湿布を・・・。
俺は、リーナの部屋の扉をノックする。
『タケルかい?』
部屋の中から弱弱しく俺の名前が呼ばれる…。
はて、何かあったのかな?
「ああ、俺だ。」
『開いてるよ。』
答えると返事がすぐに返ってくる。
俺はつとめて冷静に扉を開け、中へと…
「「「おめでとう。リーナ(ちゃん)。」」」
「へ?え、あ、あの~その~…。タケル、説明。」
「俺に聞かんでくれ。」
そう、絶賛困惑中なリーナ。
みんなついてくるってうるさくてね…。
祝いの言葉を告げたらすぐに出て行くというから。
まあ、ムーちゃんに関してはお昼からの会議は厳しいだろうから休んでおくようにと言いたいらしい。
ヴィオリラ先生に関しては…まあ、俺の背にお世話になっている。
教え子を祝福したいとうるさかったのだよ。
アコーに関しては…まあ、心から『おめでとう』といいたいと…
過去の話を聞いて壮絶だったからね…。
「さてと、アタシは失礼するわ。徹夜明けで、ねむーい。あ…そうそう、リーナちゃん。痛いでしょうから無理しないでね?会議のほうは陛下ちゃんがいるんだから、ね。」
「っ!?は、はい。申し訳ありません。」
「んっふふ…。ハジメテは仕方ないわよ。アタシもハジメテの時はそんな感じだったからね~。こんな時くらいゆっくりなさいな。」
「…はい。」
「そうそう、素直でよろしい。考えてばかりじゃ疲れちゃうものね。大好きな甘いものでも摂ってゆっくりしときなさい。」
「あ、甘いものは朝食にモニカが…」
ああ、とても甘かったな…。
気まずかったが、不味くはなかった。
ただ、ひたすら甘い蜜でした。
「モニカちゃんったら、あの子は訓練しなおしかしら…。流石に身勝手すぎるわ…。後でオシオキね。」
オ・シ・オ・キ。
なぜだろう。ボンデージをイメージしてしまった。
え?ボンテージじゃないのかだって?
ウィキ見てきなさい。
「あら、陛下ちゃんはオシオキが気になるのかしら?」
「い、いや…。ちょっと違うことを考えていたんだ。」
オシオキの中身ではなく、衣装の事をね。
「あらそう?まあいいわ。陛下ちゃんはやさしすぎる気がするから、リーナちゃん。気を付けなさいね?」
「それはどういう…」
俺はそれに言い返そうとするが、リーナの言葉に遮られた。
「はい。アコーにもモニカにもやさしすぎます。そして、先生にも…。」
そう言いながら俺の肩を見る。
「な、なんじゃ!我はトライとリーナの…あの~えっと、そのう…やっぱり、痛かったのか?」
…。
「なんじゃその目は、我とリーナはトイレでトライの『勇者の剣』をだのう…」
「わーわーわー!」
言いやがったよ…。この先生…。
リーナもソファーで横になったまま両手をパタパタしながら焦っている。
「…陛下ちゃん。まさか、そう言う趣味?」
「いえ、チガイマスヨ!」
うわーって顔されちゃったよ!
「いや、我は年上じゃぞ?問題ない。して、あの見事な剣を収めたわけであろう?」
ちょ、言い方言い方!
「だから、のう。聞きたいのじゃ。後学のために…。」
「そう言われましても…今のこの姿としかいいようが…ラーベルの薬草のおかげでまあ、そこまで痛みは…」
「ほうほう…ふむふむ。」
「ですが、朝起きたらこんな感じに…身のまわりのことをお願いしてやってもらう感じですね…。」
「そうかそうか!身のまわりのことをしてもらえるのか!いいのう!」
え、そこですか…。
「そこは、私たちメイドに頼むのが筋では?リーナちゃん。」
やさしく微笑むアコー。
今までやけに静かだったな…。
「アコー?何かおかしなものでも食べた?」
リーナも気になるこのキャラ。
なにがあった?
「いえ、陛下に怒られちゃいましてね…。」
「っ!?タケルが怒った!?」
え?怒ったかな…
「ええ、そこにいるヴィオリラ様共々怒られました。」
「先生も怒られた…タ、タケル。怒ってる?」
「俺がなぜ怒るんだ?」
そんな心配そうに見ないでほしいんだが…。
てか、怒ってる相手をおんぶするとかめちゃくちゃだろうに…
「アレのことかしら…。」
「「アレ?」」
ムーちゃんの発言に俺とリーナは首をかしげた。
「『せっかくの景色なんだ。もう少し静かに堪能させてはくれないか?』って覇気を出しながら言ったでしょう?」
覇気って…。
「タケル…。覇気使えるんだね。てことは、相当な攻撃力を持ってることになる…。」
「そうなるわね。将軍が2人、後、城下町にも片手で数えれる位は確か居たはずよ。」
ふうむ…。少ないんだな…。
「おうい、我を入れんか!我を!使えるぞ~。」
俺の両肩をぺしぺし叩きながらアピールするヴィオリラ先生。
ふふっ、くすぐったいくらいだな…。
「あの~そのお姿では…。」
苦笑い気味のムーちゃん。そりゃあ、ね。
「ムキー!!!満月の夜じゃ!そしたら、トライと手合わせじゃ!」
ほう?元気だ…
「そして、そしてっ!イイ汗を掻いた後、イイ汗を掻くのじゃ!ふひ、ふひひひ…じゅるり。」
とても、元気だ…
「…先生。」
「ヴィオリラ様…。」
とても残念なモノを見る目をするリーナとムーちゃん。
「ふふっ、果たしてそれが叶いますかね…。」
なにその発言、黒いよ!アコー。
「なんじゃい、アホー!我に何かするつもりか?あ?」
「え、私は何も。ただ、陛下に無様に敗北して威厳を失うその姿を皆様にさらすのだなあと。」
おうい、無様とか…。
「先ほども屋上でおっしゃいましたよね?ふ、ふふ…。」
「うぐ…ぐぐぐ。この、○っぱい妖精め!ベッドでは我がトライに勝つ!」
なぜそうなるのかね…。
疲れが溜まってくるよ。
朝から元気すぎる。
苦手じゃなかったのかよ…。
「ん?そういえば、この時間帯になんで我はこんなに元気なんじゃ?アホーも普通だし…。」
ご本人様が疑問に思うレベル。
「それは…あ、確かに…。バルちゃんを追いかけてるときはもう気力が、でも、陛下と話していたら…。」
「そういえばそうね。アタシも疲れが…まあ、眠気はあるのだけど…不思議よね?」
ついてきた三人そろって『うんうん。』と唸りだす。
少しして…
「…回復魔王。そうよ!回復魔王様だからよ!」
何か合点がいったらしいムーちゃんが言い出す。
「陛下ちゃんは回復魔法を扱えるから無意識に…。」
なにそれエスパー?
「まあ、我もわからんから…そう言うことにしておこう。」
「ステキです。陛下!」
「流石、タケル。」
照れくさいなぁ~
すると、ノックが…
「ん?誰だろう…」
リーナが首をかしげながら言うと…
『あの~湿布を…。バスさん用に湿布を…リーナさん。』
ラーベルさん?
そして、バス将軍の身にいったい何が!?