地鶏の炭火焼に近そうで・・・
メイド長が扉を開く。
それに頭を下げながら入室した。
俺の両サイドを見て、ムーちゃん苦笑い。
そのそばには、背の小さい…酔っ払いが視界に入る。
ラーベルさんは朝同様幸せそうである。
それと…
トカゲ男!赤バージョン!緑バージョン!
『おい、おぬしはバカか?竜人じゃぞ?』
おいおい、俺に異世界…いや、この世界の事をあまりだな…
『わかっておる。だが、トカゲ男はないじゃろうに…。それに、バージョンという呼びかたがな…』
昔、ゲームでだな…
レッドとグリーンがあったのだよ。うむ。
『ゲーム?ボードゲームか。それとも、カードゲームの名称か?』
ボードゲームといえば将棋にチェス、ダイヤモンドゲーム…囲碁は残念ながら遊び方を知らん。
あ、双六なんかもあったか!
カードゲームってことはトランプか。
『そうじゃの、トランプじゃな…。ボードゲームもトライのイメージに近いものがそろっとるよ。今度いや今夜でもいいが…勝負するかぇ?』
ほほう…先生は強そうだな…。
…ん?
ちょっと失礼。
「?どうしたのトライオス。」
「いや、ポケットの中に入れてる…っとこれこれ…振動だけでなく光ってるぞ?」
振動しながら赤く点滅するそれは…バルちゃんが朝方わざわざもって来てくれたものだ。
やな汗が頬を伝う。
「なあ、トライ。コレは誰から…」
「バルちゃんだ。」
「っ!…不味い可能性がある。バル子はどこへ?」
「昼からは友達と遊ぶと…」
不味い可能性…。
「先生。トライオス…。バルちゃんになにか悪いことが…。」
不安に揺れる瞳で点滅する石を見るヴィオリーン。
「うむ…そうなる。」
眉をひそめて唸る先生。
「おいおいおい…この国の子ども達は危険と隣りあわせなのか?」
俺はそう呟いた。
その言葉に…
「どこであろうと何か起こるものじゃ。絶対的な安全などとは無理じゃからな。」
確かに…
<タケルさん。反応を拾いました。>
なに!?バルちゃんのか?
<はい。どうやら、タケルさんの角をお持ちのようで…それを、探知しました。>
<今、窓が見えますよね?>
ああ、斜め向かいに見えるな。
<お急ぎでしたら…そこから行くのがベストです。>
俺に跳べと?
<可能では?勇者様。>
確かに俺は、丈夫だ…アルト的にはいけるわけだな?
<はい。保障します。>
<それどころか、力の入れ具合では…地面が割れます。いえ、爆ぜます。>
ちょ、怖いよ。そのまま埋まりそうで…。
土葬だ土葬!
っと、ローブ引っ掛けたら不味いよな…。
仕方ない、またもっといてもらうしかないか。
てか、未だにシャツすらないのがな…
渋々といった感じで俺はローブを脱ぐ。
熱視線ががが…いっぱい!
おいおい、赤竜人さんよ~そんな目で見るなや。
ムーちゃん。よだれ垂れてるし。
まあ、先生もだが…
「リーン。またお願いするよ。先生、会議のほう…お願いしますね?」
「ひゃっひゃい!えへへ~トライオスの匂い~♪」
「ぐぬぬ…そこは我に纏わすべきじゃろうに。まあよい、行ってまいれ。」
先生じゃローブ引きずるから厳しいだろうに…満月の姿なら様になるだろうがね。
さてと、行きますかね!
俺は、窓に向けて駆けだし、枠に足をかけると…跳んだ。
アルトの指示に従い城下町を駆け抜ける。
かなり速いようだな…俺。
<それはステータスがモノを言いますからね。>
<子どもに大の大人も負けることがあります。>
<見た目じゃほんとわからないものですよねー。>
なんだ?俺の見た目に問題が?
<いえ、そのお姿で『お肉ー』じゃなくて『野菜~』な所とか。>
おうい、今このタイミングでかよ…。
野菜の素晴らしさを語ろうか?
<その時は、オフにして耳を塞いでおきます。>
ぐぬぬう。まあいいさ。
子ども達に伝えればいいのさ!うん。
さあ、急ごうか!
<はい。にしても…国の外に出るのは初めてですね。>
おや、確かに。
今、門番の横を通り過ぎたな。
それも、気付いた頃にはなぜか後ろを振り返るという行動に…
やべー俺はえー。
ぬ…。
あそこか!
バルちゃんを含めて5人。
その近くには…コモドオオトカゲにエリマキトカゲを足したような見た目の…
<おっきなトカゲ!>
じゃなくてだな…。
<ぶー!>
ちょ、ねえ、子ども達ピンチなんですよ?
<ふんっ、勇者様ならまにあうでしょうに…。>
なんか不機嫌だな…。
<いえ、野菜、野菜と言っておきながら、あの魔物の姿を見て『お肉ー』をタケルさんがイメージしたので…ちょっと不機嫌です。>
ごめんよ。
仕方ないじゃないか。図鑑の説明で…おいしそうだったんだから。
バジリスクの炭火焼…。
レモンとかあったらアクセントになりそうだな。
地鶏の炭火焼に近そうで…
あ~なら、ゆずこしょうも欲しくなるよな~
<ううう~イメージがダイレクトに!>
<わぁー鉄板に山盛りで♪その上からレモンを!>
<…じゅるり。>
っと、いかんいかん。
ウサミミさんがスゴイ涙目で見てるが…動かないぞ?
<あー、それは書いてあったと思いますが、石化状態です。>
なるほど。石化と言っても、硬直状態と言ったところかね。
体の自由が利かなくなると。
くそっ、バジリスクは俺の到着は待ってくれないようだな!
子どものうちの一人に狙いを定めて複数で駆け出しやがった!
<ジャンプ!そう、ジャンプです!>
とどくかね?だが、跳ぶ!
そして、一番近かったヤツの頭を踏み抜いた。
頭を確実に落とし、石化対策し、首から下は…お肉だ!
トカゲなんかはやっぱ鳥に近いらしいからな…
おっと、さっきの炭火焼を思い出してしまう。
焼肉専門の店とかあれば頼みたいな…
そう思いながらも屠る屠る。
子ども達ピンチだったのに俺なんて事考えてるんだろうと…
見える範囲ではもう動くやつはいなさそうだな…
ああ、たいりょうだ!
おなかをすかせた者達に分けてあげよう。
でも、運ぶのがな~
いや、まずは…
「無事か?いや、まあ…怪我してたり、痛い所があったら言ってくれよ?」
安否確認だよね?