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ラーベルの帽子

 ついに…。ついに機会が訪れた私たち!


「うっふふ…。一目ぼれから早20年近く経ってるのですよね…。」


 朝方のことを思い出しながら花に水をやる私、ラーベル!


「冷めること無きこの気持ち、ついに、ついに機会が…。でも、普通は殿方からの言葉を…あ~でも、バスさんはそういうところは無いですからね~。」


 ふふふふー♪


「あ、そうだ!リーナさんに届けないと♪」


 水やりを終わらせ思い出す。


 彼女とは歳が近いのである。


 え?そりゃー植物だったのが5~6年、そこから妖精族として生活し始めて20年ほどですからね。


 アコーさんより年下なんですよ?


 バスさんですか?


 彼は、まだ30半ばでしたかね…。


 外見では年はわからないですからね。


 でも、あの毛触りは最高ですよ。


 うふ、うふふふ…じゅるり。


「これからは毎日あのステキな…うふ、うふふ…。」


 独り占めです!


「夜が楽しみですね~。昔は夜中は行動できなかったのですが、リーナさんのおかげで行動が可能になったのは嬉しい限りです。」















 そう。この国に来て、生活し始めた頃…


 緑の魔女さんが帰られてから私は自由な行動があまりできなかったのです。


 疑問に思っていると国王が…


「ふむ…。それは、緑の魔女様の魔力が強かったから恩恵を受けていたのだろうね。」


 あごひげをなでながらそんな事を…


「だから、今のラーベルさんは普通なんだ。今までが良すぎたということだね…。」


 あらあら、そうなのですか。不便ですね~


「申し訳ないね。力になれなくて…。」


 いえ国王さん。お答えくださり感謝します。


「こんなことしかできない役立たずだよ私は。」


 えらそうにしない王様ですよね…。


「まあ、ただのジジイだと思ってくれたまえ。」


 ステキなオジサマで通るでしょうに。


「残念だが亡き妻一筋でね。一人娘にはいつもうるさく言われたよ。『インキュバスのくせにっ!』って」


 そう、インキュバス。でも、欲があまり無いご様子で。


「忙しいからね。この国のために。」


 えらい職は大変ですね。


「でも、やりがいがある。」


 ふふっ♪


「エルフ族なら緑の魔女様ほどではないが何か力になってくれるかもな…。」


 エルフ族ですか?それでも緑の魔女さんより下なんですね。


「そりゃそうさ。実力が違いすぎる。」


 そんな方のもとで妖精になれたんですね♪


「いや、力が強いからこそラーベルさんはこうして妖精になれたのだろう。普通は相当な魔力だまりに十数年と言われているからね。」


 あら、それは私が若いということですね♪


「そうだね。ふうむ。」


 絵になるお姿ですね。『考える魔王』って題名でいけますよ?


「ふふっ…肖像画かい?私個人としてはあまりそういうのは苦手だな。」


 残念。


「肩を落とさないでくれ。ラーベルさんの絵のほうが高価で取引されそうだよ。」


 ん~私は…。あ、それはイヤです。本物を見ていていただきたいので…。


「ふうむ。だが、いまのラーベルさんは行動範囲がそれこそ限られているからねえ…。」


 ですねー。


 二人して考えていると…


「陛下。ヴィオーラ様がお呼びです。」


 兵が中庭に…


「うむ。そうか娘が、すまない。ラーベルさん、またの機会に。」


 はい。国王さん。






















 それから長い月日が流れ…


「ラーベル様。エルフ様が城に参られました。」


 ん。もう!様はいらないと言っているでしょう?バス様。


「しかし、それに私などを様付けなどとは…。」


 私のほうが少し早く城にいるだけでしょうに…。


 それに、将軍になられたのでしょう?バス様。


「…。将軍…。実感が湧かないですよ。」


 偉くなって、立場が上がった。なら、これでお互い同じですよね?バスさん?


「っ!?」


 ふふ、頬が緩んでる。


「これは、えっと、あっと、その…。」


 そう言いながら少し毛深くなった頬を掻く。


 顔の形も少し変わってきている。


 でも、その瞳は変わらない。


 きゅんきゅんしちゃいます!


 うふ、うふふ…。


「?」


 いえ、思い出し笑いです。


「?そうでしたか。」


 んっもう。そのしゃべり方は無しです!もっとかる~いかんじで!


「は、はい!」


 んんっ!


「あ、ああ。わかったよ。これで、これでいいのか?ラーベル。」


 っ!?いいっ!実にいいですよ!


「そう…か。」


 では、バスさん。そのエルフ様は?


「ああ、ヴィオリーン姫の家庭教師だそうだ。」


 ふーん。そうですか。


「では、これにて失礼しま…失礼する。」


 うむ。これからはそれでお願いしますね?


 私が朗らかに笑うと…


「っ!!!静まれ我が欲望!」


 っと小声で言っているようでしたが…下腹部を私の視界から隠しました。


 これは脈あり?






















 この帽子は花々から微量にもれるマナを溜めておける優れもの。


 リーナさんに頼んだ一品です。


 帽子自体自分の意思で消したりだしたりできますから…溜めたマナを自分のタイミングで利用も可能。


 遠出も、夜中の行動も楽になりました。


 これのおかげでバスさんの住んでる家も知ることができましたし…。


 え?そりゃあ職務を終えて城から帰る所を…


 どこのお店で食事をするかも知れましたし…


 え?犯罪じゃないのかですって?


 これは愛です。キリッ!






「ラーベル。どうしたんだい?」


 いえ、この帽子がですね~


「そうか…。では、バス将軍と…」


 はい♪今夜…うふふふ。


「あ、あの~」


 ん?どうしたのでしょう。レベックさん?


「いえ、将軍が…あの、その…ラーベル様と?」


 ふ、ふふふ…。


「その気らしいね。ボクもタケルと…今夜だ!」

「っ!!!」


 お若いですね~でも、あの金髪の方のお子さんなんですよね。


 バスさんの同期のあの…名前は…


「レコウードです。」


 そうそう。お食事処よね?


「ああ、レベックの実家かい?あそこのメニューは少し変わってるよね?『お米』だっけ?」

「はい。母さんの実家のほうで取り扱っているのですが…。」


 美味しいですよね。


「ボクも何度か食べたけど…。濃い味のおかずにはいいよね。タケルは好きかな?『お米』。」


 さあ、どうでしょう?


 …。って全裸!?


 ソファーに寝かされレベックさんに拭いてもらっている陛下は裸でした。


「理性がとんだ。ただそれだけだよ。」

「…はい。自分も…にゃううう…。」


 あらあら…それじゃ、私はそろそろ…。


「ありがとう。ラーベル。この薬草は大事に用法用量をちゃんと守って使わしてもらうよ。それに、レベックのほうの材料も用意してくれて感謝するよ。二度手間にならずに済んだ。」

「…はい。いつもありがとうございます。」


 でも、これからは不要になるかも…ね?


「っ!!!なうううぅ…。」


 あらあら、かわいいわね。


 でも、バスさんの毛のほうが私は好きよ?





 そう言って私はリーナさんの部屋を後にする…。


 さて、そろそろ日が沈みますね。


 待っていてください、バスさん。


 うふ、うふふふ…。




 じゅるり。


 

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