民は見た!!
ついに剣が陛下の仮面に当たって、折れた。
「う、うそーん!」
大男は叫びますが…
私たちが言いたいですよ!
「さて、気が済んだなら…迷惑をかけたみんなに謝ろうか?それとも、さよならするか?」
さよならするか?
見ていた者たちはその言葉に恐怖します。
想像したであろう大男は、ガタガタと震えだします。
「「「「ごめんなさい!」」」」
あら?
あらあら?
見てただけで、何もできなかったこと、なにもしてあげなかったことを悔いて謝る方々も…
震えていた大男は、折れた剣と、盾を手放すと陛下が言ったとおりに地に額をこすりつけて謝る。
漏らしながら笑っていた男の頭も地に押し付け、反省していることをアピールさせました。
「さて、お嬢さん。っとその前に「ヒール!」傷からばい菌が入ってるといけないから「レジスト!」よし。それじゃ、この人たちを許してあげるかい?」
わー♪いいなぁ。回復魔法を個人でしてもらえるだなんて!
白い光に包まれる子どもの恍惚とした笑みがどれほど幸せなのかものがたっている!
でも、ご自身のことは良いのですかね?
殴りかかられ斬りかかれたのに…
「…へ、へーか。ありがとうございます。」
恥ずかしそうにお礼を言う子ども。
その言葉に微笑む陛下。
やっぱり笑顔なのが感じられるわ~。不思議な感じ。
「あ、あのーいたくないの、です、か、へーか?」
「ん?ああ、怪我も何もしてないからな問題ないぞ?だから、彼らはお嬢さんに謝っているんだ。許してあげるかい?」
「うん!」
「そうかそうか。きいただろう?キミ達、お嬢さんは心が広いから許してくれるとさ…。見習えよ?」
最後の『見習え』との一言は、多くの者達の心に刻まれたかと思います。
その前の台詞『怪我も何もしてないから問題ない』については、格の違いですかね。
心が広いと言ってしまえばそこまでですが。
感性が違うのでしょう。
「さて、俺としては…だれか、スライム付きの布を彼に。流石に、そのままだとまずいだろう?」
その声に、中年の女性が…
「こ、これをお使いください。孫の換えのオムツですが、予備がありますので。」
「おお、そうですか。ありがとうございます。さあ、これを受け取り、彼に。」
なぁ!?陛下はその女性に頭を下げ受け取ると、大男に微笑みながら渡しました。
民に軽々と頭を下げれるのはヴィオロン陛下みたいな感じを受けます。
すっかり忘れられているバグパス陛下に関しては、魔王になってからは姿を現しませんでしたし、元より城からあまり出てこられない方でしたから。
カエルの姿を気になされていたのでしょうかね。
陛下から恭しくオムツを受け取る大男。
本来なら、奇妙な光景なのでしょうが…
なぜか一連のやり取りが神々しく見える。
でも…、受け取った後はなんともいえない絵図らよね。
大男が男の股間をオムツで拭うのよ?
陛下も顎に右手を添えると…
「精神衛生上よくないか?ならば、「メンタルヒール!」」
メンタルヒール?なんでしょふぁああああぁ~♪
何だか爽やかな気分です。
それも、居合わせた人々をそれなりに魔法の範囲に収めているようです。
笑い呆けていた男も正気に戻ったのか
「へ?え?お、おい!マカラス!なんでおれの股間拭いてんだよ!」
それに対して大男は
「あ?おめえが漏らしたからだろうが!こちらのお方に迷惑かけたんだぞ!」
その発言を聞いた陛下は
「おい。もう一度言わせるつもりか?お嬢さんに迷惑をかけたのだろう?なあ。そうだろう?」
反論を良しとしない、強いお言葉。
ご自身は無傷だから問題ないとの認識。
「へ、へい!」
「は?なにがなんだかわかんねーよ!」
「このバカ!俺様らの命が残ってるのはお嬢が許してくれたからだぞ!」
大男は陛下にぺこぺこ、それに疑問を投げかけるお漏らし男。
そこで叱る大男。
ふーむ。恐怖状態はある意味、混乱、乱心、いわば心の逃避行。
「大体、一方的に攻撃を仕掛けた俺様たちの行動を正面から受け止めるような御仁だ。只者じゃねえ。」
やはり陛下なのはご存知ではないと。
「ふひい!おれのメイス!っておめえの剣も折れちまってる…。」
今更驚くのですね。
「命あってのもうけもんだ!武器なら蓄えを少し削ればそれなりのが買えるだろう!まあ、手入れはもっとしっかりして、もっと大切に使って、人には決して向けないようにしないとな。魔物退治に使ってこそだ。」
「お、おう…。基本のはずだったのにな。どこで違えちまったんだろうな。」
「言うなシェケレ。空しくなる。」
二人して肩を落とします。
その姿に陛下が申し訳なさそうにします。
お心優しいのですね。
それとも、ご自身を攻撃なされなければ壊れなかったとご思いでしょうか。
そう思っていると、王城のほうから…
「おーい!ここか?騒ぎがががが…へ、陛下!何があったのでしょうか!」
兵隊さんです。
「む。キミは、バス将軍の後ろにいた…。ふむ。こちらの二人がな、武器をダメにしてしまったんだ。予備とかあったら譲ってくれたりはしないかい?」
え?
「へ、陛下?それは決闘か何かで?」
「いや、俺に当たったら折れたり曲がったりしたんだ。申し訳なくてな、それで…予備とか無いか?」
嘘でしょう?なぜそうまでしてあげれるのですか?
当のお二人は、目の前にいるお方が陛下だと知り、申し訳なさでしょうかね?
すごい顔をしています。
「い、妹の皮膚の病気を治してくれたお方じゃねえか!そ、それなのに俺様は…俺様は!」
泣き崩れてしまいました。
大男なのにまるで子どもみたいね?
「残念ながら予備はありません。にしても、お怪我は?」
「ん?ああ、こちらのお嬢さんが怪我していたから治したぞ?」
「いえ、陛下の怪我です。」
「ふうむ。ないな。」
「は、はあ…。」
何でしょうかねこのやり取り。
ちょいとかみ合ってませんよ?
陛下は予備が無いと聞き、考え込んでいるご様子で
「今回倒した魔物の素材でも譲れればな…。」
「陛下。あ、そうでした!広場に向かわれないのですか?」
「あ、そうだったな。だが…うーむ。こちらの二人とお嬢さんが…。」
私は意を決して声を出します。
「あ、あの!その子、迷子のようなんです!」
い、言えた♪
「迷子だと!?紫髪のお嬢さん。それは、本当かい?」
「は、はい。」
そこは子ども本人に聞いてくださいよ!
それなりに距離があったはずなのに、いつの間にか目の前にいる。
高い。そして、マジエロイ!
っと、あら私ったら…またはしたないことを。
ちょっと。いえ、かなり。私の 私 がヤバイわ!