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わいばーん、

 布で鎖骨から下を隠した黒髪の少女が、獣人国ベリーズの第3王子を挑発しているのだが…どうしたものか。


「なあ、やっぱり…。魔法や亜人なんかの姿を見て興奮するもんか?」


 俺はふと疑問に思った。


「そりゃあ、興奮するもんだろうなあ。吾も魔法の先生や獣化の仕方を教えてくださった師の姿は今も鮮明に思い出せるからな。それが、魔法無き、さらには魔物すらいない世界から来るのだ。発狂してもおかしくあるまい。」


 大切な思い出は色あせないということだな。うむ。


「陛下ちゃんが冷静すぎるのよ。」

「まあ、おかしくなるようであれば…このアンズ、一生面倒見ますよ!ぐへへ…ええ、毎日拭き拭きして差し上げますとも!もちろん、下の処理も…。」


 ナニソレ怖い。


 おかしくなった俺の姿を想像してよだれをたらしてるアンズさんが怖い。


「お…オレもっ、もしもの事があればお世話します。この命、元よりタケル陛下に二度救われたようなもの。残りの生涯を費やそうとも…御身のために。」


 何だこの流れは!リュート君まで言い出したじゃないか。


「あーそのなんだ。俺が悪くなる前提ではなさないでくれないか?てか、今は鱗付きのお嬢さんだろうに。」

「ちょっとー!店員さん。あたしの名前知らないの?」

「知らん。」

「即答!あ、でも、知ってたらそれはそれで…」


 疲れるわー。


「いいわ、あたしとパンパンした店員さんは知る権利が…」

「してない。してないからね?キミが俺の角の欠片を使って作った首飾りを黒糖飴と勘違いして食べちゃったんだよ。」

「えー、首飾りなんか食べるわけ無いじゃん!それに…黒糖飴…黒糖飴…あ、ビターな黒糖飴!」

「ビターな黒糖飴ってもう別物だろうに…。」


 答えに辿り着いたのかね。てか、パンパンとか言うなよな…。


「まあいいわ。トカゲエンドじゃなくてまだまだ続くだったんだからね。リーダーがやられて処刑台に向かったつもりが、近所のコンビニ店員さんが魔王してて…あたしは全裸で四足だなと思ったらハズカシンで、気が付いたらお嬢さんって呼ばれてハズカシンで、次に気が付いたら【王子】って表示されてるネコ君が、相変わらず【魔王】って表示されてる店員さんとお話してたのよね。」


 表示されてる?


 それって…プライバシーとかどうなるのかね?


 隠せないじゃないか!


「まあ、その…見えるんだな?ステータスが。」

「ええ、見えるわね。あ、でも…店員さんのはレベルが違いすぎるのか名前と年齢しか見えないわよ~。まさしく魔王様といったところよね。」


 驚愕、だが…見えるお嬢さんではなく、俺の顔を見ながらなのが疑問なのだが?


「名前と年齢が見えるレベルの目をしているのに、見れないって…。」


 ムーちゃんが一番驚いている。


「そんな凄いの?モデルみたいな将軍様?」


 首を傾げるお嬢さん。


「そ、そりゃ凄いのよ?相手の詳細を見ただけで知れるわけじゃない?これは…うん。教育が必要だわ。アタシに任せなさい。陛下ちゃん。」


 燃えている。


 この姿だけ見れば、教育熱心なママさんだな。


「あたしマジ凄い!えへへ~」


 おだてられやすいらしい。この子の将来が心配だ。教育が必要だ!


 わりと切実に。


「でだ、見る目を持っているなら…あの空の黒い点は見れるか?」


 真剣な声で、真剣な顔なセイは急にそう言うと、空を指差した。


「なになにネコ君?いえ、王子!あたし、がんばっちゃうわよー!…え、わいばーん?」


 嬉々として指差したほうに目をやり、つぶやいたのは『わいばーん』え、ワイバーン!?


「あー、そうか。ありがとう。てなわけで、カトブレパスの血のニオイだろうな。タケが勢い余って潰してしもうたからな。」

「あちゃー。商隊を襲ったはぐれかも…。見張り塔の知らせでは山のほうに逃げたって言ったから、討伐隊が帰りに調査するってことだったのよね。」


 セイとムーちゃんが苦笑い気味に説明してくれる。


「ワイバーンでしゅか!?あたち、耐性が無いんで『咆哮』つかわれたら…」


 咆哮を使う魔物にもよるが、耐性もしくはそれなりのステータスがないと恐怖状態もしくは、怯んでしまうらしい。


 身体の強化を行うか、薬を用いて防ぐか、このようにして…


「メンタルシールド!」


 魔法で防ぐ方法が有る。


 ふうむ。メンタルヒールは対象の回復だったが、これは…レジストボディーみたいなものかね。


 違いといえば、このドームのような光の中にいれば効果があるって事ぐらいだろうな。


「ふわわー、聞いたことはありましたが、これが回避方法の一つですね。なにより心地いいですが。」

「陛下ちゃん。効果範囲…広すぎない?」


 バセットさんは幸せそうだが、ムーちゃんはジトッとした視線を俺に向ける。


「仕方ないさ、はじめて効果を確かめたからさ。」


 すでにLVは10ですがね。


「きもちぃー♪てか、店員さん。魔法…マジ、ファンタジー!でもそこは魔王なんだから、カッコイイ魔法であのわいばーんを一撃で倒しちゃうとか期待したのにな~。」


 攻撃魔法を知りません。


「残念ながら回復専門でな、攻撃魔法は唱えたことすらないのだよ!」

「「「ナニソレカッコイイ!」」」


 魔王は子ども達からの尊敬を得た!


 ああ、心地よい。


「なら、どうする?吾たちは回復してもらったから体は動くが、武器も荷物も捨てて逃げていた身だ。空を飛ぶアヤツには流石に…ぬ、下りはじめたか。」

「そうねーアタシも投擲用のナイフくらいしかないわよ?バセットちゃんは?」

「あたちの魔法では流石に…。」


 話しているうちにどんどん姿が分かるようになる。


 ほほう?カトブレパスより少し大きいな。


 だが、俺がしとめた獲物を狙うとは…


 不愉快だ。


 気持ちは、庭の野菜目当てにやって来たカラスに石を投げて脅かすくらい…


 で、投げた!


 あ、当たった!


『グエエエエエエエエ~!!!!』


 バサッ!


 バサッ!


 ドサッ!


「「「「「「ェ、ナニソレ怖い!」」」」」」

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