女神
「美味しかった、また来るわ」
カウンターテーブルから立ち上がると銀色の髪を揺らし彼女はドアの向うへと消えていった。
ドアに手を掛けた所で「またどうぞ」と後ろから聞こえる声に去り際口元を緩め。
チリリンと鈴の音が聞こえた後にバタンと厚めのドアが閉まりフロアに静寂が訪れる
「ふ~、アリシアさんが来るとやっぱり緊張というわけでは無いけれど場の空気が変わるな」
カップの洗いを終わらせカウンターの下からマイカップを取り出しコーヒーを注ぐ
バックヤードから折畳椅子を出し腰を据える
この世界に来て十数年、店を創めて約十年といった所、常連も増えて充実した毎日を送っている
かく言う彼女も常連の一人であり、付合いは異世界召喚の時からを考えるとまさに十数年来の知人である。
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深夜、戸締りを確認し帰宅の途に就く
この生活も少しづつ馴染んできた、遣り甲斐から来る疲労感を感じながら自宅に足を進める。
コンビニでも寄ろうかと思案していると急に自分の周りが淡くそして眩く輝き目を閉じた。
輝きの収まりを感じ目を開けると一面が蒼い空のような海のような場所にいた。
「ここは…」
辺りを見渡し確認するも人の気配所か自分以外に周りには何もない
白昼夢か?と思い近頃の勤務状況を考えセルフストレスチェックに勤しんでいると
「ここは狭間の世界」
急に背後から声が聞こえ驚きと共に反射的に振返る。
目の前には銀色の髪をした少し垂目な美女がこちらを見つめる様に立っていた
夜なのに白昼夢とはコレいかに