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フリーダムガール  作者: 赫宗一
シャンタ編
43/111

これから始まる未来

ミスティは一度いちど深呼吸(しんこきゅう)をしてから、街人にうったえかけるように声の調子ちょうしすこし上げた。


大昔おおむかしから、この国は雨がらない土地とちだったらしいわね。くに作物さくもつろくそだたず、見える景色けしきてた一面いちめん荒野こうやだったとか」


「そうだ。そのような過酷かこく環境かんきょうだったがゆえに、餓死がしするものけっしてすくなくなかった」


惨憺さんさんたる光景こうけい傍観ぼうかんすることにえられなくなった 貴方あなたは、一度いちど部下ぶかをシャンタへかわせていたのね」


だれらなかったであろう驚愕きょうがく情報じょうほうに、広場ひろばの街人は動揺どうようする。きっと否定派ひていはは、またうそでたらめを言っていると思ったのだろう。けれど、同じく広場ひろばにいた数人すうにん年配ねんぱいが、うろたえるような仕草しぐさのぞかせていたのをの当たりにして、それが真実しんじつであるとさとった様子ようすだった。


「…今でも思い出す。きずだらけの手下てした達が、無念むねん表情ひょうじょうで俺様に報告ほうこくしに来たのを」


心身しんしんともふかきずついた貴方あなた達は、それ以降いこう人間にかかわる事をやめた。けれど…どうしても人間を見捨みすてられないがために、はなれた場所ばしょから助力じょりょくするかたちった」


「うむ。それこそが、貴様達が魔障雨ましょううきらうあの雨だ。本来ほんらいは、あらゆるどく浄化じょうかし、作物さくもつ成長せいちょう促進そくしんさせる効力こうりょくがあるのだが…」


「私達が妖怪ようかいおそれるあまり、事実じじつとかけはなれたうわさひろまって、やがてそれが定着ていちゃくしてしまったのよね?」


ミスティのながし目に、ダイダラボッチは小さくうなずく。


「だが、雨をらすため条件じょうけんとして、どうしても『魔法の素質そしつめた人間の力』が必要ひつようだった」


「でも、一度いちど否定ひていされている大勢おおぜいの人間相手(あいて)協力きょうりょくしてしいとはたのみづらい。だから———」


素質そしつのある人間を誘拐ゆうかいして、雨をらすよう協力きょうりょくうながしたってのか…!?」


否定派ひていは先頭せんとうに立っていた男性が、ふるえた声で回答かいとうした。人をころすだけの存在そんざいだとおしえられてきた妖怪ようかいが、人間のためおも行動こうどうこしていただなんて、ゆめにも思わなかっただろう。結果論けっかろんとしては、妖怪ようかいいのちすくわれたことになるのだから。


「そうなるわね。今日まで彼ら妖怪ようかい尽力じんりょくしてくれたからこそ、シャンタと言う国がまれた。手段しゅだんこそ多少たしょう強引ごういんじゃないかとは思ったけれど、状況じょうきょう状況じょうきょうだけにいたかたなかったとも言えるわ」


広場ひろば全体ぜんたいがどよめきにつつまれる中、不思議ふしぎな事に小雨こさめそそいだ。建国けんこくされて以来いらい自然雨しぜんうったことのないこの国で、はじめての奇跡きせき。ミスティはきらびやかな雨をすくうように手のひらあつめ、しずかに大地だいちかす。


てん祝福しゅくふくしてくれてるのかもね。こんな奇跡きせきまれてはじめてだわ。これも、貴方あなたのおかげかしら?」


いかぶりぎだ。俺様は人間をたすけるために人間を利用りようした。此度こたび和解わかいは、みずからの贖罪しょくざいでもある」


「大きいなりして、こころは私達となんら変わりないのね。だからこそ、貴方あなたにおれいを言いたいのよ。過程かていはどうであれ、妹を大切たいせつにしてくれていたって言う結果けっかと、この国(シャンタ)かげながらすくってくれた事にたいして、ね」


「これまでに数多かずおおくの批判ひはんびてきたが、貴様のように俺様に感謝かんしゃする人間ははじめてだ」


「それは良かった。記念きねんすべき第一号だいいちごうね」


ミスティがほおゆるませてフッとわらうと、ダイダラボッチもこたえるようにみを返した。今まで豪快ごうかいわらったりしたことはあったけれど、今回こんかいのようなやわらかいみははじめてなのだろう。周囲しゅうい妖怪ようかい達がおどろいた表情ひょうじょうでダイダラボッチを見ていることから、それはあきらかだった。やがて雨と二重奏デュエットすように、そらからあたたかい西日にしびそそいできた。


「これからもっと、貴方あなた達のことを理解りかいしてくれる人がえるわよ。街のみんなも、すこしずつでいいからあゆってくれることをのぞむわ。今すぐにとは言わない。どれだけ時間がかかっても、いつかきっとかりえるってしんじてるから…」


まるで寸劇すんげきのようなやりりがまくろすと、一部始終いちぶしじゅう観覧かんらんしていた街人達は、それぞれが思い思いの感情かんじょう言葉ことばにのせて、妖怪ようかい達にちかづいた。

ぎこちなく、緊張きんちょうしながらも、1つ1つをめて。おたがいがすこしずつまえまえへと。何十…何百年とつづいた亀裂きれつは、たしかな回復のきざしを見せはじめていた。


「うんうん、良かった。じつに良かった」


「ミスティさんにレスティちゃん、それに妖怪ようかい。それぞれのおもいが1つの大きなとなって、今の状況じょうきょうつくり出された…。素敵すてき光景こうけいですね」


「だね♪あたしにはこれが正解せいかいかはからないけど、みんなの顔を見てると、これで良かったって心底しんそこ思うよ」


あたしがエルとクーにけて笑顔えがおよろこびを表現ひょうげんすると、2人もそれにこたえるようにそれぞれがポーズをめた。


一件落着いっけんらくちゃく…かな」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


歴史的れきしてき和解わかいえ、妖怪ようかい達が一旦いったん国にかえったその日の夜、是非ぜひまって行ってしいとミスティ、レスティ姉妹しまいからせがまれたあたし達は、ふたた宿やどにお邪魔じゃました。ミスティの腕によりをかけた逸品級いっぴんきゅう郷土きょうど料理を十二分じゅうにぶん堪能たんのうしたのちみんなでお風呂ふろはいった。

のぼ湯気ゆげつつまれて、あたし達は綺麗きれいならんで湯船ゆぶねにつかる。色々(いろいろ)とイベントがひっきりなしにこった所為せいか、あたたかさが骨身ほねみみた。


「くぁ~っ!気持ち良いな~♪」


想像そうぞう以上いじょうに体力を消耗しょうもうする1日でしたからね。リノ、おつかれ様でした」


「エルもね。クーちゃんも、ミスティさんも、レスティちゃんも。みーんなおつかれ」


クーは湯船ゆぶねかせていたアヒルの玩具おもちゃを、なみせてあたしのもとまでながしてくる。それを手にると、魔法の力を付与ふよしていたようで、アヒルの口から『おつかれ様』の文字もじがふわふわとき出てきた。った仕掛しかけをするなあと感心かんしんしてクーに視線しせんけると、微笑ほほえましい笑顔えがおかえってきた。

クーにかえしてから、そのとなりにいるミスティを見ると、おけの上に酒瓶さかびんせて、優雅ゆうが一時ひとときたのしんでいた。


「あれミスティさん、お酒()むんだ」


「ええ、わりと好きなの。仕事柄しごとがら普段ふだんまないんだけどね。今日ぐらいはいいかな…って」


「お酒ってどんなあじがするの?」


「あらダメよ。リノはまだ20になってないでしょ?」


「ちょっとだけは?」


「ダメ。エルは大丈夫だいじょうぶかしら?」


「ええ。すこしだけいただけますか」


「あれ?そう言えば、エルっていくつだっけ?」


たしか18歳だったような気がするけど。エル本人ほんにんにはとくにこれといった表情ひょうじょう変化へんかはなく、淡々(たんたん)としたこたえで酒瓶さかびんを手にる。おちょことばれる小さなうつわに酒をれて、一気いっきあおった。


「んっ…。これは、想像そうぞう以上いじょうに…」


エルはあっというほおめ上げると、まえのめりに湯船ゆぶねかって顔面がんめんちつけた。


「ちょー!?ちょっとエル、大丈夫だいじょうぶ!?」


「どうやら…まだ私にははやかったようですね…」


「やっぱサバんでたのかい!ったくもー、しょうがないなー」


かたして湯船ゆぶねからたすこすと、エルはったいきおいでそのままねむってしまった。お酒によわいってレベルじゃないな。


「ごめんミスティさん、エルかせて来るから」


かったわ。いってらっしゃい」


「あ、心配しんぱいだから私も!」


「あんがとクーちゃん。それじゃ反対側はんたいがわねがい」


手をるレスティをに、あたし達は一旦いったん風呂場ふろばあとにした。


それから数分、おちょこを片手かたてにミスティがつぶやく。


「本当に…今日は良い日だわ。今までこれほど清々(すがすが)しい気持ちになったことがあったかしら」


「お姉ちゃん…」


「レスティ。かえって来てくれて、ありがとう」


「ふふっ、何それ。みょう詩人しじんみたいだね」


「そうかしら?でも、それも悪くないわ」


たがいにって最高さいこうみをわし、盛大せいだいに酒をあおった。

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