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お姉さんとお勉強

「あ~ボクも、ボクも少し調子が悪いようだね。うん、調子が悪いみたいだ!さあ!タケル。レジストとヒールをボクにも頼むよ。急いでくれ、それとも焦らしているのかい?イヤらしい男め!」


 期待する眼差しで俺を見上げるリーナが早口にそう告げる。


 確かに少し顔が赤いな、でも、イヤらしい男って言い方はどうかと思うぞ?後、焦らした覚えは全くございません。


「レジスト!」「ヒール!」


 そしてリーナの身体を覆うように淡く光輝いて…


<回復魔法の熟練度が上がった!>

<レジストが LV2 に上がった!>

<ヒールが LV2 に上がった!>

<エリアヒール LV1 を覚えた!>

<レジストフィールド LV1 を覚えた!>


 おやおや、LVが上がったぞ!すごいね。エリアヒールってくらいだから周囲の複数人を一度に回復できるのかな?


 レジストフィールドということは、発動させればその領域内で効果があると考えるべきか。


「ふぁっあっ!気持ちいぃ~♪回復魔法ってこんなんだったっけ?不思議なことに優しさを感じるんだが…」

「俺にはよく分からん。さっきこの世界にきたばかりだからな。魔法のない世界だからなお更だ。」


 俺が言うと、今まで成り行きを見守りつつ、未だに自分の胸に手を添えているヴィオリーンが…


 一生懸命押し上げてアピールしているが誰も見ていなかった動作を止めると何事もなかったかのように話し出した。


「魔王バグパスは人間国それも勇者召喚を行うことができる国が近々勇者を召喚すると考え、その召喚に合わせて発動するオリジナルの魔法陣の研究をしていたんだ。我が国の資金や大事な資材を大量に使用してね。その所為で財政難気味となったんだ。」


 それで、できるかどうかもわからない研究費によって国民が困ったわけか。それだけではないのだろうが不満が積もりに積もって今回の魔王討伐作戦なんだな?


「なぜ、そのバグパス魔王は勇者を召喚すると?」

「…御爺様が亡くなられたからだ。ひと月前に…」


 御爺様というとさっき名前が出ていたな、ヴィオリーンの祖父でバグパスの前の魔王だったか?…て、ひと月しか経っていないのか?


「不思議に思っているようだね?ボクが教えてあげるよ。まず、先々代となる魔王ヴィオロン様はご高齢による心不全。云わば寿命だったのさ。そして、彼の死と共に新たにバグパスが魔王になった。ヴィオロン様の治めていた頃は問題なかったんだけどね。それでも魔物被害…」

「ちょっと待った。魔物被害とは?」


 俺が声をかけると話を中断して聞いてくれる。魔物被害って何だ?


「あ~タケルの世界には魔物もいないのかい?幸せな世界だね…」

「いや、そうでもないぞ。同族同士で戦争だってするし。いがみ合いも、そして孤児や餓死者達も大勢いるような世界だ。ただ、俺が住んでいた国はまだましなほうだっただけさ。」

「この世界でも似たようなもんさ、戦争はなくならない。この話もその勇者召喚の国と関わってくるよ。」


 どこの世界でも似たようなものだね…勇者の国に魔族の国…あまり考えたくはないがそう言うことなのか?


「考え込んでいるところ悪いけど、続きを話すよ。それでね、ボクたち魔族も一生懸命魔物たちを殲滅しているんだ。だけど、勇者の国は魔族と魔物を結びつけ、事を起こそうとしてきているんだ。それも昔からね。何度も戦争が起きたさ!そしてその度魔王が殺され国は崩れ、そして領地を奪われ…難民達が集まり、また新たな土地へと移り住んでいるんだ。」


 なんだそれは?あまりにも身勝手すぎる。だがそれよりも…


「ちょっと待ってくれ!リーナはダークエルフだろ?エルフ族とかではないのか?」


 俺が疑問を口にすると、ヴィオリーンもレベックも少し悲しい表情を…レベックもそういえば獣人族の血が流れてるんだったな。


「魔族の国はね…。同族から追われたり、迫害を受けたり、ただ見た目が少し他の子と違うだけで殺されかけた、そんな者達などが集まってできた大雑把な括りなんだ。だから、多種族国家なんだ!」

「だが!だがなっ!人間国はそれをバケモノの巣食う邪悪な国と!自らの国から逃げ出したり、追い出した国民達に対しては魂を売った咎人だと罵ったのだぞ!それを正当な理由にし、虐殺を…。」


 うわあ、聖戦のつもりか?そして、多民族国家みたいなものか。


「なあ、それでこの国に様々な種族がいることは分かった。勇者の呼ばれる理由について頼む。」


 リーナも暗い表情になる。


「簡単さ、魔物の増加により、それを殲滅するために呼ばれるんだ。元はそうだったと聞く。でもね、何代か前の人間国の王族は魔物は魔族の生存区域が原因だと言い出し、勇者に殺すように命じたんだ。」

「それにより、魔族が作った田畑に土地、財産に資材。そう、本当は宝の山と自分の支配域が欲しかっただけなんだ!」


 強欲だな。王族とは、でも、実際元いた世界でも過去には同じようなことが行われていた。まあ、今でも行っているところはあるが。相手を悪魔扱いしてたりするもんな。それと同じか。


「魔王が代わったという知らせが大陸に行き渡り、攻め時いや、奪い時だと考えるであろうと…そうバグパスは考え、昔から研究していた魔法陣を魔王の間に設置し、その時を今か今かと待ちわびていたわけさ。」

「いつ呼び出されるか、本当に呼び出されるか賭けだったようだが。痺れを切らしたし、実際国人にも不安が募るばかりだった。だから、私がバグパスの代わりとなって御爺様のような王になると、今宵計画を実行したわけだ。」


 だが、魔王の間に入れば謎の片角男がカエル魔王を殴り倒したところだったと。だが、今の話からすると…あのカエルもそんなこと言ってたよな。


「それじゃあ、俺は勇者なのか?」


 俺の発言で、ぴたりと動きが止まる。


「は、はははは…そうなっちゃうんじゃないかな~ボクを殺すつもりかい?」

「いや、それはない。てか、なぜそんなことを?」

「いや、だってさ…呼ばれてすぐに魔王やっちゃったわけでしょ?」


 む、確かにそうだな。人間国によって送られてきたのか?いや、そんなはずはないよな…心配になってきた。


 俺、ここに居る3人を手にかけることはしたくないんだが…


「それはないわよ。だって、彼の研究が正しければ、殺戮兵器になる前に呼び出せたはずだから。」


 そ、そうか。兵器にならずにすんだのかな…


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