会議は?
先ほど目を覚まし、軽く果物だけ頂いたアタシ。
そう、ムーちゃん!
まあ、魔軍将ツィンバロム~なんて呼ばれてるわね。
今部屋に集まってる参加者は…
バス将軍ちゃんの代わりのラーベルちゃん!
そして、妖精族のトロンボ将軍ちゃん!
後~アレは…最近になってお肉屋を始めた兄弟!
今回は陛下ちゃんと魔軍将で~ってことだったんだけど…
門番とメイドちゃん達に頭下げて回ったらしくて…
仕方なくよね…。
どうしても陛下ちゃんにお礼を言いたいって。
「兄者。もうすぐ陛下が…。」
「弟者。ああ、わが腰の痛みを取り除いてくださった陛下に…。」
仰々しいわね。
まあ、普通の商人なら渋々ながらも門前払いでしょうが…
この二人、竜人なのよね。
それも、城下町の覇気使いのうちの2人。
兄弟そろって覇気が扱えるから、もしも逆鱗にでも触れてメイドちゃん達が怪我したら大変ですものね。
城にさえ入ればそれこそ魔軍将の中でも覇気の扱えるトロンボ将軍ちゃんがいるから対処できるし。
それでも厳しいという時は、陛下ちゃんに頼むしかないものね。
その陛下ちゃんにご用だから、穏便に済みそうだわ。
にしても…
「ねえ、トロンボ将軍ちゃん。なんで、こんな時間にお酒?」
自棄酒かしら?
あー確か、バグパス様が恩人だったわね…。
だからかしら…。
「べつにいーじゃねーかよ!おりぇがしゃけにょもーがよー!ケッ!あの小娘があたらしーまおーだりょ?だれだってさけくりぇーのみたくなりゅさ!」
え?ちょっと待って…これは本気で言ってるのかしら?
「兄者よ。あの将軍と呼ばれた小僧、やはり昼間から酒を…。」
「弟者よ。あれは小僧などではない。酒に逃げるただのオヤジだ。」
どっちも痛々しい発言ね。
「あ?おれになんか用か?トカゲ×2」
はー喧嘩腰ね~。
「ふ、ふふふ…バスさんの子どもっ♪バスさんの子どもっ♪でっきるっかな~♪」
会議室の一角。
そこには、お花畑が見えた!
その光景を見たトロンボ将軍ちゃんはなんとも言えない表情になり、椅子に深く腰掛けると…
酒に逃げた。
「くそう。なんで部下のやつらばっか祝福せにゃならん…。あー、アコーちゃ~ん。おれと結婚してくれねーかなぁ…。」
遠くを見ながらほざいてるわね。
呆れちゃうわ。
城の一室に引き篭もってる(自称:城内警備な)くせに。
ほんとにイザって時しか働かないのよね。
種族特性とはいえ、流石にどうかと思うわ。
それにしても、先ほどの発言…。
「ねえ、トロンボ将軍ちゃんは昨日は?」
「あ?そりゃー二日酔いだったんだけどさ、急に気分がよくなったからまた飲んじまってよ~。気付いたら、日付変わってたぜ!ぎゃはははっ!!!」
あ?
陛下ちゃんの回復魔法で二日酔いもよくなるのね。
でも、そこからまたお酒だなんて…
バス将軍ちゃんは兵達と駆け回り、このアタシだって借り出されて…。
夜は気分がよかったから徹夜してまで書類整理してたのに…。
うぐぐぐ…陛下ちゃんに癒してもらいたい!
わりと切実!
てことは、トロンボ将軍ちゃんは色々と知らない?
コレは不味いわよ…。
ヴィオリーン姫ちゃんが魔王だと勘違いしてる…。
「なあ、兄者。このようなヤツを将に置くより、兄者が将になったほうがよいのでは?」
「うぬ、弟者。確かに腰はよくはなった。陛下に恩を少しでも返したいのも事実。だが…」
お兄ちゃんのほうは冷静よね。色は赤なのに…
弟ちゃんは自然な緑色のわりにはさっきから好戦的というかなんと言いますか…うざい。
もっと周りを見る目を鍛えるべきよね。
「ならば、このキン兄弟が弟、テツ。この、小僧を!」
「よせ、キン兄弟が兄、モク。そのようなことは望まぬ。陛下もそれは望まぬだろう。この場は話し合いの場。冷静になれ。」
騒がしいわね…。
「おいおい、そのてーどじゃあ将にはなれんさ。席は埋まってるんでな、部隊長でも目指すんだな!それか、小娘の親衛隊にでもなるんだなっ!ぎゃははっ!!!」
腹を抱えて笑うなんて…
それも、わざわざ挑発してまで。
酔ってるわね。自分自身にも、酒にも。
はー、陛下ちゃんまだかしら…。
「ふふふー。男の子かなー♪女の子かなー♪そ・れ・と・も、ツィンバロムさんみたいに両性具有かしら♪」
あー、頭が痛いわ。
複数の足音が聞こえる。
やっとかしらね…。
「あ?小娘が着たか。なら、びびらせてやるぜ!」
そう言うと、覇気を纏うトロンボ将軍ちゃん。
その覇気の濃さに強気だった弟ちゃんが黙り込む。
あら、お兄ちゃんのほうは眉をひそめるだけなのね?
あれれ~でも~アタシ~なんとも無いわ~
ラーベルちゃんは元より気にしない方だけど…
うーん。
あ、そうよ…もっと、強くて、スゴイのを朝…
その答えに行き着いたとき…
『なあ、酒臭くないか?』
怒気を少しはらんだその言葉に、部屋を侵食していた覇気は霧散。
代わりに、扉ごしでもこのひりつくような覇気。さすがよね、陛下ちゃん。
アタシは苦笑いだが…。
「ふ、ふふひっひっひー!!!な、なななななんだよ!バケモノがががが!うひーひィいいいい!!!」
絶賛、混乱中。
勝気な態度はいっぺん。
覇気に負け、恐怖に身をよじる。
「兄者。殺されるのか…なあ、われ達の物語はここまでか?」
「弟者よ。あれは…王だ。わが前に顕れし、絶対ナル王だ。」
弟ちゃんは絶望し、お兄ちゃんは悟る。
「あら、あら、陛下はお酒の臭いが苦手なのかしら?」
ラーベルちゃんは、いたって普通なご意見よね。
「はああああぁ…トロンボ将軍ちゃん。それに、キン×2ちゃん。陛下よ。礼儀正しくなさいな?」
息を呑む三人。
「なあおい、小娘じゃ?」
「何を言っておるのだ小さき将よ。かの御仁を知らぬと?」
「兄者。やはり、兄者が将を…。」
少しは静かになさいよね。
機嫌が悪いのかもしれないのよ?
バス将軍ちゃんの大盾すらへし曲げるパンチされたらどうするつもりよ?
ミンチよミンチ!お肉屋がミンチよ!
「陛下ちゃんが入室するんだから、黙ってなさいな。」
そして、陛下ちゃんが…
ちょっと、ここ会議の場よ?
両手に華とかずるいじゃな!
ん?その華二人の手を振りほどくと…
アレは、信号石?
それも、赤の点滅…
アタシの背を嫌な汗が流れた。
その点滅をヴィオリラ様に確認すると、会議室の窓を凝視して…
ローブを脱ぐと、ヴィオリーン姫ちゃんに纏わせた。
なにそれ、カッコイイ!
てか、イイ体つきよね…じゅる…え?
駆け出したかと思うと、そのまま窓に足をかけ、飛び出した。
あ…え…会議は?
てか、3階よ。ここ…。