なんとかなるものね。
悔しそうなヴィオリラ先生と、お姫様オーラを出すヴィオリーン。
そして、苦笑い気味な俺、タケル!
「ぐぬぬ…確かに。お子様なおぬしはすぐに寝るのう。夜はオトナな時間じゃからな…。」
そう言いながら胸を張る先生。
「どうとでも言ってくださいな?今は、私とトライオスの時間です。」
しかし、動じない姫様。
「じゃが、せめて、せめてナデナデしておくれ!トライ!」
妥協?いや、魂の叫びだ。
それくらいならと、俺は手招きをする。
すると先生は、ぱあああぁっと華が咲くような笑顔をみせた。
いや、見た目が幼女だからって…それでいいのか先生よ。
とてとてと近づくとそのまま後ろに回りこみ…
なぜ、登るのだよ?
「むふー♪」
そして、満足そうである。
いや、ナデナデじゃなかったのですか?
「よし、摑まっといてやるからのう。今のうちに我の頭を撫でるのじゃ!」
仕方ないので後ろ手にナデナデ。
ヴィオリーンがローブを引っ張るのでもう片方の手でナデナデ…
ナデナデナデナデ…
禿げるんじゃないか?
いや、まあそこまで強くは撫でてはいないが…
いつまで撫でればいいのかがわからん。
「ヴィオリラ様、そろそろよろしいのでは?」
「ふ、ふっーん。そう言うリーンが先に終いにすればよいじゃろう。」
「(あ、名前で呼んでくれた♪)」
「「?」」
何か小声で言ったようだ。
俺も、そして先生も疑問符を浮かべる。
「いえ、なんとかなるものね。」
「何がとは聞かないよ。その幸せそうな表情を見れば何となくわかる。」
多分、今まで先生との機会がなかったのだろう。
それに、小娘呼ばわりではなく、リーンと…
その呼び方が嬉しかったのかもしれない。
「あらそう?トライオスみたいに表情に出るほうではないのだけれども…。」
俺はわかりやすいのかよ…。
「ヴィオリラ様。」
「先生。」
「?」
「先生と呼ばぬか。」
「は、はい。先生。」
ほうほう?
なら俺も…
「先生。」
「トライ、おぬしは様をつけぬか!」
えー。
「ふふっ。先生、トライオスの右膝が空いてますよ?」
そう言いながら左膝にだけ腰を下ろすヴィオリーン。
「おお、そうか。なら、お言葉に甘えさせてもらおうかのう。」
そう言って、一旦下りた後、前に移動し、よじ登ると先生も腰を下ろした。
俺は椅子なんだな。
「これ、撫でぬか!よしとはまだいっとらんぞ!」
「いや、今言ったな。先生はお終いだ。リーンだけ撫でさせてもらうよ。」
「んふふふー♪」
「ぐぬぬぬ。」
唸っていたが、俺の手を両手で握ると自ら頭にのせた。
そして、セルフナデナデ。
なにそれ?
仕方ないのでナデナデを再開する。
「ふーん。両手に華だね、タケル。」
おおう、リーナ。
「まあ、いいさ。ボクはその光景を見れただけで微笑んでしまうくらいだからね。今のうちに甘えておくんだよ、リーン。」
「言われなくてもわかってるわよ。朝からそのことばっかり考えてたんだから。モニカから、リーナとトライオスが~って聞いてからホント大変だったんだからね。」
「うぐ。モニカは口が軽いね。」
「相手が私だからじゃない?そうでもなきゃ無口よ、あの子。」
無口なのか…。
「ほう?先祖返りの子か。アレはオーガじゃろうな。角の生え方からして赤の種じゃのう。」
なんと、モニカの先祖にオーガ…。
なるほど、だから筋肉質で額に二本角だったのかー。
赤鬼ってことでいいのか?
「先生。お聞きしたいことが…私のよだれについてなんですが…。」
よだれ?
その発言にリーナはそっぽを向いた。
「なんじゃ。リーン。もしや、サキュバスだからーとか言い出すでないぞ。そんな効果はないのじゃからな。」
「「え!?」」
先生の言葉に驚くヴィオリーンとリーナ。
「え、あ、で、でも…タケルはちょっと熱っぽいとか…。」
リーナのあの時の飲んじゃった発言…。
「それは、嫌味か?トライはおぬしにぞっこんだからじゃろうに…。ずるいのー。」
「それなら、それならあの時のアコーはなんなのよ!?」
何したアコー!!!
「アレは、愛じゃ。」
「「愛!?」」
またもや一緒に驚くヴィオリーンとリーナ。
なにしでかしたんだ、アコー。
「まあ、同性でも愛が芽生える。ただそれだけじゃ。それが、きっかけとなったのだろうな。」
おおう。だからか、アコーの崇拝説。
愛しい相手に王であって欲しかったんだね!
「そ、んな。なら、メイド長のあの発言は!」
誰だメイド長!
『ふ、ふふふっ!私がメイド長だ!」
扉を開けながら入ってきたのは…
イヌミミのついた女性。
奥様って感じを受けるね。
服装はメイド服だが、アコーやモニカとまた違った感じの…って、みんなバラバラなのかな?
「いえ、私は立場上この一番フリフリフリルなメイド服ですが…。アコーのは改造です。胸元がどれもきつくて仕方なくとのことですがね。そして、モニカのが普通のやつです。」
「説明感謝する。メイド長。にしても、俺の思ってることは筒抜けなのか?」
なぜみんな俺から視線を逸らす!
「いえー。仮面をお付けになられてるのに不思議ですよね~。」
不思議で済まされた。
「で、私のよだれがどうして?制御がどうのこうのだったの?」
キッ!と強い視線をメイド長におくるヴィオリーン。
「それはもちろん。ヴィオリラ様と話す機会を作るためと…品行方正をよくするためです!」キリッ!
話す機会のためか…。
「品行方正…。私の何が問題なのよ!」
「「「よだれ。」」」
皆即答。
大丈夫か?姫様よ。
スゴイ心配されてるぞ?
「よだれがすぐに垂れるのはもう仕方ないとして、せめて拭う癖をつけて欲しくてですね…。」
垂れるのは仕方ないのですね、メイド長。
「え、え~。」
なにその嫌がり方…。
「だ、だからって。ボクまで騙してたのかい?先生もグルで…。」
「リーンに甘いからのう。リーナは…。」
「はい。リーナ様は姫様に優しすぎますので…。」
ソファーから少し身を乗り出しながら発言したリーナだったが…
そうか、姫様に優しすぎるのか…。
俺も姉妹みたいな感じを受けたくらいだもんな。
「む、タケルまでうんうんと頷いてるし…。ボクの作戦の一部だったんだよ?リーンのよだれ入りお茶は!」
「え!?私のよだれ飲ませたの!?」
「うん。」
「ああ、とても甘かった。」
「にゃんと!」
顔が真っ赤ですよ、姫様。