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おめぇが爆ぜるまでやめねー!

 ネオンと呼ばれていたライアちゃんのお姉さんが呆けている間に、両肩のお嬢さんがたを下ろす。


「かっこいー!へーか!」


 キラキラした眼差しで俺を見上げるテナーちゃん。


 下手したら火傷してたかもしれないんだぜ?


 信頼してもらえているのは嬉しいけどね。


「私がいるのに攻撃魔法を…ぐぬぬ、いえ、プラスに考えるのよ。こういう場合は、後日パンをサービスしてもらうか、どこかで食事を奢ってもらいましょう。それがいいわ~♪」


 えっと…こちらもある意味信頼してるのかね?


 後、あまり豊かではない暮らしをしているのかね、クリスタさん?


 ちょいちょい食べ物のことを考えているようだ。


 俺がおいしいものを用意してあげようかな。


 こちらの食材は知らないが、魔物肉が手に入れば譲ったりしよう。


 そうだよなー。今みんな皮はいだり、鱗を落としたりと、血抜きとかもしてるな。


 それなりに時間はたっていそうだが、どうやら血も何かに使えるようだな。


 内臓の類も無駄にしている様子もない。


 まあ、この国というか世界の基準が分からんから、もったいない精神やエコな考えなのかもいまいち判断し辛い。


 今回狩った魔物がとても使える資源ならばいいことには変わりないか。


 にしても…あっちのほうの鉄板で焼かれ始めている肉が…うまそうだ。


 表情が思わず綻ぶ。


「むかー!なによ!なにさ!その余裕の表情!いらいらするー!「フレイムショット!」「フレイムショット!」「フレイムショット!」」


 おお!三連発!


 観客達もわーわー叫んでいる。


『あれが、炎のSランカー!』

『きゃー♪男前~♪』

『けっ、魔法使いが!』

『うおおおお!パン屋さんだ!』

『まだかなまだか~お肉~!』


 確か、魔法使い云々にはランクがあったんだったか。バセットさんが言ってた気がする。


 男前ね、まあ、男役が似合いそうな感じはする。胸はでかいが…


 アコーといい勝負か?ライアちゃんも後々はあんなふうになるのかね?


 魔法使い嫌いがいるようだな。まあ、使えないとか適正云々があるのだろう。持つもの持たざるもの、優劣はどのような分野においても付きまとう。


 パン屋さん!炎のパン屋さん!火力調節も思いのまま!


 ん?まてよ、こんな所で無駄遣いさせていいのか?


 まだまだ焼かないといけないだろうし、MPは消費するだろう。


 俺の力の小手調べにと思ったが…


「なあ、俺としてはこんなことに魔法を無駄遣いするのはいかがなものかと思うんだが!」


 飛んできたバレーボールサイズの火球を軽々と払いながら俺は声をかけるが…


「おめぇが爆ぜるまでやめねー!「ブレイズショット!!!」」


 おお!なかなかの大きさだな?だが、もったいないと思い始めた。


 さっさと済ませたほうが周りに被害が出る可能性を考えずに済む。


 怒りやすい人は何しでかすか解らんからな。


 こわいこわい。




 今までは一歩も動かなかった俺だが、走り出すと同時に左の拳を握る。


 大の大人の上半身はあろう炎の塊を殴り、消す。


 そして、距離を縮めるために跳び、軽やかにネオンさんの後ろに着地。


 振り返り様に手刀をすん止めしようと…




「ブレイズ!」


 そう短く叫んだネオンの右の拳が炎に包まれる。


 腰のはいった見事な一撃が…


 俺の鳩尾にヒットする!



 ポフッ!



「あ?って、いでえ!殴ったあたいのてがいてえ!うおおおお!ああああ!…いたい。」


 音はしょぼかったが、俺の鍛えられたボディに軍配が上がったようだ。



 転げまわるネオンを見ながら呆けていると


「とうっ!そして、着地。ふふー♪タケ様の丈夫さを知らずに殴るだなんておバカね。」


 なぜアンズさんが偉そうなんだい?


 てか、俺の肩にちゃっかり座ってるし。


「ふざけんな!ばーか!ふざけるのはその筋肉塊ボディーだけにしとけよな!魔法を殴るとか!もうもうもう…ばーか!ばーか!うわああああん!」


 ついに泣き出すライアちゃんのお姉さん。


 すかさず駆け寄るライアちゃん。


「だめだよ?陛下は優しさでできてるんだから。肩に乗ってた子に聞いたけど迷子にならないようにだってさ。お姉ちゃんの嫉妬パワーじゃ勝てないのよ。怒ってばっかりじゃディオンさんもお婿さんになってくれずに常連さんも辞めちゃうかもよ?」


 その言葉に絶望するネオンさん。


 口の開閉を続けるが、言葉が出ない。


 代わりに、流れる涙の量が増し、鼻水も追加された。


 厳しいなライアちゃん。


 てか、さらりとお婿さんて…


「陛下!ライアちゃんはいつも突き刺さる言葉を言うんですよ!その笑顔に騙されないでくださいね!」


 なぜか涙目なバセットさんが俺にそう言ってきた。


 突き刺さる言葉…。


 無意識ではなく、笑顔と共に浴びせてくるのか?


 恐ろしい子だな、ライアちゃん。


 泣いてる姿にいたたまれなくなり…


「「ヒール!」「メンタルヒール!」「レジスト!」」


 淡い光がネオンさんをつつんだ。








 妹からハンカチを受け取り、顔をごしごし…


 いや、ごしごしって男前だねー!


 女性としてはちょっと、と思った。


「あたいの完敗。くそう。回復魔法だけのなよなよなら良かったのに。魔法使っただけで倒れたからよわっちーやつなんかなって思ってたのによー。」

「お姉ちゃん。力の差がありすぎるんだよ?陛下は、あの見張り塔まで魔法を発動させたって昨日の夕食の時、言ったじゃん!それなのに、今日はいつもよりディオンとしゃべれたーとか嬉しそうにしてさ…」


 ザクザク行くねー!


 せっかくごしごし拭いた目元に涙が溜まり始める。


「ううう。ライアがあたいをいじめるよー。」


 こりゃ話し変えなきゃな。


「なあ、ネオンさん。きびしいようなら休む場所がある。そこで休んでいるといいよ。」


 休めそうな場所があったので、とりあえず指差してみる。


「な!くそう。くそう。ノーダメージでさらにあたいに魔法も使い…魔法を使いやがり、気遣ってもくれやがる!だが、あたいは魔法を…」


 何か言おうとしていたので、言葉で遮る。


「俺との戦いで消費しただろう?少しは休んだほうが、いや、命令だ。休め。民を気遣うは当たり前だぞ?俺を誰だと思っている?口答えは許さん。今は体を休めよ。」

「っ!?は、はい!陛下!あ、そうだよ…コイツ陛下なんだよな…。調子狂うぜ。」


 俺が何となく強めに言うと、顔を赤くしながらもブツブツ言い、そっぽを向いた。


 ネオンさんは調子狂うと言いながら立ち上がると、ライアちゃんに服をはたいてもらった後、俺が指差した場所へと向かった。



 その後姿を見送る。


 さて、俺はどうしようかね。

 



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