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フリーダムガール  作者: 赫宗一
ネパルマ編
21/111

勝機の衝撃砲

クーが衝撃砲に魔力を込めた直後、強風が嵐のように吹き荒れては過ぎさり、ズドンと重く鈍い音が空間を支配した。鋼の板を見ると中央部分にへこんだ跡があり、遠目から見ただけでもその威力のほどが容易に理解出来た。


「おー。初めて目ぇにしたけど、コイツはとんでもない威力やなー」


「す、すみません!!ほんの少しだけしか注入していないはずだったんですけど…!」


「それがこの、オーバーテクノロジーの力と言うことですね」


「せやな。ま、今のはクーストラちゃんの才能あっての結果やと思うけど。他の人間が使ってもこうはならんで」


骸が、クーに興味を示したかのように目線を送る。それは商売人としての鋭い眼光だった。


「骸。興味があるのは結構だけど、うちのクーちゃんは渡さないよ?」


「ん?ハハハッ、ちゃうちゃう!クーストラちゃんには悪いけど、俺はエルノアの方が好みやね」


「お世辞でも嬉しいです。…付き合いませんよ?」


「分かっとるよ!お宅らも色々と忙しそうやからね」


「分かるの?」


伊達だてに人間相手に商売しとらんよ。リノの目ぇ見れば、何か困ってる事ぐらい察せる」


少し驚いた。表には出していないはずの感情を読み取られるとは思わなかった。あたしが隠すのが下手なのか、はたまた骸の洞察力が優れているのか。


「お見通しって訳ね。そうだよ、ちょーっち困っててさぁ」


「む、やけに賑やかじゃと思ったら、戻っておったのか」


暖簾のれんの向こうから、ガレットが姿を見せた。しまった。話をするのに夢中になって、本来の目的をすっかり忘れていた。


「だー!ごめんじっちゃ、すっかり忘れてたよ!!」


「こりゃ骸。リノ達はワシの客じゃぞ」


「すまんすまん。おもろい嬢ちゃん達だったから、つい話し込んでしもうて」


骸は愛想笑いをしながら、無駄のない足運びで後ろに逃げた。そのまま退散するわけではなく、どうやら話を聞くらしい。


「まあ、良いか。で…首尾しゅびはどうじゃった?」


「一応目的の物は手に入れたんだけど、色々問題が発生したって言うか…」


「ほう。聞こうか」


あたしが説明しようと口を開くも、エルによって制止される。代わりに説明してくれるらしい。エルは軽く咳払いをした後、これまでの経緯いきさつを端的に話始めた。

やがて話が終わると、ガレットはうなりながら手を口に当てて考える仕草を取った。表現するならば『にわかには信じられない』といった様子だった。


「…嘘みたいな話だな。じゃが、こうして精霊石が手元にある以上、信じない訳にはいかんのう」


「じっちゃが驚くのも無理ないよ。当事者あたし達だって実感わかないってのに」


「しかしまあ…あの砂クジラを倒そうなどと、随分ずいぶんデカイ話だの」


「やっぱ無理…かな?」


「何が無理なものか。ワシの発明品があれば十分可能じゃて」


「大した自信ですね」


「ワシを誰だと思っとる?世紀の大発明家、ガレット様じゃぞ?」


「自称!が抜けとるで」


骸の余計な一言に、ふんぞり返っていたガレットは「うるさいわい」と反撃する。


「そんなに心配せんでも、大船に乗ったつもりでおれ」


「じっちゃ、もしかして協力してくれるの?」


「おうともさ。ワシの発明品を、この国の人間に知らしめる絶好の機会じゃからの。ついでに国の問題児とも言える砂クジラも倒せるなら、まさに一石二鳥じゃわい」


「野心丸出しですね。正直なのは好感がもてますが」


エルがあきれた声色で言うと、ガレットは親指を立てながら豪快に笑った。理由は何であれ、協力してくれるのはとても心強いな。肩をすくめるエルとは反対に、クーは小さな拍手を送っていた。


「と言う訳で。すまんがリノよ。急かすようで悪いが、精霊石を貰えんじゃろうか。バギー(アレ)を仕上げてしまいたいんじゃ」


「あいよー。期待してるよ、じっちゃ」


「任せておけい。明日までには完成させて見せるわ」


あたしから精霊石を受け取ったガレットは『何か用があれば呼んでくれ』と告げて、暖簾のれんを潜って奥へと姿を消した。

機械独特の接触音が聞こえだしたのを耳に入れてから、骸は再びあたし達との距離を詰めた。


せわしないじいさんやなあ。ま、熱心に打ち込むあの姿勢は感心するけども」


「確かに」


「そんで、お宅らはどうやってあの怪物を倒す気なんや?」


骸の指摘に、あたしは頭を抱える。勢いだけでどうにかなる相手じゃないのは理解出来るのだけど、明確なビジョンは未だに見えてこない。ガレットの協力は心強い…けれど、まだそれだけではパズルのピースは揃わない。


「それなんだよねぇ。性能がどれほどのもんかは知らないけど、移動手段に関してはじっちゃのバギーを使わせてもらうとして…」


「問題は攻撃か。いくら近付こうとも、有効打がないんじゃ意味ないからなあ。リノの持っとるその武器でごうが、砂クジラにとっちゃ蚊に刺された程度の衝撃やろうよ」


「だよねぇー…。どうすっかね」


ぼやくあたしの問いに答えんが如く、沈黙を続けていたクーがずいと歩み出る。その表情を見るに、何やら良い考えがありそうだ。


「クーちゃん、何か良い案でも浮かんだの?」


「うん。…とは言っても、骸さんの許可がないと成り立たないんだけどね」


その発言で気付いたのか、骸は手の平に拳を乗せておお!と反応した。


「そっかそっか!衝撃砲やな!確かにこれなら、ある程度の距離からでも攻撃出来るな!」


「付け加えるなら、大砲とは違って移動撃ちが可能です。なので、バギーからでも十分な戦果が期待できます」


ですね?と、帽子のつばをいじりながらエルがクーに問う。満点回答だったのか、クーは笑顔を見せた。


「ど、どうかな?」


「クーちゃんナイスアイデア!それ採用!…と言いたいんだけど。骸、衝撃砲貸してもらえる?」


「ええよ。じいさんやないけど、俺も自分の商品が活躍するのは気分がええしな」


「あ、ありがとうございます!」


「感謝しますよ、骸さん」


「だから呼び捨てでええって。…んまあ、エルノアにはさん付けされた方がしっくりくるけどな」


「違いない。ともあれ、本当にありがとね!」


「おうさ。俺は応援しか出来んけど、頑張りや」


「うーし!後は小道具を集めて、ホテルで作戦会議だ!」


希望が見えたことで戦意高揚せんいこうようしたあたし達は、軽く手を振る骸に手を振り返してから、ホテルへ向かった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


リノ達の姿が見えなくなってから数分後、ガレットの店に残っていた骸は、意味あり気に口を僅かに開けて息を吸う。


「リノ・レインバー…か。あれが『あの男』の一番弟子ねえ。確かに肝は据わってたが…」


「まだ青い」


突如として骸の前に現れた『それ』は、無機質な声色で言う。


「どわっ!?おったんか」


「ずっといたよ。あなたの事だから、気付かないフリをしてるだけかと思ったけど」


「んじゃ、そーゆーことにしとくわ。しかしまあ、本当にやれるんかね?」


「出来なければ、私が代わりに遂行すいこうするだけ」


「おんや。それってお宅の師匠の意思に反するんじゃ?」


「関係ない。まがい物に好き勝手にさせるぐらいなら、私が片付ける」


先程まで無機質な声色を保っていた『それ』は、嫉妬めいた含みを見せて吐き捨てた。


「嫉妬?」


「違う。うるさい。ひっぱたくよ」


堪忍かんにんしてや。まったく…リノといいお宅といい、怖い女の子だことで」

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