いので、体格は細過ぎや太り過ぎという事も無いし、筋肉質なマッチョという事も無い。頭でっかちに勉学に励んだ訳でも無い。

 両親と弟の四人家族で、特に金持ちでもないけれど、生活に困る程貧乏でも無い家だった(・・・)

 まあ、僕自身はあれの(・・・)所為・・で、考え方とかが一寸特殊とか言われる様になったし、あれ以降、生活も一変したんだけれど、それでも自己評価としては、特徴も無い普通の高校生だと思う。


 此処に今居るその直前は、と記憶を探ってみると、通学の途中、角を曲がれば学校が見えるというところで、確か目の前が真っ白になったんだ。

 何か、足下に穴が空いていて、そこに落ちた様な感覚もあったけれど、その直ぐ後には足下が地に着いている感覚がしたから、それは気のせいかも知れない。

 と言うか、真っ白なだけで何も見えなかったから、詳しい事なんて何も分からないっていうのが正直なところだね。

 ・・・何か途中で、真っ白いその中に、綺麗な女の人が、こっちに向かって手を振っていた様な気もしたけど、そんな事がある筈も無いし、もしそれが本当なら、意味不明過ぎるからきっと、それは気の所為なんだろう。何しろその真っ白で何も見えない状態は、本当に一瞬だったんだから。

 で、直ぐにその真っ白な状態は治ったんだけれど、そこに見えたのは、それまで自分が見ていた風景と、全く違うものだった。

 石造りの建物の中、どこかテレビとかで見た神殿を思わせるそこに、可愛い女の子、そして十人程の大人達が居て、僕の事を取り囲んでいたんだ。それが今。


 うん、記憶が無いとか、そういうのじゃ無いし、意識が途切れてその間に、此処に運び込まれたとかって訳でも無さそうだ。

 あえて言えば、あの一瞬の真っ白になった間に、瞬間移動したとかそんな感じ。

 ・・・まさかねえ。そんな筈は無い。

 小説や漫画のネタじゃ無いんだから、そんなのは科学的に無理だろうから。確か以前TVで、理論上は可能だけど、現実的には不可能だって聞いた気もするし。

 でも、それじゃあ今、この状況は何っていう話しになるんだよね。分からないから混乱しているんだけど。

 そんな僕の内心には気が付かず、あるいはそれより先ず説明を、って言う流れなのかも知れないけど、此処に居た内の可愛い女の子が、今の状況を説明していた。

 後々考えれば、状況が分からずに混乱した中で、それでも冷静に自分の記憶を探りつつも、その子の話しを聞くなんて、何で出来たのかって話しになるけど、その時は特に違和感も疑問も感じなかった。

 多分思っていた以上に、僕は混乱していたんだろう。


「という訳でして、魔王が生じたという神託を受け、救いを求めたところ、勇者様が召還されたという事となります。

 勇者様におかれましては、困惑やご不満も御座いますでしょうが、何卒私一人の身を以て、お許し頂きたく・・・」


 簡単ではあるけど、一通りの説明が終わるみたいだ。

 簡単に言えば、瞬間移動とかじゃ無くて、異世界転移だったらしい。

 それはそれで、やっぱり小説や漫画のネタだよね。非現実的と言うか、非科学的と言うかさ。

 でも、これは夢とかでも無いだろうしな。

 通学途中の路上を歩いてて、次の瞬間には別の場所って、もしそれが夢だとしたら、それはそれで、僕はかなり危ないよね。主に精神とか体調的に。

 いやまあ、夢だっていう方が現実的だし、だったら多分今、僕は病院とかに緊急搬送されて治療を受けてるんだろうから、未だ救いはあるだろうけど。

 ・・・いや、傍から見てるとそれって、意識不明状態かな? それが植物人間状態で、意識が戻る、つまり夢から覚める保証も無いんだとしたら、それはそれで救いは無いか。

 うん、詰んだかも。

 むしろそれなら、異世界召還なんていうのが現実の方が、未だマシだろうなあ。自分の意識で生きて、動けるんだから。


 でもなあ、勇者でしょ? たかが十五才のガキにどうしろと? っていう感じなんだよね。

 それこそ小説や漫画のネタにはありがちだけど、これって、リアルに起こると、ホント困惑するしか無いね。

 『俺は選ばれし勇者だ~』とか、『異世界ヒャッハー』とか、『この世界で生きて行く為に先ずは現状確認』とかって、直ぐにこの状況を受け入れるのは無理でしょ。訳分からないし。

 まあでも、“あんな世界”に戻るくらいなら、夢でも異世界でもどっちでも良いかな。

 確かにあの事で、僕としてはあの世界と言うかあの国、大和大国の政治家共をどうにかしたいとは考えてたけど、むしろこうなるとどうしようも無い、手出し出来ない訳だし、その方が気楽でもあるんだよね。

 どうせ将来、上手く立ち回れたとしても、同じ様なのが追従して出て来るだけで、何も変わらないんだろうし。


 ・・・うん、一寸考え込み過ぎたかな。僕の反応が薄いから、何か女の子含めて、みんな困惑してるし。

 とりあえず、詳しい話しを聞いてみよう。

 夢でも、実際の異世界召還でも、どうでも良いっていう気持ちは確かにあるし、あの世界であのまま生きてるよりは、幸せな気もするしね。


「ええと、話しは大体分かったけど・・・ですけど、色々混乱してて。

 詳しい話しを聞いても良いですか?」

「はい、勿論です。

 それと、御言葉は気にされず、楽な話し方で結構ですよ。

 この世界の者としては勇者様は、神様より使わされし存在なのですから」


 そう、この神ってのがどうも、話しを聞いてる限りでは、今の状況の現況っぽいんだよね。

 神ねえ。

 そんな居るかどうかも分からない、信じる人にとっての拠り所みたいな扱いだったからなあ、あの世界では。

 そういう意味では、これって夢よりも、異世界だって方が、可能性は高いのかな。

 僕自身が、神がどうのとか受け入れてたタイプじゃないんだから、夢だとすると、こういう展開にはならないと思うんだよね。

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