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ラーベルの思い出

 遠くから私を呼ぶ声が聞こえる。だあれ?私はだあれ?


 また聞こえてくる。近づいてくる。


 そして…耳元にまで近づく。


 !?






「おや?どうやらお目覚めのようだね。」


 ここは?


「ほっほっほ。自分の事よりこの場所が気になるのかい?お前さんの育った庭だよ。妖精ちゃん。」


 妖精?


「そうさ、妖精さ。」


 育った?庭?


「ふうむ。なりたてだからかの。あたしゃこの家、そしてこの庭のヌシ。緑の魔女だ。」


 ヌシ?魔女?


「顔を傾げてばかりじゃの。まあよい。とりあえず服のことをどうにかせんとな。」


 服?


 そう言われて私は自分の体を見る。フニフニだぁ~♪でも、土まみれね。


 それに、魔女さんと違ってぽんぽんだ。


「ぽんぽんって…。全裸だろうに…。」


 全裸?


「はあ、まあよい。簡単なものでも作るか。慣れれば自分の力で作れるだろうがの。」


 作る?


「そうさ、妖精でアルラウネなおぬしならぽぽぽ~んと身に纏うものなら作れるだろう。」


 ぽぽぽ~ん!


「あ、これっ!土がついたままじゃ!あちゃ~これじゃ二度手間じゃのう。」


 土はついてたらいけないのか~!


 えいっ!


「おお~!やりおるのう。」


 えへへへ~♪


「えらいえらい。」


 ふふふふ~♪


「賢い子じゃのう。そうじゃな。あたしと暮らすより他所の方がお主にはあっとるじゃろう。ついでだ、バグパスでもからかいに行くかのう。」


 バグパス~?


「そうじゃ、馬鹿弟子のカエル野郎じゃ!大規模魔法を失敗してからに…。」


 カエル野郎!


「ほほっ。おぬしが指差してるそやつはただのツチガエルじゃ。あたしがいっとるのは馬鹿弟子のこと。」


 馬鹿弟子!


「そう。元はイイ顔しとったのにな。抱かれてもいいくらいに…。それが今じゃちんちくりんなカエル野郎。友のためだと言ってあんなばかげたことをしでかすとはのう。」


 へ~私と違って馬鹿なんだね~。


「そうそう。馬鹿じゃ馬鹿じゃ。あたしと一緒になればよかったものを…。親友にささぐなどと言いおってからに…。せめてあたしと夜をだのう…っと、まあよい。今じゃただのカエルじゃ。」


 ふ~ん。


「さてと、服をすでに作れるのなら問題ないの。土も自分で落とせるなら楽だ。そいじゃあ、家に入ろうか?」


 差し出された手を握り、私は緑の魔女さんの家へと…


 そこから始まる勉強の日々はつまらなかった。


 たまの庭仕事が楽しかったのだけはここに記す。


























 私が植物から妖精になって十日。


 その馬鹿弟子がいる国へと向かうこととなった。


 鳥車をひく鳥さんが恐ろしい目で見てきたことだけは今でも思い出す。


 私は食べ物じゃありませんと何度も言ったのですがね。


 それを見て緑の魔女さんは笑ってばかりでしたし…。


 生きて辿り着くことができたのは良かったです。


 南門を前にして大げさだのうと大笑いされてしまいましたがね。


 そのまま国内へと鳥車のまま入ります。


 わ~不思議な形の建物がいっぱ~い!


 わくわくしま…え。


 ちらりと見えたのは木剣を片手に路地を歩く金髪の青年とその隣を歩く黒の混じった茶髪の青年。


 なんだろう。胸がぽかぽかします。


 振り返った彼の眼を見て…恋へとおちました。


 魔女さんが読んでくださった本のような出会い。うふふっ♪


「なんだい?ラーベル、風邪かの?」


 そう。私の名前はラーベル。


 いい名前でしょう?


 でも、それよりも彼の名前が知りたいな♪


「ぬ。どうやら恋わずらいか。あの金髪君かね?」


 私は首を振る。


「ほう?あのボサボサ君のほうかの…ふうむ。木剣を手にしておるのならいつかは兵でもなるのかのう。したら、城で遇えるかも知れんぞ?」


 !?


 えへ、えへへ~


「ほうほう…。なかなかの本気度が見受けられるのう…。」


 そのまま城へと着きます。すると門が開き…


「し、師匠!急に…」

「えい!黙れ馬鹿弟子が!「ソーンバインド!」」

「あだだだだ!」


 ふふっ馬鹿弟子~♪


 ほんとにカエルの姿してる~♪


「み、緑の魔女様。」

「なんだ国王?」


 あらあら~背の高い白髪の魔族?


 ステキなローブですね。


「ん?ありがとうお嬢さん。」


 あらあら、ふふっ…って国王!?


「そうだよ。この国、シンフォニアの王、ヴィオロンだ。そして、馬鹿弟子の親友らしいのう。」


 ほへ~


「ああ、はじめましてお嬢さん。私がこの国の国王などと呼ばれているヴィオロンだ。そして…」

「あだだだだ…」


 …。


「彼が、友人のバグパスだ。」

「おい、自己紹介は終わったのう。こやつが手紙に書いておったラーベルだ。庭師として置いといてくれ。」

「緑の魔女様。そんな物みたいな言い方を…。」

「あ~すまん。馬鹿弟子見てるとどうも、な。」


「「…。」」 「あだだだだ…」


 素直じゃないですね。


「ああ、私もそう思うよ。」

「おいそこ、聞こえとるぞ!」

「あだだだ!ししょ~!解除を!」

「はあああ…なんでこんなヤツを。まあよい。」


 そう言って手をかざすと半透明な棘のついた蔓が消えます。






「後、祝いの品だの!これを義理の息子にでも渡しとけよ!」

「っ!ありがとうございます。そこは私の娘には…」

「無い。」


 何の話でしょう?


「そこの国王がおじいちゃんになっただけだのう。後、ヴィオリラ様には新しい茶葉を用意したからそれも頼んだぞ。」

「はい。」


 あらら~おめでとうございます。


「ありがとうラーベルさん。」


 あらあら、さんだなんて。国王陛下にそんな…


「ふふふっ…。」

「ほっほっほ。」


 三人で笑います。


 そのすぐ側で…


「ワシは師匠のおかげで剥げそうだ…。」


 と、呟いた。


「おい、聞こえとるぞ。それに、禿げるも何も…つるつるだろうに。」

「うぐっ!」


 ええ、確かにハゲ…いえ、つるつるなカエル。


「うぐぐ…。しょぼん。」


 肩を落としながらしょんぼりとするバグパスさん。


「嘆くなら自分の行いを嘆くのだな!馬鹿者め。それじゃあ…二三日せわになったら、あたしゃまた帰らせてもらうよ。」


 短いのですね。


「あたしにゃあの家の暮らしが良すぎるんだよ。静かなほうがあってる。」


 それでは、お別れのご挨拶もすぐに言わないといけませんね。


「早いよ。」

「そうですよ。今着いたばかりでしょうに…。」


 そうでしたね。うふふっ…


 この日から始まる私の城での庭師としての日々。


 この青空のようにステキな日々になればな~と思いながら天を見上げた。


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