いざ、会議へ
俺の膝から降りると駆け出し、そのまま部屋から退場したヴィオリーン姫。
おなかでも悪くしたのか?
でも、ちゃんと手を拭いてからサンドイッチを食べさせたのだが…
まさか、もよおしたのかね?
「姫様…。」
「あちゃー。我は夜に盛るから問題ないがのう…。リーンはサキュバス。仕方がないと言うことかのう。」
種族によるものなのか。
少しして戻ってきたヴィオリーンの頬はなぜか真っ赤で、艶々していた。
「ごめんなさいね。でも、スッキリしてきたから大丈夫よ!」
ああ、トイレだったんだね。
そして、定位置に戻った。
そう、俺の膝の上に…
「それで、会議のほうは何人くらい参加するんだ?」
俺はそのタイミングで聞くことにしたのだが…
「ごめんよ。ボクにはちょっとわからないかな。」
「我に訊くな。」
「私は会議って苦手なのよねー。」
「申し訳ありません。他のものなら存じているかもしれませんが…。」
おおう、そうか。
参ったな。これなら、ムーちゃんに聞いておくべきだった。
「多分ですが…将軍方ぐらいでしょうかね?初会議でしょうから。」
商人とか町のお偉いさんは無しか。
となると、魔軍将は…一人旅に出てるらしいから4人。
で、バス将軍がハッスルしたから代わりにラーベルさんだろう…
ムーちゃん。
残りが二人か…
曲者かね~。
「じゃが、アヤツは遠征じゃろう?それと、もう何年も帰ってこんやつがおるではないか?それで会議とは…ちと、物足りなくないかのう?」
一人遠征に出てるのか。それと、何年も帰ってきてない将軍ね。
ふむ…確かに少ない。
将軍、あと一人しかいないじゃないか。
「エレクト様ですね。確かに、少数をしたがえて近辺の魔物の調査と討伐に…遠征というほどの距離は今回は無かったかと。ですので、早めに帰還するとは思います。」
エレクト様ね。ふうむ、調査と討伐か…問題なければいいがね。
「そうか、じゃが…うーむ、せっかくじゃ。我も参加してやろうではないか!無論、トライのお膝の上でな!」キリッ!
俺のお膝の上でですか…。
会議の邪魔にならなければいいがね。
「し、仕方ないわね。私も…」
「途中で眠らない?」
「うぐ…。」
ヴィオリーンも参加を希望したようだが、リーナの一言に押し黙る。
しかし、姫は諦めなかった!
「へ、平気よ!トライオスに、おててを握っといてもらうんだから!」
興奮しながらそう叫んだ!
俺の手を握っとくのかよ!
「「な、なんだって!!!」」
「まあ、姫様大胆!」
驚く女性達。
「ぐぬぬぬ…我もおててニギニギがよいかのう…これは迷うぞ!」
迷わなくていいのですが…。
家族で何か観に行くのと勘違いしてません?
国の今後を話し合う場じゃないのですか?
それとも、このノリこそが必要なのか?
これが異世界の普通ですか?
教えて!アルトさん。
<いーなー。いーなー。>
<『あーん』も憧れるけど…おててニギニギもすてがた…あ、これ聞こえちゃってます?>
はい。よく聞こえてます。
<では、聞こえなかったことにしといてください。>
<こんな幸せな会話なんて普通できるものじゃないですよ?>
<恵まれている国なんですね。シンフォニアは…>
ふうむ。恵まれているでいいのかコレ…。
食後もわいわいと会話をして、トイレも済ませた後…
いよいよ会議か…。
「ふふっ…子供連れって感じですね。」
言うな。メイド長。
両サイドの二人が俺の手を握る力を強めながら不機嫌に口を尖らせてる!
「へーん。我はもう慣れた!トライとおててつなげれるのじゃ。気にはならん…。」
ならすねないでくださいな。
「わ、私は…この手の感触を味わえるから、いーもーん。えへへ…♪」
握った俺の手を持ち上げると頬ずりしだした。
無論、手袋つきの右手である。
先生は左手な。
…だが、ふと思う。
仮面にローブ姿の男が少女と幼女を連れ歩く…。
ダメじゃないか!
「あら、陛下。ダメですよ?外見の違いは仕方ないのですから。特に、ハーフリングやゴブリンの皆さんは成人なされても背丈が低いですし。ドワーフの方々も一握りを除いては背が皆低いのですから。姫様も成人なされてますし、ヴィオリラ様に関してはお分かりですよね?」
おおう、それは確かに。
見た目で判断するなということだな。
てか、この国では何歳から成人か知らんよ…。
とりあえず19歳はすでに成人なのは理解したがね。
「すまないメイド長。肝に銘じておくよ。」
俺が苦笑い気味に言うと…
「ええ、将軍の残りひとかたは、妖精族の方なのですが…通常時は背が低いので、失礼があるといけませんからね。」
やっぱり、俺の考え筒抜けか?
それとも、メイド長の気配りの賜物?
通常時は背が低いというのは引っ掛かりを覚えるが…
先生の事があるから、そこまで気にするべきことではないだろう。
「将軍の中では一番の古参だからね…。」
「古株ね。それは失礼がないようにしないとな。」
羨ましそうにしながらもおしえてくれたリーナの言葉に答える。
気難しいほうで無ければいいのだが…
「それじゃ、行きましょう?トライオス陛下。」
くいっくいっと催促する姫様に引っ張られながらリーナの部屋を後にする。
「ボクの分まで頼んだよ~。」
閉まる扉の隙間からリーナの声がした。
ああ、キミのために森へ行こう。
蜜交渉を!
『おい、トライ。そんな馬鹿げた発言はするなよ?』
左手を握る先生から釘を刺された。
その視線も鋭い。
「?どうしたの、トライオス?」
「いや、俺の考えが先生的には没らしくてな…。」
右手を握るヴィオリーンに心配されてしまった。
メイド長の案内に従い、目的の部屋の扉の前へと辿り着く。
俺の右手を握る力が強くなるのを感じたが…
それよりも今俺が一番に思うことは…
「なあ、酒臭くないか?」
そう。臭いのだ。
ちょっと、ムッとなってしまった。