勇魔族
「「まっ、眩しい!!!」」
レベックは兜のおかげで効かないものかと思っていたが隙間から光なら差し込むか。
リーナはサングラスのようなものを白衣のポケットから取り出し、いつの間にかかけていた。
「ん?これかい?密林に出てくる虫型の魔物『オオクロバネカゲロウ』の羽を加工したものだよ。眩しい時は重宝してるんだ♪」
やっぱりサングラスみたいなものか。俺もほしいな…だって俺も眩しいんだもんっ!
そして、光が収まると石ころが消えて、砂のようなものが残っている。
「それで、この魔法はなんだい?特殊魔法なんて使えたのかい?」
「いや、さっき覚えたばかりのレジストフィールドって言うレジスト系の魔法だが?」
俺の発言に呆けたように口を開く…
「なんだろう…回復魔法で相手を倒せそうな気さえし始めたよ…。」
「俺に言うな。まさかこれほど眩しくなるとは思わなかった。熟練度が上がるって威力も上がるんだろうかね?」
「まあ、そうなるよ。でも、規格外だね!流石、ボクの勇者様だよ!」
リーナよ、なぜ君が偉そうなんだい?
「「…。」」
残りの二名様がすごいジトッとした視線を送ってきた。
「さて、ボクの結界石も完全に無効化っと言いますか…砂になってる。さっきまで石のカタチしてたよね?」
「それも聞かないでくれ。」
四人で魔法陣の側に寄る。
俺は、背中に何かあると思い、ローブを脱ぐ。
「「「…ん、ごくり。」」」
三人そろって生唾を飲み込んだ。
「おーい、何か描かれてたりするか?なあ、返事してくれないか?」
「あ、ああそうだね。ローブの所為でわからなかったけど、これほどとは…筋肉質なんだねタケル。とても広くて、逞しいよ。」
「いや、背中の感想はいいからさ…。」
三人に背を向ける形をしているからどのようなことをしているのか分からない。
うおっ!つめたいっ!
だれだ背筋をなぞってるのは、くすぐったい。
「これは、古代文字かしら?」
「ん~ボクにはちょっと分からないかな。」
「自分、読めそうです。」
…。読めるのかレベックよ。リーナもヴィオリーンも分からないといっていたのに。
「こしょこしょこしょ…」
そこはなぜ俺に聞こえないように…気になるじゃないか!
「「なっ、なんだって!」」
お二人さんの驚く声だけが部屋に響いた。
「実に興味深い。丁度ここには三人だ、一人一つとしよう。」
「じ、自分もよろしいので?」
「レベック。私だっておんなじ気持ちよ?いいの、リーナ?」
「ああ、ボクだって独り占めするつもりはないよ。タケルは勇者で魔王な勇魔族。多分、この世界に初めての存在で、唯一となる者だ。」
「歴史的な魔王ね。私が魔王するよりこの国のためになってくれるならそれでいいわ。私は支えるだけ。でも、そんなトライオスを支えれる一人に私がなれるのね。」
なんだなんだ…会議し始めちゃったぞ。
「タケル。もう少し待っていてくれ。今からちょっとした事をするからね。これで、タケルは隷属魔法をかけられなくなるはずだから。」
そう言われると待つしかないよな。下手すれば兵器になりうるといわれちゃあしょうがない。
「それじゃあ、レベック。いいね、ボク達三人の秘密でもあるんだよ?」
「わ、わかっています。陛下をお支えできるのであればそれで…」
「は、恥ずかしいわね。」
そして…
「い、いくよ。いいね?」
「うん。」「はい。」
その掛け声の後、腰の上辺りに柔らかい何かが押し当てられた。計三回。
それが終わると足元の魔法陣が淡く青く光った。
光が収まると…
「なあ、なんだったんだあれ?柔らかい何かが当たったきがするんだが?計三回。」
「「「…。」」」
<聞かないほうが言いと思いますよ。>
なんで声の人が…。何かご存知なのですね。
「た、タタタタケルがききき気にすることじゃないさっ!気にするのはやはりボク達だけだ。そう、何も問題はなかった。うん。何もない。」
これは答えてくれなさそうだな。仕方ないのでローブを着なおす。
「私としては、これでトライオスが魔族の国にとって危険な存在ではなくなったと思いたいわ。」
「ぷしゅ~、な、な、なぉ~ん。」
レベック、一番問題がありそうだ。いつの間にか兜外してるし、顔が真っ赤だ。
それに、声が少し違うような…おかしいな、男っぽい声してたはずなのに中性的に思えて仕方がない。
「レベック!声、いいのかい?」
「へっ、にゃっ!あ、あ、あ~。戻りましゅたか?」
噛んだ。そして、最初の頃の声に戻った。なんなんだ?いったい…
「タケルは今は気にしなくていいよ。これはレベック自身の問題だ。」
はあ~そうですか。わからんことや教えてもらえないことばっかりだな。
「で、この後はどうするんだ?俺としてはサッパリなんだが…」
「そうだね、ボクの部屋に戻ろうか?ハーブティー位は用意するよ。」
それはありがたい。のどが渇いてきたところだったからね。
行ったり来たりだな。
「「アンロック」よし、開いたよ~。ど~ぞ~中へ、散らかってるかもしれないけど。」
「いや、さっきもここ居ただろ?俺は気にならなかったが…。」
「タケルが気にならないならそれでいいさ、それじゃ用意するよ。」
そう言って部屋の隅の石造りの台へと移動しポットやら乾燥させた葉っぱ(ハーブかな?)を準備していく。
「タケルには、魔石や精霊石なんかははじめてだろう?見てみるかい?」
お呼びのようだな。ヴィオリーンは寝ていたソファーに、隣りには兜を外したレベックも座っている。俺は、部屋の物を少し見て歩いていたが、リーナの横に並ぶ。
「ああ、知らないな。御教授願おうか?」
「ふふっ、いいよ。ボクの横に来てくれ。」
これは台所みたいなものか?コンロやHIヒーターのようなものは見当たらないが、まあ異世界だからな、代わりの品があるのだろう。
「これがね、あたためるための台だよ!ここに自分の魔力を流すとね…ほらっ!こんな感じに赤くなるんだ。これは、内蔵された赤の精霊石の力を使用しているんだ。燃料が自分の魔力!すごいだろ~」
エコだね!精霊石とやらは凄いな。
「すごいな。精霊石ってやつは…」
「んふふ…でしょ?でも、いつかは中の石の力が弱くなっていって、なくなっちゃうから交換しないといけないけどね。」
電池みたいだな。
ん?どうしたんだ…。リーナが肩を寄せてきた。
「今は、この小さな幸福感を噛み締めさせてくれないかい?」
これだけで幸せになってくれるなら喜んで…
そんな二人を小さな赤い光が包んだ。