新しい魔王は勇者様?
いや、兵器ってそりゃないでしょ。
「大げさなことではないわ。実は、その勇者が魔王や魔族を殺すのは王族のかける隷属魔法の所為なのよ。」
あ、カエルも隷属魔法を~って言っていたな。それじゃあ、本来の勇者は魔族を襲うようなことはまずないわけだ。
「それじゃあ、俺は大丈夫なのか?」
「そうでもないわね、戦闘狂や殺戮者だったら、何をしでかすことやら。」
そんな恐ろしいやつらと一緒しないでほしいな。
「でもね、トライオス。アナタがどんな人間なのかを知らない私たちからすれば恐怖の存在よ?」
そんな言葉をかけつつ、腕を組み、胸を強調してくるヴィオリーンよ、強かだな…
「タケル…。タケルはそんなひどいやつじゃないよね?ボクたちに回復魔法をつかってくれたし、リーンのことも大事そうにしていたじゃないか?見ず知らずの赤の他人が倒れただけで必死になるような男だ。ボクを幸せにしてくれるはずだ!」
へ?いや、確かにそうだが…さり気なく「ボクを幸せ…」て付け足さなかったか?
「トライオス陛下…。」
な、何だその眼差しは!お、恐ろしい子!レベック。
カエルの魔王が言っていた言葉を思いだす。隷属の術式を背に描くだったか…
そうだよな、俺自身それが描かれていたら今頃やばかったかもな。
アレの駒で過ごすとかどんな罰ゲームより恐ろしい!!ん?まてよ…
「なあ、そんなに心配なら…魔王の間にある魔法陣とやらで確認してみるか?」
お!?今エルフ耳が反応したぞ!ついでにネコミミも…後、強調され続けている胸も跳ねた。
「そうね、そうよね。私自ら見届けてあげるわ。」
「ボクも、知りたいね。」
「じ、自分がついていってもよろしいので?」
いや、今更だろう?今までずっと参加していたのにのけ者はやだろう。
「それじゃあ、行こうか♪あ、ボクは閉じまりするから最後に出るよ。」
そういわれたので、ヴィオリーン、俺、レベックと部屋から出る。すると、先ほどの鎧三人組が廊下で敬礼していた。
「陛下、もし勇者であろうとも、魔族の国を…どうか、どうかよろしくお願いします。」
「私目には難しいことは分かりません。ですが、民の事を…」
「我らはアナタ様の兵です。異世界と言われ、分からないことも多くあるでしょうが、その時はどうか、一声かけてください。応えられる範囲でご期待に沿えるよう尽力いたします。」
最初の男は背がとても高く、次の男は少し低めだ、最後の彼は俺と同じくらいの背丈で声がハンサムな印象を受ける。
「ああ、急なことで困るようなこともあるかもしれない。だが、民のためにできることはするつもりだ。ありがとう。」
俺は彼らの言葉に感謝を込めて頭を下げた。これくらいしか今はできないが、より良い国になったらいいな。俺だけの力じゃ無理だろうが…
「安心なさい!私がついてます。下手なことはさせません!」
「そうだよ~ボクが側に居てあげるからね?トライオス陛下は大丈夫さ!」
なんだろうか、リーナの言葉だけなんか引っかかるな。あれか?家庭教師とかお付きで居るつもりかな?研究職として大丈夫なのか?
「フフフ…外堀からさっ!」
今リーナが何か小声で言わなかったか?…気になるな。
「では、われわれは失礼します。レベック、陛下のお付き頼んだぞ。見回りはこちらでするから気にするな。では、いくぞ。」
「「失礼します。」」
ちなみに、今は兜を被りなおしている。そして、今の言葉に敬礼で答えていた。まあ、仕事中だから兜を付けているのか?
「それじゃあ、行きましょうか。」
「「ロック」ああ、今鍵をかけたから大丈夫さ。念のためってやつだ。」
駆けていったから気に留めていなかったが、この光っているのは松明とかじゃないんだな。光る石ころが詰めてある。
「それはね、魔光石と魔石が詰めてあるんだよ。光の強さも調節ができる優れものさ!昔は松明を利用してたらしいけど、今ではどこの国でも似たようなものさ。」
「というと、人間国や魔族国以外にもいくつかあるんだな?」
「そうだね~ボクが知っているだけでもこの大陸にはかなりなもんさ。王がいて、国と主張する所が10ヶ所くらいかな…。後は遊牧民や森の中から出ない部族、少数部族なんかもあわせたら100じゃ足りないよ。」
は~色々あるもんだな。
「他の国との戦争とかはないのか?」
「いい質問だね。答えはNOだよ。今のところだけどね。ノータッチや、交易をしてくれるところ、共同開発なんかや、まあ国ごとにさまざまだね。」
「そんなんで戦争が起こったら?」
「助けてくれるかどうかは分からないね。ほとんどの国は無視かな。まあ、自国に火の粉が降りかからないための仕方ないことだろうけど。」
ですよね~。国同士強い絆を作ったり連合国的なものを目指せば可能か?
「トライオス、その話はまた詳しくしリーナとしてなさい。私は勉強したくないわ、頭が痛くなっちゃう。」
まてよ、これが勉強って…どうやって国を支えるつもりでいたんだこのお嬢さん。
「諦めるべきだよ。リーンはこういう子だからね。そのための協力者って言っただろう?それに、ボクとしてもタケルと2人っきりで深く話し込みたいからちょうどいいさ♪」
「じ、自分はあまり頭が良くないので…申し訳ありません。」
「いや、別に謝らなくていいから。頭上げてくれよレベック。」
話しながら移動していると、俺が召喚された部屋の前に着く。そして、ヴィオリーンが扉を開くと…
『許さんぞおおお~』
半透明で足の消えてる『元魔王が襲ってきた!』
ゴスッ!
<ゆうしゃ は まおうのぼうれい を たおした!>
<レベルがアップしました。>
<最大HPが上がった。>
<最大MPが上がった。>
<攻撃力は上がりませんでした。なぜでしょうか?>
<防御力が上がった。>
<素早さが上がった。>
「凄い執念だったね。でも、タケル。ゴーストに物理が効いていいのかい?」
いや、俺に聞かないで欲しいんだが。ヴィオリーンが危ないと思ってとっさに拳を出したら殴れた。そして、消えてしまった。
それにしても、攻撃力がどうしたんだ?<なぜでしょうか?>って言われても知らないんだが。
「私としては何が何だか…でも、ありがとうトライオス。」
「無事で何よりだよ。」
俺がそう応えるとそっぽを向いてしまった。
「む。その魔法陣とやらの上にボクのアイテムが…」
そうだったな…試しに使ってみるか。
「レジストフィールド!」
その声と共に魔王の間が白い光に塗りつぶされた…