赤竜人vs速の魔軍将
ムーちゃんの声に俺は反応し、声の方へと顔を向ける。
だが、その選択は…
「愚かな!」
そう叫ぶと同時に、気の緩んだ俺から槍を奪取するギータ
不味い!
俺は、コトコちゃんの方へと顔を向けなおし、行動へと…
「ぬううんっ!」
へ?
いや、すごいですね…
モクさんがコトコちゃんの心臓部へと穂先を伸ばしていた槍を右ひじと右膝を用いて止めた。
<…。ねえ、片手で止めてたタケルさんがすごいとか思っても…>
いや、すごいでしょ?
下手したら自らの身体に突き刺さってたでしょうに。
「貴様!害悪を排除するこの魔軍将エレクトの行動を阻害するのか!」
怒気をはらんだ大声で叫ぶ。
「…先ほどもまで会話をしていた者に対して害悪とな?」
それに対し、冷や汗を流しつつも冷静に言葉を発するモクさん。
「あの時はっ!竜人族の呪術師の少女だと思っていたのだ!それが、石化眼を広場で発動させるほどの、危険な存在だったと、気づけなかった私自身に対する怒りでもある!それを清算するためにも…狩らせてもらう!」
「短絡的なお考えだ。将軍殿がそうお考えであろうとも…われらが王はそれを望まぬ。」
「ぐ、くっ…タケルにつくか竜人の戦士よ!ならば、貴様ごと葬ってやろうかっ!!!」
ふうむ。ギータは怒りっぽいよな?
てか、シャーマンとか…
<それは、さきほどのリーダーと呼んでいたバジリスクとのやり取りをそう解釈したのでしょう。>
なるほど。霊と交信する現象を行ったと思ったわけだね?
それと、コトコちゃんは竜人なの?キン兄弟のどちらとも違う気がするのだがね?
<それはですね、わたしも資料でしか目を通したことが無いのですが…>
<女性の見た目と男性の見た目で大きく違いがあるそうです。>
それで、女性の見た目は人に近いわけだね?
男性が二足歩行のトカゲに近い感じ。
まあ、リザードマンって言えばいいかね?
<リザードマンは竜人に近いとされる種族です。>
そ、そか。説明ありがとう。
お互いににらみ合っていたが、先に動いたのはギータだった。
モクに封じられた槍から両手を離すと一歩前へと踏み込み
勢いのまま掌底打ちを放つ!
下あごへと迫るその一撃に目を細め、槍を放しそのまま右足を後ろへと下げ、身を逸らし、左腕を用いて掌底打ちの軌道そのものをずらして見せた。
突き出した右手を即座に引っ込めると共にまわし蹴りを放つギータ
だが、その攻撃もまたごく僅かな動きを用いて逸らす。
決定的な隙を見せるギータに対し、モクはただ次を待つのみ。
攻めに転ずるつもりは無い?
もしくは、もしもの事を考えているのだろうか。
速さが国一といわれているギータ。
ならば自ら動くことは最大の隙となる。
「なんだ?攻めないのか!」
「その動きが隙に見えるのならば…われはその時点で死んでいたであろうな。名が知れるということはその分、力も能力もそして多くの情報が流れるということ。過信などはせぬわれであろうとも…この場においては今この姿勢こそが最低限。」
野生の感というよりも耳にした情報からの危機回避といったところか。
いやはやいつの間にやら翼に隠れて穂先が見える。
なるほど。踏み込めば、がら空きの腹が貫かれていたな。
大げさな回し蹴りに転じたのは地に落ちた槍を回収するのも織り交ぜていたようだ。
翼があるってずるいなー
竜人ってくらいだから翼が生えてたりしないもんかね?
<それは、種によるとは思います。>
<どこかに居るかもしれないとしか…。>
見てみたい気もするな。
だが、ドラゴンと勘違いしてやっちゃったらどうしようか…
<そんな易々とドラゴンには会えないとは思いますけどね。>
そうなのかね?
ドラゴン肉に興味があるのですが。
<ま、まあ…ワイバーンで我慢します?>
いや、いつの日か食らう!
<…。竜人さんを見ながら言わないでくださいよ!>
<ちょっと怖いですよ。>
戦闘から目を放すつもりが無いからそうなっただけだ!
他意はない!
「…。ねえ、陛下ちゃん。止めなくていいの?」
「ムーちゃん。男にはな、戦いたい時があるのだよ。」
「あー、さっきの川でも楽しそうにしてたけど、脳筋目指してるの?」
「脳筋って…そんな風に見えた?」
「ええ、女が欲情するぐらいに逞しかったとは言っておくけど…男子ってバカよねーって言われる感じに近かったわ。」
俺の側に近づくと囁きだしたムーちゃん。
脳筋に、男子ってバカよねーを久しぶりにきいた気がする。
高校の時の出来事であるが…
テストの成績順位学年上位15名が校内に貼られたときに俺の名前を見つけて
『あー脳筋!頭いい!ナニソレずるくね?』
『アタシ徹夜で勉強したのに脳筋に負けてるし!』
『てかさー、わたしらが着替えを覗き見てマッチョだって知っただけであって…脳筋じゃないよねタケル君。』
『ちょ、あんたなんでさらっと渡来を下の名前で呼んでんのよ!』
『いいじゃん本人がその場にいないんだから好きに呼んで!』
『ならアタシはタケルって呼び捨てするし!』
『…なあ、廊下で騒ぐのはいかがなものかと思うのだがね?』
『あ、ごめん。わるかったよ渡来…え?』
『『『いつのまに!』』』
いやーあの時は困った困った。
他のクラスの男子から俺の名前が載ってたって聞いたから昼休みに見に行ったら脳筋連呼されてたんだよな。
バカだ脳筋だといわれていたのには傷ついたなー。
謝られた後、なぜかその場にいた全員がジュースを奢ってくれたんだよなー。
とてもすっぱかった!100%ジュース!
「止める気無いならせめてみんなの石化を。」
おっと、思い出に浸ってしまった。
そうだよな、何人か石化状態だったんだよ!
バセットさんなんて日に二回も石化するなんて思いもしなかっただろうに…
ついでだ、そろそろ二人が怪我しだしそうな気が、いや、怪我するなら速さを技術でどうにかカバーしているだけのモクさんだろうけど…
コトコちゃんの心情的にもそろそろお終いにすべきだな。
そう思った俺は戦いを続けている二人へと近づき、手袋を外すと…
「レジストフィールド!!!」
俺の声に反応して視線を俺に向けた二人は近場でまじまじと白い光を見た!
「「ぐあああああ!眩しい!!!」」
ふははは!眩しいだろう!
「「「「眩しい!!!」」」」
あ、室内でしか用いなかったからどれほどの範囲か知らなかったんだよ!
他のみんな…ごめん!




