ゴブリンメイド
調理された肉や野菜が次々と運ばれていく。
ふうむ。
食事目当てよりも、調理や、運搬作業の者達がほとんどだ。
つまみ食い、盗み食い等も起こらない。いや、起こせないの方があってるか。
見張りがついてるからなあ。
ボンゴさんなんかあの体躯で素早さ良さそうだから…
「ん?むぐむぐ…。どうしたタケル?」
バジリスクの肉をほお張りながら俺の見ているほうを見た後俺に問う。
「いや、ボンゴさんは何族なんだろうと思ってな。バス将軍並みの巨体でパワーにスピードがなかなかだと。」
俺の言葉に愉快そうにのどを鳴らすギータ。
「なんだよそりゃ。タケルのほうがパワーもスピードもあるだろうに。あ、だからなかなかと表現したのか。ボンゴは、わたしの下についている隊の隊長だ。あっちの鳥獣人がシタール副隊長。」
隊長!?てっきりシタールさんのほうが隊長とかそんな気がした。
強ち間違いでもないか、副隊長だもんなぁ。
む?この言い方からすると将軍ごとに隊があるようだな。
ムーちゃんが多分メイド部隊なのだろう。
バセットさんが自己紹介するときにメイド隊って言ってたからなぁ。
「で、だ…ボンゴは」
「ボンゴは?」
「…ゴブリンだ。」
「…は?」
いやいや、そりゃないでしょう!ゴブリン=小鬼だろう?
「まあ、先祖返りだそうだ。オーガの…」
オーガは魔族に近い、ゴブリンは妖精族に近い。
なるほど。先祖返りか!
納得、しておこう。
「ちなみに、普通のゴブリンはこんな感じだ。」
そう言いながら自身の足元を指差す。
そこにはクリスタさんくらいの背丈で、メイド服を着た女性が…いつのまに!?
「ギー坊ちゃま!口元が汚れております!」
すぱーん!!!
え?
ちょっとー!
メイドさんだろ?
ギータのももに見事なローキックをはなった!
「さあ、きれいにしましょうねー。」
体勢を崩した所で上着の襟辺りを掴み、引き寄せる。もう片方の手にはいつの間にかハンカチにぎられていた。
口元を拭くのは丁寧としか言いようが無いが…
そこまでの経緯を見ていた側としては、これはメイドですか?
「はい、きれいになりましたよー。」
「あ、ああ。ありがとう。」
「もー♪いつまでたっても子供なんですから~♪」
肌の色はすこし灰色がかっており、髪も灰色のショート。
愛らしいフリルに包まれた美少女と言った所か。
「あらやだ、陛下の御前でしたのね?」
「そうだぞ。もっと加減をだな…」
「…ッフ。なら、もっと身だしなみに注意なさい。お姉さんは悲しいわぁ。」
鼻で笑うとか、てか、このゴブリンメイドさんも年がそれなりに…
「詮索はダ・メ・よ♪いつまでも少女のままなんだから~」
ぬ!?悟られた。
「そうだぞ。わたしなんて、物心ついたときからこうやって口元を拭ってもらっている。」
え?幼少の頃からローキック?
「まあ、あのちびっ子がここまで大きくなるとは思いませんでしたけどね、ふふふふ♪」
「ああ、わたしがリック姉の背を越して少ししてから過激な行動が増えたなぁ。」
「姉だなんて、坊ちゃまったら。」
「…強要したのはリック姉だろうに…。」
まあ、これは二人の昔からのやり取りなのだろう。
てか、将軍相手にこの胆力。この威圧!強者だな!
「メイドですから。」
「いや、俺の心の声に返事したのは何となく分かるが、メイドだからで済ませていいものなのか?」
「なら、エレクト家のメイドですから?」
「いや、そこは疑問符つけちゃダメでしょう。エレクト家がすごいのか、その家に仕えるメイドがすごいのか…」
「「どっちもー。」」
なぜ二人してドヤ顔で、同じタイミングで答えた?
「わたしとしては誇れるからなぁ。家名も、仕える者も。」
「そーですねー。ギー坊ちゃまが笑顔でいてくれるのなら、誇ってくれるのなら…努力しますよ。」
そう言い、お互いに目を見る。
キラキラなエフェクトが見えそうになるが…
「はいはい。そういうのはお家でやってねー。」
他のメイド服さんが現れた!
わざわざ二人が見つめあう間に割り込みながら。
「ん?ああ、わたしとしたことが…ここは広場だったな。」
「あら、そうだったわね。あたくしは屋敷に先に戻っておりますので、今晩は討伐の武勇をお聞かせくださいませ~♪」
ささささーっと人ごみの中に消えていったリックさん。
それを見送るギータと新たなメイドさん。
「けっきょく何しにきていたのかしら…今のメイドゴブリンさん。どう思います?店員さん。」
え?えええ?新たなメイドさんは鱗付きのお嬢さんでした!
「どう?似合います?胸元のこの黒いの…店員さんの角らしいですね?これで、一心同体?でも、見た目は超巨大なヒーローさんの胸元についてるピカピカよね…。」
ビターな黒糖飴です!
てか、改造メイド服…。アコーのタイプに似てるが、絶対的に胸元が…平たい。
「む。この世界じゃブラ的なものがあるにはあるけど…パッドとかがついてたりしないらしいんですよー。中3にもなってこのロリボディーなあたし。でもー、そこのお二人さ…え、近くで見たら普通に胸あるし…詐欺よ!偽乳に決まってる!ぐぬぬぬ!!!バルるんやライちーの胸を見て、あたしはあるほうだと思ったのに!」
おい、中3かよ!
それに、ブラ的なものね…
っと、リーナで想像してしまった。
危ない危ない。言葉が漏れるところだった。
バルるんやライちーちゃんが何者かは察することができる。
バルちゃんアレで15らしいからなぁ…。
母親がムーちゃんだから、父親に似たのか、ご先祖様の血が表に出たのだろう。
ライアちゃんもお姉さんのネオンさんはかなりグラマラスなプロポーションだ。
なんと言ってもアコーくらいの大きさの胸だろう。
…。
すっと、鱗付きのお嬢さんの胸元から視線をそらした。
「ぐ、く。せっかく着替えてきたのに…ご主人様~っとか言って好感度を上げようかと。」
「まあ、がんばりたまえ。」
「ぬぐぐ…心に突き刺さる!がんばってもどうしようもないことはあるのよ!」
そうだったなぁ。頑張れってのはひどい言葉だと友達が言ってたっけ?
え?俺に友達がいたのかだって…
いたよ。もう会えないだろうがね。
「それで、鱗付きのお嬢さん。どうしたんだい?」
「ちょ、スルーされた!そこは、キミのちっぱいは最高だよ!とかいってくれたりなんかしちゃったりして!それに~鱗付きって呼ばれ方はちょっと…コトコよコトコ!」