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魔物図鑑がお気に入り?

 時より位置を調節しなおすヴィオリーン。


 そのたびに変な声と荒い呼吸をするのだが…


 大丈夫かこの子…。


「にしても、はあはあ…トライオスは魔物図鑑がお気に入り?」


 頬を真っ赤にしながらそんな事を聞いてくる。


 息荒いよ。


「いや、そう言うわけでもないな。気になって開いた本が魔物図鑑だっただけさ。」

「そう?ん、はあぁっあっ!」


 前後運動やめたらどうかね?


 これじゃ俺が何かしてるみたいじゃないか…


「きついなら読むのやめるか?」

「っ!?ふぁああ、耳は、耳もとはずるいわ。」


 ずるいとかいわれてもな。


 囁いただけだろう?


「下りないわよ~。ここは私の特等席なんだからねっ!」


 椅子扱いかよ。


「御爺様との思い出に近いけど、あくまで相手はトライオス、だから私は…私は…うひゅっ!」


 まあ、俺に座る時もそんなこと言ってたがね。


 まさか、お本を読んで~


 なんて言ってくるとは思わなかった。


 そうしないと騒ぐとか言い出したときは特にお子様だなーとつくづく思った。


 だが、行動はえっちー子なヴィオリーン姫。


 プルプルと震えながら一時的に前後運動が止まる。


 そのまま落ち着いてくれればいいのだがね。


 本の中身が頭に入ってこないのだよ。


 これが、サキュバス…


 尻尾の動きに目が行くが…


 どういう原理で動いてるんだ、この尻尾。


 気になるなぁ。



 がしっ!



「ん、ひゃあっ、むっ!?」


 おっと、フリフリしていたから思わず掴んでしまった。


 当の尻尾の持ち主は声を出さないように両手で自身の口を押さえた。


 そして、涙目で俺を見る。


「すまんすまん。どうしても本より気になってな。にしても、敏感なんだな。」


 敏感の言葉にやけに反応したな…


 不思議な手触りだと、ここに記す。


 表現しがたきなんだろうな、これ…。


 そう思いながら、ニギニギする。


 そのたび、腰をくねらせるヴィオリーン。


 面白いな。うん。


「ちょ、ちょっちょ!遊んでない?私の尻尾で…遊んでない?」

「いや、不思議な手触りだから堪能しているんだ。」


 にぎにぎ…


「そ、そう?ひゃっ!?もー、ゼッタイ遊んでるわ。」

「好奇心だ。他意はない。」

「(そこは好奇心以外を持ってると言って欲しかったわ。)」

「え、なんだって?」


 睨まれてしまった。


 仕方ないだろう。不思議なんだから。


 人間は元は尻尾があったという…。


 事実、不要とされている骨がある。


 お尻のところに…えっと、なんだったかな?


 何とか骨だったよなー。


「ねえ、そろそろ堪能したでしょう?本読んでよ。ねえ、トライオスってばー。」

「そうだなー。変な動きをせず、ちゃんと落ち着いて聞くならな。」


 そう、そこなのだよ。


 読んであげたくても、集中できんのだよ。


 変な声と俺のテントにこすり付けるお尻の所為で!


 時たまとてつもなく柔らかい部分も当たるし、まあ大事な部分だよなアレは…。


「(こ、これが調教!!!)」

「なんか物騒なこと言わなかったか?」

「少しずつトライオスの好みに調教されていくのね!」


 なぬっ!?


 そして、思わず尻尾を引っ張ってしまう。


「うひゃんっ!」

「す、すまん。変なこと言うから驚いてしまった。調教とは誰の入れ知恵だ?」

「う、うう~。これがオシオキ!!!」


 ピンクだ!ピンク姫だ!


「はあはあ…私はアナタなんかに屈したりしない!」キリリッ!


 どこで憶えたそのフレーズ。


 心配になるな…。


 いろんな意味で。


 これでトライオスには勝てなかったなどと言われたら…


 俺が変態さん見たいじゃないか。


「ねえ~、おしまい?おしまいかしら?なら、本読んでー。」


 マイペースだね。


「リーンは魔物図鑑がお気に入りなのか?」

「全然。」


 おうい、即答だな。


 ただこの時間が好きなのかね。


 多分、読んでもらう本の中身より、誰かが自分のために読んでくれることが好きなんだろう。


 一緒にいられる時間が何よりも宝物だったのだろう。


 独りだったらしいからな。


 そう思うと…


 俺は無言でヴィオリーンの頭に手をやり


 優しく、優しく撫でた。


「んひゅっ!?んにゃっ!えへ、えへへ~♪」


 初めのころは嬉しそうな声が聞こえたが、だんだんと静かになり…



「トライオス、ありがと。」


 そう呟いた。


「私、お気に入りになりそうだわ。魔物図鑑。」


 そうかそうか。そのまま…


「そのまま勉強好きになってくれると嬉しいんだがな。」

「ぶー。いじわる。」

「そうでもないぞ?知ることは素晴らしい。知らなかった物事を知ることによって今まで機会がなかった物事でも話す機会が訪れ、些細なことでも会話が増えるんだ。」

「そう?」

「そうだぞ。お兄さんが保証する。好きなことを好きな人とお話したいだろう?」

「お兄さんって、ふ、ふふふっ♪」

「何がおかしい?」

「なーんにも♪」


 嬉しそうにころころと笑いながら俺が纏うローブにスリスリ。


 やっぱりお子様だな。


 俺もつられて微笑んでしまった。







 だが、幸せな時間は急に終わりを告げるもの。


「おうおう!我も魔物図鑑が好きになりそうじゃのう!だから、その特等席を譲ってもらおうかっ!」


 寝ていたはずのヴィオリラ先生が仁王立ちしながら、こちらを恨めしそうに見て、そう発言した。


「いやよ。」


 即答。


「ぐぬぬぬ…。我がリーナと添い寝しているうちに…この泥棒ネコめ!」


 泥棒ネコ…何てこと言い出すんだ。


 どろどろな展開を希望してるのか?


「何を言い出すのですか?トライオスは私たちの大切な王です。泥棒などとは…傲慢な。例え、かのヴィオリラ様とて聞き捨てなりません。」

「この小娘が!」


 うわー。うわー。


 火花見えそうだよ!


「く、くう~!いーなー!いーなー!のう、トライ!我も所望するぞ!」


 先に視線を逸らしたのは…先生だった。


 俺本人に聞くというごく当然な行動に出た!


 平和的な解決を望むのだな!うむ。


 ならいいか。


「まあ、先生。今はお休みの時間でしょう?リーンは先ほど来たばかりです。それに、リーナが寝ていますので、あまり声は荒らげないでくださいね?」


 微笑みながら、優しく俺は答えた。


 残念ながら、今は姫様の時間だ。


 その言葉に悲愴に満ちた表情を浮かべる先生。


 だがそこで声を発したのはヴィオリーン姫だった!


「ヴィオリラ様。アナタ様は夜が過ごしやすいお時間です。それに比べ私は夜が苦手です。それを考えれば、トライオス陛下とのお時間は夜に訪れると、理解できますよね?」


 優しく微笑みながら、まるでお姫様のように先生を窘めた。


 あ、お姫様だったな…。





 


 

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