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まごうことなき

 槍を握るエレクト将軍は先ほどのふざけたことを言うクズなどではなかった。


 どうやら、見間違ったのは俺のほうだな。


 誰だって見栄を張りたいと言うことだろう。


 いつでも倒せる実力があると豪語したのだ、皆を危険にさらすようなことも無かったのだろう。


 そう考えれば、獲物をとったのはある意味俺か!


 ははは…


「ほう?まさかとは思っていたが、武器はどうやら無しか。いや、持つ必要が無いと見た。速さは申し分なく、力も将軍クラスに軽々ととどくようだ…。コレほどいいものをもらったのは久しぶりだよ。」


 そう言いながら、殴られた頬をなでさする。


「調査では部下に譲る程度の大型や中型ばかりでね、連絡をもらったはぐれのワイバーンはついにわたしの出番だと思ったのだよ。だが来てみれば拍子抜けでね…。まあ、群れで行動するから危険度が高いワイバーンだ。一匹そこらじゃすぐに終わってしまう。せめて観客を喜ばせようかと思ったのが…このようなことになるとは。ふ、ふふふ…」


 それは何か?さらにいい獲物を見つけた?


 いや、力を振るう機会が来たことに歓喜しているのだろう。


 手に汗握る。


 ああ、心地よい!


 俺は戦闘狂などではないつもりだったのだが…


「新しい魔王とやらは、まごうことなき豪傑のようだ!だからといって、戦国にはしないでくれよな?わたしにとって大切な者たちが住まう国だ。馬鹿な真似をするようなら…この槍でその心の臓を穿つまでだ!かつ目せよ!」


 かつ目せよとの言葉と共に飛び上がり、手にする槍が赤々しく輝く。


「チャージショット!」


 声と共に槍を突き出す。


 その動作を視認し、俺は飛び退く…


 ほほう?地面に直径30センチメートルほど、深さは…ちょいと分からんな。穴が開いた。


 何か撃ったのかね?


「遠距離攻撃はやはり反応されればそこまでだな。スキルの無駄撃ちにもつながる…。やはり、武を競うのが最善。」


 翼をはためかせると、俺の側へと着地する。


「言葉はもう必要ないかね?ならば、魔軍将の座をいただきし我が名はエレクト・ギータ。エレクト家の名に恥じぬ戦いを。」

「ああ、そうだな。俺の名は回復魔王トライオス・タケル。将軍の期待に副えるよう尽力させてもらうよ。」


 お互いに名乗ると、共に不敵な笑みを浮かべた。

































『ははっはははははっ!!!』

『ふ、ふはははははっ!!!』


 遠くでは二人の戦いが繰り広げられている。


 …未だに。


 お互いに、それなりに力を出しているようだが…


 楽しそうに笑いあっているので、まだまだ余裕がありそうだ。


「えっとですねー。わたくしが見る限りでは…あのバケモノ、誰です?将軍様が先にワイバーンを討伐しに行った所に追いついてみれば、バジリスクの死体が20近くも並べられ、対岸にはそのワイバーン、さらには頭の無いカトブレパス。異様な光景なのに、そこから視線を逸らせば縦横無尽にとびまわりながら笑いあっている将軍様と片角の魔族。」


 そう言葉を発するのは、魔軍将エレクトが今回討伐に連れて行った少数の兵のうちの一人。


 鳥獣人のシタール。


 獣化を行うことにより両腕が翼となり、空を飛ぶことができるのだ。


「あー、シタールちゃん。アナタは副隊長よね。でも、エレクト将軍ちゃんと討伐に出かけていた。」

「はい。ツィンバロム将軍の言うとおりでございます。」

「彼は、魔王よ。」

「…バグパス様では?」


 アタシはゆるゆると首を振る。


 すると彼女は整った眉をひそめた。


「…引き篭もりのカエル様の次は、将軍様と普通に戦うことのできる豪傑。ヴィオロン様とはまた違った…。」

「でも、知らせは聞いてない?国全体、いえ、見張り塔まで回復魔法を発動させた魔王様よ?」

「ですが…黒い仮面を…ん?黒髪に片角…そして、右手だけの黒い手袋…。回復魔王トライオス。本当に新しい魔王様なんですね…。ちょっと意外です。」


 半信半疑だったのだろう。


 まあ、魔物討伐に出ている間に魔王が代わりましたといわれたら疑いたくもなるわね。


 自分の目で見るその姿は想像とかけ離れていたのでしょう。


 特に…回復魔王の部分が、ね。


「ですが…。イイと思います。ええ、わたくし、無精卵3個位は産めそうです。ええ。」


 獣化を行う鳥獣人の成人女性にのみ言えることなのだが…


 卵を産むことがあるらしい。


 他の種の女性にも意味無く卵を産む種がいるらしいのだが…


 そこまで詳しくは無い。


 ただ単に卵を産むだけであって、普通に胎生らしい。


 先祖返りによるものなのでは?との意見が有力視されている。


 まあ…


「生命の神秘よね~。」

「ですよね~。わたくしも、性的な興奮さえしなければ卵は普段産みませんので。ですが、オス同士のこのような姿を見ればメスとしての本能がうずくのでしょうね。更に、先ほどまで獣化してましたし…。」


 うっとりとしながら彼らの戦いを見るシタールちゃん。


 まあ、子ども達には速すぎて見えないわよね…。


 狼獣人の子だけは必死になって目で追ってるわね。


 ぽっちゃりだけど、将来は有望そうよね。


「魔軍将…。これほどとは、吾らの国の最高戦力『十牙』達を上回り、父上さえもどうにか手合わせできる程度だろう。まあ、それよりも…タケはやっぱり普通じゃないな。うむ!」


 セイヨウちゃんは流石よね~。


 冷静に戦力の分析をしている。


 でも、第3王子らしいからあまり重役になろうという気も無いのかしらね。


 その隣のアダンちゃんはもう諦めの境地ね。


 アンズちゃんは…


「やっちゃえー!タケ様~!鳥男をたおしちゃえー!」


 鳥男って…彼、鳥獣人じゃないのにね。


「背中から翼を生やしたイケメンVS近所のコンビニのマッチョな店員さん!ビジュアル的に薄い本が出るわね。まあ、あたしの年齢じゃ買えないか。その前に、もう異世界だからそんな本も無いでしょうし…。」


 元バジリスクちゃんの言う『コンビニ』が何なのかは分からないけど…


 男同士のぶつかり合いでよだれをたらしているこの子は…アタシに近いものを感じた。


 これは…語り合えそうね。


 ただ勉強や訓練を詰め込んだだけでは飽きが来てしまいそうだったから、時折濃い話ができそうで良かったわー♪





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