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フリーダムガール  作者: 赫宗一
シャンタ編
42/111

もう終わりにしよう

しずまれぇぃ!!!」


再度さいど、ダイダラボッチの大喝だいかつ周囲しゅういの声をかきしてから、つづきを話す。


貴様きさま達人間のいかりはもっともだ。たしかに、俺様が手下てしためいじて人間をっていたのは事実じじつだ。しかし…ながあいだ(うわさ)どくされたゆえか、随分ずいぶん偏見へんけんぎるようだな。それほどまでに容姿ようしちがいがれられぬのか?」


常識じょうしきはずれの巨人きょじん突然とつぜんやって来たら、おどろくしこわいにまってんだろ!!」


「それは貴様達人間の常識じょうしきであって、俺様達妖怪(ようかい)にとってはなんのことはない。つまり…今現在(げんざい)は、価値観かちかん相違そういがある。と言う事だ」


「だからなんだって言うのよ!」


たがいについて、もっとふか必要ひつようがあるとは思わないか?すくなくとも俺様達は、そうしたいと思っている。無理矢理むりやりったにもかかわらず、みなためおも協力きょうりょくしてくれた人間達のように。また、直接ちょくせつ妖怪ようかいの国にんでまで、俺様の目をまさせようとしてくれた、勇敢ゆうかんな少女のように。人間には、まだまだ妖怪ようかい達のらない顔があるのだろう。俺様は…それを見たいのだ」


純粋じゅんすいな思いからつむがれる言葉には、いかりの感情かんじょうとは程遠ほどとおい、たしかなねがいがめられていた。一点いってんくもりもないダイダラボッチのうったえに、街人達はどよめき戸惑とまどっていた。今までにいだいていた、狡猾こうかつ残忍ざんにんなイメージとのちがいが大きいんだろう。

それでもしんじじられないと主張しゅちょうする人もすくなからずいたけれど、約半数やくはんすうは話にみみかたむける態度たいどを見せはじめていた。もう一息ひといきだ。


返答へんとうは?」


だれこたえない。一存いちぞんではめられないので当然とうぜんだと言える。内心ないしんこたえたいけれど、みんながだまっているから自分もだまっていようとかんがえている人間もいるだろう。同調圧力どうちょうあつりょくと言うやつだ。なればこそ、はじめの一歩いっぽみ出す『きっかけ』をつくるまで。ダイダラボッチの視線しせん作戦開始さくせんかいし理解りかいしたあたしは、芝居しばいまえ準備(じゅんび)として、かるいきって気持ちをととのえた。


「…そう言えば、古来こらいからこの国には複数ふくすう代表だいひょうはおれど、明確めいかく頂点ちょうてん存在そんざいしなかったな。ふむ、これではらちかないぞ。では、そうだな…そこの貴様。大き目のリボンを付けている」


わざとらしくダイダラボッチがあたしにけてゆびすと、周囲しゅうい視線しせんがあたしにそそがれた。この瞬間しゅんかんが一番緊張(きんちょう)する。


「ちょっと待った青デカ。あたしだけの一存いちぞんで、そんなことめられるわけないだろっ」


「なにも貴様1人の意見いけんが、民衆みんしゅう総意そういだとは言っていない。ゆえに、気負きおわずらくこたえればよい」


「そっか。ならあたしは和解わかいえらぶね」


「ほう。して、その理由りゆうは?」


「言うまでもないでしょ。本気ほんきであたし達をころすつもりでここに来たってんなら、1人なのはおかしな話だし、わざわざこうして頭をげたりもしない。もっとこう…バーッと来てドカドカッとやるでしょ?」


あたしがわざとらしく、なぐるようなポーズをくわえて説明せつめいすると、感化かんかされた周囲しゅういの人達がたしかにとうなずく。


「俺様の姿すがたおびえるばかりか、たいした洞察力どうさつりょくだな」


「待てよ!」


ここで、ながれをる力強い横槍よこやりはいる。


「お前達妖怪(ようかい)がマジでそうだって言うんなら、どうして人を誘拐ゆうかいしたりしたんだ!?」


「そ、そうだそうだ!みずからの私腹しふくやすために、俺達の仲間なかまさらったんじゃないのかよ!?」


「待ってください!」


広場ひろばすみから、りんとした少女の声色こわいろひびわたる。みんながくと、そこには多数たすう妖怪ようかいれたレスティの姿すがたがあった。レスティが妖怪ようかいころされたと言う話は街でも有名ゆうめいらしく、街人のだれもが『死んだはずの少女』の姿すがたに目をまるくした。


妖怪ようかいの王様の言葉ことば真実しんじつです。たしかに私は、無理矢理むりやりかたちれて行かれはしました。けれど、事情じじょういたそのあとは、みずからの意志いし妖怪ようかいさんに協力きょうりょくし、雨をらせていました」


レスティはむねに手をてて、こじれたおたがいの関係かんけい順序じゅんじょてて淡々(たんたん)説明せつめいした。おのれの見たままの真実しんじつつつかくさず。経験談けいけんだんぶん言葉ことばふかみがあり、必死ひっしうったえもあいまって、街人のこころすこしずつ確実かくじつに動かされていた。…しかし、まだ半信半疑はんしんはんぎな街人の少数しょうすう野次やじばし、『洗脳せんのうでもされてるんじゃないのか』と、暴言ぼうげんく。

それにたいしてレスティは、そばにいた多数たすう妖怪ようかいれて、野次やじばした街人の中心ちゅうしんかう。そのさい自身じしんよことおける妖怪ようかいたいし、反射的はんしゃてきけるような素振そぶりを見せる人間がいるかと思いきや、レスティを…いや、妖怪ようかいの事をしんじてみる気になったのか、そのからうごくことはなかった。


「エル」


「ええ。私達は静観せいかんしていましょうか」


「だね」


街人達の行動こうどうで、暴動ぼうどうこらない事を確信かくしんしたあたしとエルは、だまってすえ見守みまもる。やがて野次やじ中心ちゅうしん辿たどいたレスティは、真剣しんけんな顔つきでくらかげ静寂せいじゃくやぶった。


「ごらんになってください。ここまで人に接近せっきんしても、何もしない事実じじつを。私達人間と容姿ようしこそちがえど、同じ国に生きる仲間なかまなんです!」


「ね、猫をかぶっているだけかもしれないじゃないか!」


「じっくり時間をかけて侵略しんりゃくしようってはらじゃないのか!?」


「まだそんなことを言われるんですか!?人間は、それほどまでに器量きりょうちいさな生き物ではないはずです!この国のかたについて長年ながねんなやんでいた妖怪ようかいさんが、決心けっしんかためてここまで来たのにたいし、あく一言ひとこと否定ひていしてしまうのはとてもかなしい事です!!外見がいけんだけでなく、内面ないめんください!!」


レスティは、おもいのたけを口に出して全力ぜんりょくえた。そしてここで、いきおいのあるレスティに、さらなるかぜく。いきらしながら広場ひろばあらわれたのは、宿屋やどや女将おかみにして、レスティのあね…ミスティだ。シナリオにはいっていない想定外そうていがい出来事できごとに、あたし達をふくめたすべての人間と妖怪ようかい注目ちゅうもくする。ミスティはかるいきととのえたのち、ダイダラボッチへとけて言葉ことばはっした。


貴方あなた妖怪ようかいの王様なのね?」


「…ああ、そうだ」


「1つだけ。1つだけ言いたいことがあるの」


「話にはいている。貴様はレスティ(この娘)肉親にくしんだとな。…どのような批判ひはんれよう」


「フフッ、誤解ごかいしないで。貴方あなたに言いたいのは、おれいのほうよ」


予想よそうだにしなかったミスティの言葉ことばに、ダイダラボッチは巨大きょだいな目をまるくしておどろく。てっきりいかりをぶつけるのかと思いきや、まさかの告白こくはくだった。


れいを言われるおぼえはない」


「あるわよ。私の妹、レスティって言うんだけどね。きゅうにいなくなったあの日、妖怪ようかいられたとったあの日、妹は死んだとかされていたの。勿論もちろんその時は、貴方あなた妖怪(ようかい)存在そんざいうらんだわ。どうしてそんなひど真似まね平然へいぜんおこなえるんだ…って」


うれいをびたミスティの表情ひょうじょう罪悪感ざいあくかんかんじたのか、ダイダラボッチはわずかに顔をせた。


「でもね、真実しんじつちがった。妹から全部ぜんぶ()いたわ。貴方あなた達が、こうがわの…妖怪ようかいの国でどんなことをしていたのかをね」

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