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こんな毛むくじゃらな王子なんて

 先ほどまで気を失っていたから仕方がないといえばそこまでだがね。


「そう…だな。参ったよ。この姿から戻れなくてな。」

「戻れない!?セイヨウ様、ご無理を…。ん?そういえば、森ではないですね。ここ川です。あ、れ、あれれ…。」


 自分の発言にいまさらながら疑問符を浮かべ、むーむーと言いながら頭を抱えているアンズさん。


 森で毒を?


「タケの疑問がごもっともだな。吾らは森を進行中、アンズが偵察と言って木を登り、周囲を視ている最中に今まで見たことない昆虫の魔物に遭遇してな…。」

「ええ、僕も驚きましたよ。あのような攻撃方法をオオグモが行うとは…。」


 蜘蛛かぁ…。それもオオグモとか、あんまり想像したくないな。うん。


 その蜘蛛が毒グモだったわけか。


「木から落ちるアンズをアダンに任せ、吾はクモを倒したのだが、奇妙な手ごたえでな。その後は、持っていた解毒薬を何本か用いて痣のようなモノの進行をどうにかしのいだのだ。」

「はい。ですが、そこからアンズは気を失ったままでした。にしても、あれほどの痣が全く残ってないのが疑問なのですが?この中に優れた医者が?」

「それは陛下ちゃんよ。なんと言っても回復魔王なんですから。」


 形のいい胸を張りながら誇らしげに言い放つムーちゃん。


 そりゃあ、国王様を他国の者に自慢したいのだろうな。


「回復魔王…。そういえば、僕の怪我もまったく…傷跡もな、ない!?」


 僕、気持ちよくて幸せでしゅううううぅ~♪さんはどうやら、意識が朦朧としていたからか今更ながら怪我していた部分を確認している。


「タケに感謝しろよ?てか、シンフォニアの魔王陛下の御前でこのような態度をとっているバカどもが!ひれ伏せ!」

「王子だって普通じゃないですか!僕だけ不公平です!」

「吾は許しをもらったのだ!てか、友達だ!」

「な…王子に友達?」


 そこで驚くなよな。


 俺から友達ということで通したみたいなものなのだが。


「ならばこのアンズ!タケ様のペットでも可です!さあ!このカラダをアナタの…」

「言わせないわよ。…ねえ、セイヨウちゃん?王子って…獣人国の?」


 アダンさんは口が軽そうだな。


 まあ、アンズさんは身体が軽そうだ。


「な…おい、アダン。軽い口のせいで吾が王子だと知られてしもうたではないか!いや、どの道将軍殿のうちの一人、隠し事は不味いか。」


 お供が残念すぎるのかね。


「失礼。将軍殿。吾は獣人国の一つ、ベリーズの第3王子。セイヨウ。」

「斥候のアンズ。」

「獣化兵のアダン。」


 今更ながらの自己紹介。


「では、改めましてだな。数日前に魔王になった、トライオス・タケルだ。」

「アタシは魔軍将・ツィンバロム。そしてこの子が娘のツィンバルね。」

「娘のバルちゃんだよー。」

「メイド隊の新兵、バセットです。それで、この子達が右から順に、リュート、ライア、ガル。」


 子ども達の紹介はバセットさんが済ませた。


 呼ばれるたびに緊張しながらも皆頭を下げていた。


 そして、放置されている…鱗付きのお嬢さん。


 同郷の出でも、名前は流石に知らないからね。


「僕はイヌですが…そちらの少年、オオカミですね。国内では『十牙』のあのかたしか知りませんね。他の獣人国や集落にはいるかもしれませんが、ね。」


 ほほう?ガル少年はオオカミだったか。ハスキー犬か何かかと思ったぜ。


 ぽっちゃりだけど…


「確かに珍しいな。それが、シンフォニアに…まあ、多くの種が住む都だ。他所では見ない者も住んではいるだろう。」

「そうですねー。どっちも付いてる将軍様とか…このアンズ、新たな世界を知りました!」


 知ってどうなる?まあ、生命の神秘だよな。


 どっちも付いてるの発言からアダンさんがムーちゃんの下腹部を凝視している。


 彼の今後が心配になった。





 自己紹介が終わり、この後どうするかとなった所で…


「こんな毛むくじゃらな王子なんて…って、なによこれ。あたし、また鱗あるよ。これ、トカゲスタート回避したかと思ったら、変わらずの人外ってやつ?」


 どうやら戻ってきたらしい。先ほどまでの幸せそうな発言ではない、困惑の声が上がる。


「そして…店員さんが魔王のまま。あれれ~、同じ世界?あ、リーダーの死体があるから同じ場所だわ。」


 リーダー?


「あ!バジリスク!へいかの角食べたでしょ!返して!」


 いや、それは厳しいと思うぞ?


 だって…胸骨あたりにくっついてるから…。


 ぱっと見はブローチみたいだけどね。


「なにこの子、髪の毛真っ白なんですけどー。てか、イヌミミが増えて、ちんちくりんなケモノミミの子もいるし…。」


 バルちゃんの発言は聞こえてなかったのか?


 意思疎通ができてない?


「ねえ、陛下ちゃん。この元バジリスクちゃんは何を言ってるのかしら?娘の髪の色を…」


 ちょっと不機嫌らしい。


 まあ、お嬢さんの言い方が不味かったか?


「ムーちゃん、落ち着いてくれ。この子は混乱しているんだ。先ほどまで四足歩行だったからだろうけど。」


 俺はムーちゃんをなだめることに徹するが…


「店員さん。あたしがトカゲだったの知ってる…となると、進化?この姿は進化したのね!でも、ラノベとかで読んだのでは、何か強そうなのを倒したり…食べたり…ま、まさか!?生肉食べちゃった?」


 不機嫌にさせた本人様はマイペースのようだ。


「…俺の角を食べたらしい。」

「え、店員さんをたべた?うそ…あたしまだだよ?って、はだかだし…きゃー♪やっちゃったのね?いえ、トカゲの姿でやっちゃった?ハジメテを?うそでしょ?」


 うわーなにこの子…


 ひとりできゃいきゃいうるさい。


「ねえ、タケ様。この子、黙らせていい?」


 こえーアンズさんこえーよ!


「だから言っただろう?狂者として扱われると…タケが普通じゃないということだ。」

 

 それは褒め言葉ですかね?


「うをー!もふもふが襲ってくる!ウレシンジャウ!ハズカシンダかとおもったら次はウレシンジャウ!」

「ええい!騒がしい!魔法で黙らせるか?」

「うほー!魔法とか!すげーんですけど!かもーんネコちゃん?いえ、ネコ君ね。」


 頭痛い。


 俺、こんなバカな言動を起こさなくてよかった…。

 

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