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おうい、倒せちゃうの!?

 バルちゃんが屈んで見ていたバジリスクが目を覚ます。


「っ!?あれ、確かに…陛下ちゃんに近い瞳ね?」


 最初は石化を警戒していたが、他の個体と違うことにすぐに気付くムーちゃん。


「だろ?…え、今なんて?俺に近い瞳…だと?」


 今の発言には驚いた。


 気になるので、近づくが…


 顔を逸らされた。


 やっぱ恐ろしい顔してるのか、俺。


 だが、なぜだろう…


 俺は何となくとある言葉を投げかけた。


「どうしたんだい、お嬢さん?」


 バッ!っと音がするほど驚きながら俺の顔を凝視する、バジリスク。


 瞳の奥に知性を感じた。


 すると、口の開閉を繰り返し…


 気絶した!


 ナニソレ!


 だが、この個体は確実に何かあるぞ?


「なあ、この子…。俺を知っているようだ。」

「なら、なぜ気絶を?」

「多分だが…元人間なのかもしれない。」

「「「「「「な、なんと!」」」」」」


 みんな驚くよね。


「元人間で、俺を知っているがゆえに…バジリスクの姿であることが耐えられなかった。…のだと考える。」


 なんだなんだその視線は!俺の頭がおかしいのか?


「…まあ、世の中広いわ。陛下ちゃんがドコからやってきたのか知らない身としては、コレばかりはさすがにね。」


 異世界からです。などとは流石に理解できんだろうか。


「で、だ、なんなら俺が預かるが?その無害なバジリスク。」

「だーめ。この子は、娘の…ペットよ!」


 どうやら飼うことを決めたようだ。


 だが、複雑である。


 もしも元人間なら…耐えれるか?堪えられるのか?


「もー、陛下ちゃんの言う通りなら…ちゃんとした食事ぐらい用意するわよ?」

「ならありがたい。意思疎通の仕方があればいいのだが…まあ、あるにはあるか。」

「それは?」

「さっき、俺の言葉に反応しただろう?それを利用してだな、首を縦で『はい』、横に振れば『いいえ』でできそうな質問をするのさ。」

「なるほどー。それは確かに、この大量のバジリスクについても少し分かるかも。でも、この穴の下が気になるわね…。調査隊をお願いすべきよね。あー何か起きそうとは思ってたけどここまでとは…まだなにか起きそう?ねえ、陛下ちゃん。」


 おいおい、その発言は起きてほしいということかね?




















 紐とか荷車も無く、さてどうしたものかと思いながらも俺が運ぶか…とか、走ってそこまでかからなかったから往復するかとか絶賛考え中である。


「ねえ」

「なあ」

「陛下ちゃんからどうぞ?」

「そうか?なら、このバジリスクどうする?俺が運ぶか?そこまで時間かからなかったからさ。」

「そこよ、アタシが聞きたいのは。あの速度は異常よ?」


 それはアレかね…俺がおかしいということ?と自分の顔を指差した。


 すると、無言で頷かれた。


「魔王だからさ!」

「…都合のいい言葉ね。」


 呆れられた。


「回復魔法だけでなく、バス将軍ちゃんの『カトブレパスの大盾』すらへし曲げちゃうんですもの。そして、速さも多分だけどシンフォニアでは一二を争うわよ?」


 俺はえー!でも、俺のその速さに近いもしくはそれ以上がいるんだね。


「すごい…陛下…。」


 リュート君から熱っぽい眼差しを受けた。


 だが、悪い気がしなかったのだけはここに記す。




 ふと、地面の小石が揺れていることに気づく…


 辺りを見回す。


 川の向こう岸で俺の視線は止まった。


「なあ、ムーちゃん。」

「なあに?陛下ちゃん。」

「俺が魔物図鑑で見たカトブレパスに似てる生き物が視界に見えるのだが。気のせいか?」

「そうねー、こんな偶然あるのね。あははは…ねえ、子ども達の安全を…」


 笑った後すぐに真面目な顔になる。


 流石将軍。


 俺とは違うぜ!


「なー、ばせっと。どうしたー。」

「え、あああ、あ、あれは大型ですよ?それも、聞いてたより大きいです。それに比べ、あたちたちは武器が…あたちの杖ではまずアレにダメージを与えれるほどの魔法は…。」


 あたふたするが…それほどなのか?大型とやらは…


「まあ、普通は教官は見かけたら逃げろって説明するようにってあるわね。」


 へーそうか。


 ふーむ。


「陛下は動じないのね。将軍様も…それに比べてバセットはお子様よね~」


 ライアちゃん嬉しそうだぞ?


「お子様で構いません!」


 だが、こうも落ち着いてはいられないな…何かを追いかけているようだ。


 少しずつわかってきたぞ!


「ネコだ!」

「へいか。アレは獣人さんだよ~。」


 バルちゃんに指摘された。


「今までの獣人さんたちはあんな姿してなかったぞ?ここにいるバセットさんもガル少年も獣人だろう?」


 そうだな、尻尾は個人差があるようだが…耳くらいしか特徴がないきが…。


「陛下ちゃん。アレは身体強化のうちでも獣化するタイプよ。鬼化は知ってるわよね?それの、獣人が獣(祖)の力に近づくための能力よ。」


 なるほどなあ。なら、ここにいる子たちも毛深くなるんだね。


「あのーそれなりに鍛練が必要ですからね?」


 バセットさんは俺の視線に気付き、そう答えた。


「陛下…オレの目にも見えたけど…誰か負ぶってて、更に隣のやつを支えているぜ?スゴイよ…」


 ああ、その通りだな。


 どうやら追いかけられている相手も俺たちに気付く…が、俺やムーちゃんのそばに居る子ども達を見ると…頷き…進行方向を変えた。


 ああ、性別は分からんが…漢なのはわかった。


 助けを呼ぶことすらせず…囮(時間稼ぎ)になることを選んだのだ。


 俺なら…向こう岸まで跳べるな。うん。




 キミのような存在は、もっと長生きすべきだ。


 それを邪魔するモノが居るのならば…俺は拳をふるおう。



 ごうっと言う音と共に身体が軽くなったような気がした。


「覇気を纏う…。」

「コレがデスか?あたちには…凄すぎて何が何だか…。」

「おらも…いたってみせる!」


 流石だな…ガル少年。


 その向上心、嫌いじゃない。


 むしろ好ましい!


「へいか、晩御飯には帰ってくるんだよ?」


 これは心配してくれているでいいのかな?


「なに、すぐに帰ってくるさ。」


 俺は気さくに返事を返した。


 そして、子ども達から距離をとり…


 跳んだ。


「「「ナニソレスゴイ!」」」


















 向こう岸に着地。


 すぐさま視界に捉える。


 そして駆けた。



 カトブレパスは俺に気付き、目が合う。


 だが、やはりと言うべきか…


 邪視とやらは効かなかった!


 俺は拳を握ると跳び、引きずるようにしている頭部に…


「シールドブレイク・改!」


 スキルを叩き込んだ!


 え?なぜシールドブレイク?


 いや、だって…ムーちゃんがカトブレパスの大盾って…


 …まあ、いいじゃないか!


 いや、頭が爆ぜちゃったからあまりよくない?


 俺は苦笑い気味に振り返る。


 すると…


「おうい、倒せちゃうの!?」


 ネコ君のようだな…うむ。


 それにしても、イイ声だな。



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